卒業研究のご紹介
2018年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
塩化ケイ酸カルシウムマグネシウムにおけるフォトクロミズムの鉄置換量依存性
吉岡 健太神奈川県
工学部応用化学科 2018年3月卒業
向上高等学校出身
研究の目的
当研究室(横山和希/2016年度卒業)で、鉄を意識的に加えた調合組成 Ca8(Mg1-xFex)(SiO4)4Cl2 を設定し、鉄の置換とフォトクロミズムの関係について調査した結果、鉄を置換し、5%H2 - 95%N2で還元処理した試料が紫外線照射によってピンク色に着色することが確認された。また、この着色強度には鉄の置換量による依存性があり、x=0.007までは置換量が増加するとともに着色強度も増す傾向にあることも見出された。ただし、この試料には不純物が多く、フォトクロミズムの発現に対して鉄による置換がどこまで有効なのか明らかになっていない。そこで本研究では出発原料の調合比や焼成条件を変える事により、不純物の生成を減らし、より質の高い試料の合成を目指した。さらに、置換量を増やすことで着色強度にどのような変化が見られるか調査した。
研究内容や成果等
本研究で合成した物質はフォトクロミズムという紫外線を当てることで着色、もしくは脱色する性質を持つため、研究成果はサングラスの調光ガラスや紫外線チェッカー、最近では光機能性インクへの応用が期待されている。
フォトクロミズムとは光を当てることによって色が変化する性質のことを指します。この性質を使って、光センサーや光記録材料への応用が期待されています。最近、当研究室でフォトクロミズムを示す新しい物質が発見されました。吉岡君は、その物質がなぜフォトクロミズムを示すのか、という謎を解明することを目的として卒業研究を行いました。わずかな量のインクで水に色が着いてしまうように、色に関係する物質を研究するには不純物をできるだけ減らす必要があります。吉岡君は原料の調合や合成温度・時間などを丹念に検討し、良質のサンプルを合成することに成功しました。そして、ごくわずかに含まれる鉄がフォトクロミズムの原因であることをつきとめました。
大学生活で自分の考えを相手へ伝えるための能力を習得しました。高校生ではまだ若干言葉が足りず、相手に充分な説明ができませんでしたが、レポートや教授とのミーティング、そして友人とのコミュニケーションを通して、より分かりやすく自分の考えを相手へ伝えるための技術を身につけられたと思います。