卒業研究のご紹介
2022年版

医療技術・栄養系所属学生

食事空間における照明が視覚からのおいしさに与える影響

磯野 来夢新潟県
健康医療科学部管理栄養学科
2022年3月卒業
新潟県立高田北城高等学校出身

研究の目的

食事をする空間は味の感じ方や食事の満足感に大きく影響を与えると考えられ、その空間を構成する照明は重要な要素です。
最近では色温度(K)や明るさを表す照度(lux)を自由に調整できるLED照明が増えています。そのため、食事をする本人が各照明の特性を理解し、食品によって適切な照明を選択することが重要であると考えました。
本研究では、食事をおいしく食べるためにはどのような照明を用いたらよいのかを知ることで、より良い食事空間を作れるようになることを目的としました。

研究内容や成果等

■ 【方法】

(1) 調査対象

神奈川工科大学健康医療科学部管理栄養学科4年生20名(男性10名、女性10名)を対象とした。

(2) 調査方法

照明以外の食事空間を統一にした条件で3種類(昼光色(350lux,6500K)、昼白色(350lux,5000K)、電球色(350lux,3000K))の照明を順番に用い、7種類(紅茶ゼリー、杏仁豆腐、ラズベリー、ブルーベリー、シャインマスカット、からあげ、肉まん)の食品がどのように見えるかのアンケート調査を実施した。アンケートの内容は、「食欲」、「視覚からのおいしさ」、「食べ物の温度感」の3項目とし、VAS尺度を用いて対象者から回答を得た。

(3) 統計解析

統計解析パッケージSPSSver.25(IBM.JAPAN)を用いて、Kruskal-Wallis検定、Bonferroni多重比較検定、Mann-WhitneyのU検定を行い、危険率5%をもって、有意差ありとした。

■ 【結果及び考察】

(1) 3種類の照明条件の男女比較

男性と女性の3種類の照明条件の総合点では、7種類の食品のうち同じ評価になったものは「シャインマスカット」、「からあげ」、「肉まん」の3種類のみであった。「シャインマスカット」では昼光色、「からあげ」と「肉まん」では電球色の総合点が最も高かった。男性では「からあげ」、「肉まん」で3種類の照明間で有意差が認められ、女性では「紅茶ゼリー」、「杏仁豆腐」、「シャインマスカット」、「からあげ」、「肉まん」で有意差が認められた。このことから、男性より女性のほうが食品と照明との相性を認識し、評価をしたのではないかと考えられた。

(2) 温かい食品と冷たい食品の比較

男性女性ともに電球色照明条件下では、冷たい食品よりも温かい食品の方が「食欲」、「視覚からのおいしさ」、「食べ物の温度感」において有意に好まれていた(各々p<0.01)。また、昼白色照明条件下では、温かい食品よりも冷たい食品の方が「食べ物の温度感」において有意に冷たそうに見えた(p<0.01)。対象者全体で食事を提供しない状態での照明の評価では、昼光色、昼白色、電球色の順に有意に冷たそうに見えたと評価していた(昼光色 vs 昼白色間, p<0.05),(昼白色 vs 電球色間, 昼光色 vs 電球色間,p<0.01)。このことから、温かい食品には電球色照明、冷たい食品には昼白色照明や昼光色照明を用いるのが適切ではないかと考えられた。

食事空間の設定についてです。用いた3種類の照明のうち、電球色は温かみのある光が特徴であり、反対に昼光色は青みがかった爽やかな光が特徴です。昼白色は電球色と昼光色の間のような色合いで、自然光に近い照明です。食事空間としては、木製テーブルの真上にシーリングライトを1つ設置し、実験を行いました。


7種類の食品についてです。冷たい食品には、紅茶ゼリー、杏仁豆腐、ラズベリー、ブルーベリー、シャインマスカットが該当し、温かい食品にはからあげ、肉まんが該当します。冷たい食品と温かい食品を比較することも本研究での目的としました。

■ 【結論】

照明の種類は「食欲」、「視覚からのおいしさ」、「食べ物の温度感」に影響を与えていた。各照明の特性を理解し、食品によって適切な照明を選択することが重要である。
卒業研究学生からの一言 磯野 来夢

研究活動を振り返り成長したこと

研究活動では、自分が主体となって積極的に行動する力を身につけることができました。また、いつまでに何をするべきなのかを常に考え、計画を立てていくことの大切さも学ぶことができました。

未来の卒研生(高校生)へのメッセージ

大学での勉強は自分が楽しみながら学べるものを選ぶことが大切だと思うので、高校生のうちから自分の好きなことや将来やりたいことを見つけられるようにいろいろなことを経験したり自己分析をしてみるのがおすすめです。