卒業研究のご紹介
2020年版
電気電子系所属学生
CPLDを用いたラインディスプレイの製作
川崎 直紀東京都
大学院電気電子工学専攻 博士前期課程1年
(創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科 2020年3月卒業)
(創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科 2020年3月卒業)
東京都立成瀬高等学校出身
研究の目的
私たちは日常生活において、興味を引かれた対象に視線を向けるための視線の移動を繰り返し行っています。この高速眼球運動をサッカードと呼び、これを利用して、情報を提示させる装置がラインディスプレイです。ラインディスプレイは縦一列にLEDを並べて固定し、眼球運動に合わせて高速点滅させると画像を知覚することができます。省スペースで、夜間での屋外広告、防犯、エンターテインメントなど幅広い分野での応用に期待できます。本研究では、製作するラインディスプレイの基板内にComplex Programmable Logic Device(CPLD)を設け、必要に応じてデジタル回路の書き換えができるようにしました。これを用いて、点滅周期と画像を知覚できる距離の評価実験を行い、近くからでも、遠く離れても情報を知覚できる利用範囲の広いラインディスプレイを開発していきます。
研究内容や成果等
■ ラインディスプレイの構成
本研究で製作するラインディスプレイは画像データと信号を転送するマイコン基板1枚と16個のLEDを駆動するユニット基板4枚を接続し、64個のLED表示部から成る。
ユニット基板の構成図をFig.1に示す。64個のフルカラーLEDは192個の出力が必要となるため、8画素ずつ24回に分けてデータをラッチ回路に保持し、すべてのラッチ回路にデータを送信したら一斉にトランジスタアレイへ出力する手法をとった。また、ラッチ回路を2段用いることで、片方のラッチ回路がマイコンからの出力を受信している間に、もう片方のラッチ回路は前に保持された画像データをトランジスタアレイに出力することで、データ送信時のLEDの消灯を制御することができる。ユニット基板にはCPLD(Altera MAX® V 5M240ZT100C5N、100ピンの79 I/O数)を使用する。ユニット基板デジタル回路部で設計する箇所はラッチ回路とデコーダとコンパレータの周辺回路で、トランジスタアレイとLED、DIPスイッチはユニット基板に設置する。マイコンはPIC24EP512GP204を使用し、出力はFig.1のように画像データと基板・ラッチ回路選択、ゲート、Enableが出力される。
ユニット基板の構成図をFig.1に示す。64個のフルカラーLEDは192個の出力が必要となるため、8画素ずつ24回に分けてデータをラッチ回路に保持し、すべてのラッチ回路にデータを送信したら一斉にトランジスタアレイへ出力する手法をとった。また、ラッチ回路を2段用いることで、片方のラッチ回路がマイコンからの出力を受信している間に、もう片方のラッチ回路は前に保持された画像データをトランジスタアレイに出力することで、データ送信時のLEDの消灯を制御することができる。ユニット基板にはCPLD(Altera MAX® V 5M240ZT100C5N、100ピンの79 I/O数)を使用する。ユニット基板デジタル回路部で設計する箇所はラッチ回路とデコーダとコンパレータの周辺回路で、トランジスタアレイとLED、DIPスイッチはユニット基板に設置する。マイコンはPIC24EP512GP204を使用し、出力はFig.1のように画像データと基板・ラッチ回路選択、ゲート、Enableが出力される。
■ ラインディスプレイの製作
設計した回路をもとにCDAソフトEagleで設計したユニット基板のパターン図と製造したプリント基板をFig.2に示す。基板の大きさは縦をLED16個分の長さ122mm,横を100mmと設計した。基板同士の接続はピンソケットとピンヘッダを使用する。フルカラーLEDの接続はL型のソケットに差し込む。CPLDは3.3Vと1.8Vの電源を使用するため、三端子レギュレータで電圧を変換する。製図したユニット基板4枚とマイコン基板1枚を接続して組み立てた。実際に製作したラインディスプレイをFig.3(略)に示す。
データ書き込み時間を観測するためにオシロスコープで測定する。画像データは1ラインの赤のみを点灯させるデータを使用し、すべてのラッチ回路にデータが保持されるまでLEDを消灯し、書き込み終了後LEDを5μs点灯する。オシロスコープ測定結果をFig.4に示す。測定結果から、PICマイコンの書き込み時間が20μsであることがわかった。これまでの研究で開発した装置のデータ転送時間42μsよりも2倍以上速くなった。
