卒業研究のご紹介
2020年版
情報系所属学生
野球の投球動作における直球と変化球の相違と再現性について
落合 幸喜神奈川県
情報学部情報工学科 2020年3月卒業
藤沢翔陵高等学校出身
研究の目的
野球の投手力向上のため、Shadow Pitching(以下、シャドーピッチング)と呼ばれるトレーニング方法が存在する。
一般に「シャドーピッチングトレーニング」の目的は、フォーム固めのためと言われているが、これらのトレーニング効果の詳細に関しては明らかではない。
また、投手がストレートと変化球など球種の異なる投球を行う場合においては、投球フォームが大きく異なる投手も存在する。
そこで、今回、本学野球部員投手に「シャドーピッチングトレーニング」を3か月間(5回/週、60球/回)行わせ、投球時の上肢および下肢の関節角度に注目し、動作解析からこれらの効果を明らかにすることを目的とした。
これらのことより、本学野球部員の投手力向上を目的とする。
一般に「シャドーピッチングトレーニング」の目的は、フォーム固めのためと言われているが、これらのトレーニング効果の詳細に関しては明らかではない。
また、投手がストレートと変化球など球種の異なる投球を行う場合においては、投球フォームが大きく異なる投手も存在する。
そこで、今回、本学野球部員投手に「シャドーピッチングトレーニング」を3か月間(5回/週、60球/回)行わせ、投球時の上肢および下肢の関節角度に注目し、動作解析からこれらの効果を明らかにすることを目的とした。
これらのことより、本学野球部員の投手力向上を目的とする。
研究内容や成果等
■ 実験方法
被験者は本学野球部の投手12名とした。本測定は、大学構内の野球場にて行った。投手に正規の距離18.44mで、捕手に向けてマウンドから投球を行わせた。ストレート5球、スライダー5球を投げてもらった。その際、動作解析のための動画撮影を正面(打者目線)と投手横側の2か所から行った。
本研究では、測定箇所を肘関節、体幹、肩関節、膝関節、軸足と地面の接地角度とし、身体の関節角度の差を解析した。動作解析には、動作解析ソフト「kinovea」を用いた。また、球速や回転数の計測のため、「TECHNICAL PITCH」を用いた。これは、3次元加速度計が内蔵された硬式球とスマートフォンアプリを連動させ、リアルタイムで球速、回転数が算出されるものである。さらに、投球動作の再現性を向上させる練習(シャドーピッチング)を3か月間継続してもらい、その練習がどのような影響を及ぼすのかを検討した。各被験者には、十分な準備運動、投球練習を行わせた後に測定を開始した。いずれの投球も試合を想定した投球をしてもらった。
本研究では、測定箇所を肘関節、体幹、肩関節、膝関節、軸足と地面の接地角度とし、身体の関節角度の差を解析した。動作解析には、動作解析ソフト「kinovea」を用いた。また、球速や回転数の計測のため、「TECHNICAL PITCH」を用いた。これは、3次元加速度計が内蔵された硬式球とスマートフォンアプリを連動させ、リアルタイムで球速、回転数が算出されるものである。さらに、投球動作の再現性を向上させる練習(シャドーピッチング)を3か月間継続してもらい、その練習がどのような影響を及ぼすのかを検討した。各被験者には、十分な準備運動、投球練習を行わせた後に測定を開始した。いずれの投球も試合を想定した投球をしてもらった。
■ 実験結果
(1)直球と変化球の投球動作の差について
表1は全被験者の直球と変化球投球時における、各関節角度の差である。
(2)シャドーピッチング前後の関節角度、球速、回転数の差について
シャドーピッチング実施者は、シャドーピッチング後において、体幹傾斜、肩関節、膝関節の誤差の減少に有意な差がみられた。シャドーピッチング非実施者は、膝関節以外には有意な差はみられなかった。また、シャドーピッチング前後の球速、回転数には有意な差がみられなかった。
表1は全被験者の直球と変化球投球時における、各関節角度の差である。
(2)シャドーピッチング前後の関節角度、球速、回転数の差について
シャドーピッチング実施者は、シャドーピッチング後において、体幹傾斜、肩関節、膝関節の誤差の減少に有意な差がみられた。シャドーピッチング非実施者は、膝関節以外には有意な差はみられなかった。また、シャドーピッチング前後の球速、回転数には有意な差がみられなかった。
■ 考察
打者目線から見た直球と変化球の投球動作の相違は、変化球時に肘関節と肩関節の数値が下がることから、腕が低く出てくる。打撃の熟練者は投手の投球モーションから、リリースタイミング、投球起動や球種を推測できる。このことから、打者は変化球を判断するのではないかと考える。
シャドーピッチング前後の誤差は、上肢部分に有意な差が多くみられ、その他の項目では有意な差はみられなかったものの、誤差は減少傾向にあった。非実施者は有意な差がみられた項目がほとんどなく、誤差の減少も少なかった。これらの事から、シャドーピッチングは投球動作に影響を与えると考えられる。しかし、球速や回転数には有意な差がみられなかったため、シャドーピッチングとの関係性はないと考えられる。
シャドーピッチング前後の誤差は、上肢部分に有意な差が多くみられ、その他の項目では有意な差はみられなかったものの、誤差は減少傾向にあった。非実施者は有意な差がみられた項目がほとんどなく、誤差の減少も少なかった。これらの事から、シャドーピッチングは投球動作に影響を与えると考えられる。しかし、球速や回転数には有意な差がみられなかったため、シャドーピッチングとの関係性はないと考えられる。
■ まとめ
直球と変化球の投球動作では、上肢部分の関節角度が直球時に比べ変化球時の方が下がり、腕が低いところから出てくる。その投球動作の差で打者は変化球だと判断が可能となる。これらのことから、「シャドーピッチングトレーニング」は、特に上肢部分の誤差を減少させ、直球と変化球の投球動作の再現性を高めることが認められた。
しかし、こだわりをもちながら緻密に、かつ上手く全体を統括しながら測定・実験に取り組む姿勢には、目を見張るものがありました。また、論文作成や最後のプレゼンテーション(スライド作成)においても、細かな作業を厭わず行い、この「卒業研究」を通して経験したこと、学んだことを実社会においても続けて欲しいと願っております。最後に褒めてあげたい限りです。