卒業研究のご紹介
2021年版

医療技術・栄養系所属学生

野球部員の心理的競技能力と自粛期間における食生活状況について

田川 依澄東京都
健康医療科学部管理栄養学科2021年3月卒業
東京都 目黒日本大学高等学校出身

研究の目的

運動選手は試合期間に普段通りの食生活のままでいると、試合に向けたトレーニング期と試合期での運動量の差から、体重減少につながります。体重減少はパフォーマンスの低下のみならず持久力の低下にもつながり、試合の勝敗をも左右します。そのため、パフォーマンスの低下に至らないようにするためには、身体的かつ食生活的にも選手の自己管理が必須であると考えられています。
本研究では、新型コロナウイルスによる自粛期間における、本学野球部員の食習慣や生活習慣、自主練習状況および心理的競技能力について調査を行い、開幕未定であった2020年秋季リーグ戦に向けての食生活を含めた自己管理や意識の実態、試合場面での心理的競技能力(精神力)を明らかにすることを目的としました。

研究内容や成果等

■ 研究方法

(1)調査対象
神奈川工科大学硬式野球部員男性108名(年齢19.6±1.1歳)を調査対象とした。
(2)調査内容
心理的競技能力診断(DIPCA.3)、食に関する質問紙、簡易型自記式食事歴法質問表(BDHQ)からなる自記式アンケート調査を実施した。
(3)統計解析
統計解析パッケージSPSSver.25(IBM.JAPAN)を用いてχ2検定、Mann-WhitneyのU検定を行い、危険率5%をもって有意差ありとした。

■ 結果および考察

(1)心理的競技能力
硬式野球部員を、全国的な大会の参加の有無によって2群に分類した。参加経験がある部員の方が心理的競技能力の「予測力」の項目において、有意に高いことがわかった (p<0.05)。「予測力」以外の項目である「忍耐力」、「闘争心」、「自己実現意欲」、「勝利意欲」、「自己コントロール力」、「リラックス能力」、「集中力」、「自信」、「決断力」、「判断力」、「協調性」、「総合得点」では、有意差はみられなかった。
参加経験の有無が、試合における予測力に影響を与えていたが、闘争心や意欲などの心理的面には影響を与えていなかった。
(2)自粛期間における自主練習と食事
96%の部員が自主練習を行っており、週5日以上行っていたものは54%(56名)であった。週5日以上自主練習をしていた部員は週5日未満の部員よりも「栄養バランスについて考えた食事」(p<0.001)や「朝食及び夕食に主食、主菜、副菜が揃った食事」(各々p<0.05)をしている部員が多かった。また、朝食欠食の有無についても、同様に週5日以上自主練習をしていた部員の方が欠食している部員が少なく(p<0.01)、9時以前に起床した部員においても、9時以降に起床した部員よりも朝食欠食が少なかった。(p<0.05)。週5日以上、未満における自主練習を行っている部員ではたんぱく質、ビタミンB1、B2、B6、B12等の摂取に差が認められた(p<0.05)。
自粛期間中の1週間において5日以上の自主練習を行っていた部員は、食事のバランスを考え、活動するためのエネルギーとして朝食摂取を怠らないと考えた。

■ 結論

1週間に5日以上自主練習をしている部員は、身体づくりのために、栄養のバランスや食事について考えて食事をしていた。
卒業研究学生からの一言 田川 依澄
私は本学硬式野球部マネージャーとして、野球部員がより良いパフォーマンスをするための選手の練習や生活面での支援について考えてきました。また管理栄養士になるために本学で学んでいたことから、特に選手の食生活や食事選択に興味をもち、卒業研究では野球部員の食事に関する研究を希望しました。
研究では、指導を受けながらアンケートの作成、配布から収集等まですべての工程を自ら計画し、実施することで、実践力を培うことができました。また、データ解析では研究室メンバーと知識を共有し合い、助け合うことの大切さを知ることができました。今後も、より良い食生活を提案できる管理栄養士として知識を深めていきたいと考えています。