■ 実験
(1)実験方法
点滅周期と画像の知覚可能距離の評価実験を行う。ラインディスプレイ一基配置し、実験時の環境は夜の野外で照度は0.9lx、画像は64×64サイズの黄色の星の画像を使用した。被験者には装置の正面から装置を観測してもらい最も元データに近い縦横比均等の状態で画像が知覚できる位置を申告する方法を取る。装置の点滅周期を0.05msから0.3msまでの0.05ms毎に行う。
(2)実験結果
実験結果のグラフをFig.5に示す。縦軸を知覚可能距離、横軸を点滅周期のグラフにまとめた。結果から画像を知覚しやすい最適な点滅周期と距離の関係は点滅周期が速いほど距離が遠く、点滅周期が遅いほど距離が短いことが分かった。理由としては角速度と被験者と装置間の距離に対する視野角が一定とした場合、被験者と装置間の距離に比例して眼球の移動距離が伸びるため眼球運動中に眼球がディスプレイを捉えるときの速度が速くなったからだと考えられる。
点滅周期と画像の知覚可能距離の評価実験を行う。ラインディスプレイ一基配置し、実験時の環境は夜の野外で照度は0.9lx、画像は64×64サイズの黄色の星の画像を使用した。被験者には装置の正面から装置を観測してもらい最も元データに近い縦横比均等の状態で画像が知覚できる位置を申告する方法を取る。装置の点滅周期を0.05msから0.3msまでの0.05ms毎に行う。
(2)実験結果
実験結果のグラフをFig.5に示す。縦軸を知覚可能距離、横軸を点滅周期のグラフにまとめた。結果から画像を知覚しやすい最適な点滅周期と距離の関係は点滅周期が速いほど距離が遠く、点滅周期が遅いほど距離が短いことが分かった。理由としては角速度と被験者と装置間の距離に対する視野角が一定とした場合、被験者と装置間の距離に比例して眼球の移動距離が伸びるため眼球運動中に眼球がディスプレイを捉えるときの速度が速くなったからだと考えられる。
■ 多階調表現
PWM波形を発生させ、色の階調を増やすことで、多階調色を含む画像を表示することができる。データ転送時間が20μsであることから、一番見やすい点滅周期0.3ms(1)を元に15パルス点滅させ、色の階調を16段階に増やした。ラインディスプレイを点滅させて表示した多階調色を含む画像の写真をFig.6に示す。この写真は眼球運動と同様にデジタルカメラを動かして撮影した。階調を増やしたことにより、多階調色の含む画像を表現できた。
■ まとめ
本研究ではCPLDとPICマイコンを用いてラインディスプレイを製作し、動作を確認することができた。また、PICマイコンを用いてデータ転送時間が20μsになり、高速化が実現できた。実験結果からは画像を知覚しやすい最適な点滅周期と距離の関係は点滅周期が速いほど距離が遠く、点滅周期が遅いほど距離が短いことが分かった。データ転送時間の高速化により16階調の色を含む画像を表示することができた。
- 指導教員からのコメント 人間中心家電研究室教授 奥村 万規子
- 本研究で製作したラインディスプレイは、一見、ライン上に並べたLEDが点灯しているだけに見えますが、視線をそらしたり、まばたきの際に眼球が少しだけ動くと、人間の脳で2次元画像を知覚できる不思議な情報提示装置です。実際には、2次元画像を縦一列ずつ、高速に点滅させているので、目が0.05秒間くらい動くだけで画像が知覚できるのです。特に、夜間など周りが暗いと、鮮やかな画像を見ることができます。広告や、エンターテイメント、防犯など幅広い分野での応用が期待できます。今回、川崎君は、高速な画像データ処理を行う複雑な回路を設計し、画像表示のためのプログラムも製作しました。研究熱心で、教員の期待以上の成果を上げてくれました。大学院に進学後の活躍も大いに期待しています。
- 修士研究学生からの一言 川崎 直紀
- 私は研究を通じて電気回路の基礎知識を学ぶことができ、グループワークでは、自分の意見を考えること、ポジティブに行動すること、仲間とのコミュニケーション、計画をたてることが大事であることを経験しました。研究をすることで一番大事なのは人との信頼関係、絆だと思いました。この4年間先生方、先輩方、友人とのコミュニケーションで自分の成長の変化を感じることができました。学会発表では、他の人からの意見や評価を聞くことができ、とても貴重な体験ができました。
- 創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科(大学サイト )
- 教員紹介ページ(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)