卒業研究のご紹介
2021年版
電気電子系所属学生
共同ECHONET Liteを利用した行動変容による生活改善システム(HEMS時計)の研究
市川 雅也(代表者)静岡県
創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科2021年3月卒業
静岡県立科学技術高等学校出身
近藤 将一千葉県
創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科2021年3月卒業
千葉県 日本体育大学柏高等学校出身
研究の目的
現在日本人の90%以上の人は睡眠に不満を感じており、寝ても疲れが取れないという課題があります。その原因の一つにSNSやスマートフォンの普及により睡眠時間を確保できていない現状が挙げられます。このような課題に対し、IoTやHEMS機器を利用した室内環境の変化によって生活者に対して気づきや寝室への誘導を行い、適切な就寝時刻に就寝させる手法が論じられています。そこで、本研究では生活環境にある家電やIoT機器などのHEMS機器を利用した「HEMS時計」の提案と環境構築を行うことで行動変容を起こし、最適な就寝と睡眠時間の確保を促すことを目的とします。
研究内容や成果等
■ 行動変容を促すシステム
最適な就寝のため、リビングから寝室に誘導を行う「寝室誘導」、寝室から寝台に誘導を行う「寝台誘導」、横たわる状態から睡眠状態に誘導を行う「就寝誘導」の3段階で捉え、本稿では「寝室誘導」を主対象としたシステムを実現する。実現にあたっては「Node-RED」を活用する。システムの概要図をFig.1に示す。
本システムでは就寝時刻(T)をシナリオセンターに設定すると、複数あるシナリオの中から一つを選択し、タイムスケジュールに沿って機器をECHONET Lite(以下EL)により制御を行う。具体的なシナリオの一例としては、就寝時刻の1時間前にAIスピーカーが就寝までの時間を発言し、30分前にリビングの照明を自動で暗くさせるものである。シナリオの選択は、個人によって気づきやすさや不快度が異なる可能性があり、また部屋で使用している機器も多種多様であるため、今回は先に挙げた例の実現に取り組む。
本システムでは就寝時刻(T)をシナリオセンターに設定すると、複数あるシナリオの中から一つを選択し、タイムスケジュールに沿って機器をECHONET Lite(以下EL)により制御を行う。具体的なシナリオの一例としては、就寝時刻の1時間前にAIスピーカーが就寝までの時間を発言し、30分前にリビングの照明を自動で暗くさせるものである。シナリオの選択は、個人によって気づきやすさや不快度が異なる可能性があり、また部屋で使用している機器も多種多様であるため、今回は先に挙げた例の実現に取り組む。
■ 寝室誘導案と実現方法
(1) AIスピーカーを活用した寝室誘導
AI スピーカーから発話をさせることで就寝を促す提案を発言させ、行動に移させることが可能だと考えた。AIスピーカーの制御には「Node-RED」を活用し、AIスピーカーで任意の言葉を発言させるためノード「Cast」を使用した。発話までのシステムフロー図を Fig.2 に示す。
Excelファイルのシナリオリストに発言内容を記載し就寝時間の10分前に「10分後に照明を暗くします」などの発言を行う。照明のシナリオリストの一部をFig.3に示す。時間ごとに異なったフレーズの番号を指定し発言をさせることで、寝室へ行くことや就寝することへの意識づけを高められると考えた。
AI スピーカーから発話をさせることで就寝を促す提案を発言させ、行動に移させることが可能だと考えた。AIスピーカーの制御には「Node-RED」を活用し、AIスピーカーで任意の言葉を発言させるためノード「Cast」を使用した。発話までのシステムフロー図を Fig.2 に示す。
Excelファイルのシナリオリストに発言内容を記載し就寝時間の10分前に「10分後に照明を暗くします」などの発言を行う。照明のシナリオリストの一部をFig.3に示す。時間ごとに異なったフレーズの番号を指定し発言をさせることで、寝室へ行くことや就寝することへの意識づけを高められると考えた。
(2)シーリングライトを活用した寝室誘導
生活する上で常時点灯しているシーリングライトを活用することで行動変容を促せると考えた。シーリングライトはEL対応の東芝ライテック社製LEDH81718LC-LT3を使用した。制御には「Node-RED」とELを使用しON/OFFの制御、また就寝時間であることに気づきやすくするために、シーリングライトの色を青や赤などに変わるように設定した。
(3)アンビエント照明を活用した寝室誘導
シーリングライトのように部屋全体を照らすだけではなく作業場所を対象に必要な場所にだけ照明を行うタスク照明や光を天井や壁、床などに当てて、その反射光で間接的に照らす間接照明(アンビエント照明)を用いた行動変容を考えた。アンビエント照明はPHILIPS社製のHueを使用した。Hue制御には「Node-RED」を使用しJSON形式でのデータ通信でのON/OFFの制御を行った。
(4)EL対応HAリレーボックスを活用した寝室誘導
一般家庭内においてEL規格が搭載されていない機器も多いため、大和電気株式会社が販売しているELアダプターを活用し、EL規格で家電の電源のON/OFFができるHAリレーボックスを使用した。家電だけでなく、人感センサーや開閉センサーについてもELアダプターを活用する。このような構成とし、制御系をEL規格に統一することができる。
生活する上で常時点灯しているシーリングライトを活用することで行動変容を促せると考えた。シーリングライトはEL対応の東芝ライテック社製LEDH81718LC-LT3を使用した。制御には「Node-RED」とELを使用しON/OFFの制御、また就寝時間であることに気づきやすくするために、シーリングライトの色を青や赤などに変わるように設定した。
