卒業研究のご紹介
2018年版

電気電子系所属学生

ブロック型配線レスウォールの検討

林 千希神奈川県
創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科 2018年3月卒業
神奈川県立田奈高等学校出身

研究の目的

建物には部屋を構成する「壁」があり、それは誰でも簡単に組み替えられる機能が無いのが一般的である。本研究では、ブロック内配線を目的とした、ブロック型配線レス構造を構築し、生活スタイルに合わせた機能壁の検討した。また、通信デバイスを活用し、モバイル端末とブロック間をつなぐシステムの構築を行う。試作した配線レスブロックを組み合わせ、システムを構成、複数のブロックが連動し、壁の制御を可能とする機能を持った賢い壁「スマートウォール」を考察した。

研究内容や成果等

■ 無線通信の組み込み

私たちの生活にもIoTが利用され、IoTを身近に感じる。例えば、自動ブラインドや給湯器といったデバイスとモバイル端末が連動し、人が製品に直接操作を行わずに、モバイル端末からのネットワーク操作で自動的にデバイスを制御できる。また、デバイスに関する状態をモバイル端末で確認することも可能である。従来は、デバイスを単純に操作していたが、IoT技術をデバイスに組み込み、デバイスのデータ情報をクラウドに送信し、データ分析や処理を行い、その情報をモバイル端末で確認できる。IoTは単数のデバイスを操作すると考え、IoEは複数のデバイスを連動させて操作すると考える。IoT技術をブロックに組み込み、複数のブロックを組み合わせることで、システムを創り出すIoE技術を取り入れたスマートウォールシステムの構築を行った。

ブロック内にマイコンを組み込み、ブロックの高機能化を図り、ローカルネットワーク環境での無線通信の制御操作を検討した。照明ブロックの制御操作実験での結果は、ブロックの特性を活かしたIoT接続ができ、組み換え可能な賢い照明の試作ができた。(1)無線通信により、モバイル端末の画面操作から、デバイスの制御操作が可能。(2)対応したLEDのON/OFFと調光が可能となった。

■ まとめ・今後の展望

スマートウォールの試作にブロックを活用したことで、ブロックの空間を活用し、配線レス構造を構築した。また、ブロック内にデバイスを組み込み、機能を持たせることも可能であった。よって、ブロック型配線レスウォールを試作することができた。

今後は、照明と異なる機能をブロック化し、IoT接続することができるデバイスが必要である。また、複数のデバイスを同時に制御することができ、異なる機能を連動させることができるインターネット接続とローカルネットワーク接続が必要であると考える。さらに、IoEの機能を含んだスマートウォールシステムの構築についても検討したいと考える。

スマートウォールを実現することで家電製品の機能を壁一面で使うことができ、ユーザの好みに合わせて組み替えも可能となる。モバイル端末とブロック間で、無線通信による制御操作が可能で、複数のデバイスを同時に制御でき、異なる機能が連動するスマートウォールシステムの構築によって、利用者が部屋を自由に仕切ったり、好みに合わせて家電製品を配置できるようになると考える。


指導教員からのコメント 教授 金井 徳兼

住宅内のIoT化が進んでいる一方で、家電機器のレイアウトに伴う配線やまた複数の家電機器の連携した機能や動作など、今後検討すべき課題が多いと思われます。

林君たちの研究は、子供の頃遊んでいたブロック遊びのように、家の間取りを自由に組み替えことができ、またそのブロックは、家電製品やインターネット接続用の装置を組み込んだ賢いブロックによる生活空間を変える新しい提案です。電気配線的な設計や試作を何度となく繰り返し、電源や照明などをブロック化して、IoT接続できるような仕組みを完成しました。

研究成果は、電気学会の全国大会での発表や中小企業向けのセミナーなどでも取り上げられ、関係者からの注目を浴びていました。ブロック型スマートウォールを住宅に導入するためには、建築基準や安全などのハードルがありますが、関連する企業等と研究を発展することで、近い将来 生活空間に取り込まれているかもしれません。

卒業研究学生からの一言 林 千希

本学科はプロジェクト科目が多く、社会人としての基礎力がつきます。特に企業と連携するプロジェクトでは、1年間を通じ実験や打ち合わせを行ったことで自信がつきました。当初は不安が多かったですが、今では将来、自分がどうありたいか明確になっており、その自信や考え方は有意義な研究生活を過ごした結果であると考えます。