(3)アンビエント照明を活用した寝室誘導
シーリングライトのように部屋全体を照らすだけではなく作業場所を対象に必要な場所にだけ照明を行うタスク照明や光を天井や壁、床などに当てて、その反射光で間接的に照らす間接照明(アンビエント照明)を用いた行動変容を考えた。アンビエント照明はPHILIPS社製のHueを使用した。Hue制御には「Node-RED」を使用しJSON形式でのデータ通信でのON/OFFの制御を行った。
(4)EL対応HAリレーボックスを活用した寝室誘導
一般家庭内においてEL規格が搭載されていない機器も多いため、大和電気株式会社が販売しているELアダプターを活用し、EL規格で家電の電源のON/OFFができるHAリレーボックスを使用した。家電だけでなく、人感センサーや開閉センサーについてもELアダプターを活用する。このような構成とし、制御系をEL規格に統一することができる。
■ 実験環境とプロトタイプ
(1)実験環境
一般家庭への導入前に動作を確認するために学内の実験室に家電機器を設置し、実験環境を構築した。Fig.4に構築した環境の概要を示す。構築した環境ではリビングと寝室を想定した部屋分けを行った。Table 1は使用する機器リストである。
一般家庭への導入前に動作を確認するために学内の実験室に家電機器を設置し、実験環境を構築した。Fig.4に構築した環境の概要を示す。構築した環境ではリビングと寝室を想定した部屋分けを行った。Table 1は使用する機器リストである。
(2)プロトタイプによる動作確認
実験環境に設置したAIスピーカー、シーリングライト、アンビエント照明(Hue)、EL対応HAリレーボックスについて、指定した時間の発言やON/OFF 制御ができるかを確認するため、一連の動作を連携させた。確認のため睡眠時間を7時間30分、就寝時刻を午後 11 時に設定した。また「寝室誘導案と実現方法」で述べたAIスピーカーについては就寝時刻までの時間や家電機器の制御を知らせる発言ができると確認した。
実験環境に設置したAIスピーカー、シーリングライト、アンビエント照明(Hue)、EL対応HAリレーボックスについて、指定した時間の発言やON/OFF 制御ができるかを確認するため、一連の動作を連携させた。確認のため睡眠時間を7時間30分、就寝時刻を午後 11 時に設定した。また「寝室誘導案と実現方法」で述べたAIスピーカーについては就寝時刻までの時間や家電機器の制御を知らせる発言ができると確認した。
■ 一般家庭への導入
一般家庭として、大学生の一人暮らしの部屋で実験を行った。Node-REDをインストールしたRaspberry Piを使って制御するように設定した。また機器は「AI スピーカー」「アンビエント照明(Hue)」を導入し、「寝室誘導案と実現方法」で述べたシナリオリストの動作を実行した。
その結果、指定した時間通りにそれぞれの機器が動作することを確認できた。また、就寝しやすいようにアンビエント照明の色や照度を事前に設定しておくことで、さらに質の高い睡眠がとれると考えた。
また夜間のAIスピーカーによる騒音トラブルや家電の種類によっては強制的に電源を落とすとトラブルの原因になることが問題点として考えられた。
その結果、指定した時間通りにそれぞれの機器が動作することを確認できた。また、就寝しやすいようにアンビエント照明の色や照度を事前に設定しておくことで、さらに質の高い睡眠がとれると考えた。
また夜間のAIスピーカーによる騒音トラブルや家電の種類によっては強制的に電源を落とすとトラブルの原因になることが問題点として考えられた。
■ まとめと今後の課題
本研究では、生活リズム・就寝を整えるために生活環境にある家電やIoT機器などHEMS 機器を利用した「行動変容を促すシステム」の開発を行った。具体的には、AI スピーカー、シーリングライト、EL非対応機器をそれぞれ制御できるように構築し、実験環境を整えた。また、実住宅で試行し、課題を抽出した。
今後は、シナリオの数を増やし、様々な家電機器の組み合わせでシステム動作を確認する。また、実際に被験者を募り実住宅において評価を行う。
今後は、シナリオの数を増やし、様々な家電機器の組み合わせでシステム動作を確認する。また、実際に被験者を募り実住宅において評価を行う。
- 指導教員からのコメント IoTスマートライフ研究室教授 一色 正男
- 我々の研究室では、スマートハウスならではの生活改善を研究しています。特に、今回は「朝起きられない」を改善するべく「寝かせる」行動変容を起こす、実際の家で実現可能なシステムの開発を実施してもらいました。アイデア発掘からの研究でしたが、興味を持って「あるべき姿を想像し、形にするべく創造してくれた」ことは良かったです。実際に作り使用してみることで分かる課題点なども整理してくれました。今回の経験を生かして、これからも、色々なことに興味をもって研究にチャレンジしてほしいです。
- 卒業研究学生からの一言 市川 雅也
- 研究活動を振り返り学んだことは、研究や課題解決の工程などで必ず目標を定めることが大切であるということです。何事も期限が決まっているので、その目標までのスケジュールをしっかり組み立て、自分は何をすべきなのか、といったチーム内における自分の担当分野への積極性を生み出すことにもつながり、チーム内でそれぞれの近況を共有し合うようになりました。また、共有し合うことで、自分自身のスキルアップへ繋げられました。以上のことから、何事も目標を定め行動することが大切であると学びました。
- 創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科(大学サイト )
- 教員紹介ページ(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)