卒業研究のご紹介
2021年版

情報系所属学生

海洋ゴミ問題をテーマにしたシリアスゲームの検討

大島 有貴栃木県
情報学部情報メディア学科2021年3月卒業
栃木県立大田原高等学校出身

研究の目的

シリアスゲームとは、娯楽目的のみでなく現実問題解決を主目的とするコンピュータゲームである。
シリアスゲームと授業を比較することによって、シリアスゲームを教育に用いる効果や、授業デザイン、学習者の特性が立証されてきている。よってシリアスゲームとシリアスゲームを比較し、ゲーム内のインタラクションがどのようなものが学習に効果的であるかについて研究する必要があると感じた。本研究では、環境問題に対する意識を高めることを目的とした独自に開発したシリアスゲームを用い、インタラクションがどのようなものであるとき、効果を高めるか検証を行う。具体的にはA)最低限のインタラクション、B)プレイヤーに選択を与え吊り上げるのに労力を伴うインタラクション、C)スライド提示のみの3つのケースで海洋ゴミ問題に関する意識の変化の度合いが変わるのではないかという仮説を検証することが目的である。

研究内容や成果等

■ 実験内容

研究には独自に開発したゲームは魚を釣ることが目的であるように見えるゲームであるが、プレイヤーがどんな操作をしても必ずプラスチック製品のゴミしか釣れず、最後に海洋ゴミ問題の中で特にプラスチックゴミが問題であることを意識させるスライドを提示する。このゲームを元に3つのコンテンツを準備した。
コンテンツAでは「HIT」の文字に合わせて画面をタップすることでゴミを釣り上げることができ、どの操作をしても3種類同じ組み合わせのゴミが釣れる。コンテンツBではプレイヤーに大きさの異なる魚影を提示し、どの魚影を釣り上げることができるか狙って釣り上げるためには上手に操作しなくてはならず、大きい魚影を選択すると大きいゴミが、小さい魚影を選択すると小さいゴミがそれぞれ3種類決められた順で釣れる。また「HIT」の文字の表示後、連打しなくては釣り上げることができない。コンテンツCはスライド提示のみである。

■ 実験方法

SNSを用いて被験者を募り、web上でコンテンツをランダムに1つ体験してもらいその後アンケートで、コンテンツの楽しさ、コンテンツ体験前後の海洋ゴミ問題に対する関心度、プラスチックゴミ問題の理解度について10段階評価で尋ねた。

■ 結果

アンケートの回答を分析した結果、現実問題解決型ゲームを用いた場合、体験前と後の海洋ゴミ問題に対する関心度の平均値、体験前と後のプラスチックゴミ問題に対する理解度の平均値に有意差があり、コンテンツ体験後の方が海洋ゴミ問題に対する関心度、プラスチックゴミ問題に対する理解度の平均値が高い結果となった。
しかし、ゲーム内のインタラクションの違いによっては、海洋ゴミ問題に対する関心度、プラスチックゴミ問題に対する理解度に有意差が見られなかった。

■ 考察

現実問題解決型ゲーム内のインタラクションの違いに関わらず、コンテンツ体験後の方が海洋ゴミ問題に対する関心度、プラスチックゴミ問題に対する理解度の平均値が高い結果となったため、インタラクションの数が多い現実問題解決型ゲームに比べて、最低限のインタラクションの現実問題解決型ゲームの方が遊び方についての説明が少なくなることや、プレイにかかる時間が短くなることから学習には効果的であるのではないかと考察される。

■ おわりに

本研究では、シリアスゲームのインタラクションがどのようなものであるときにより効果的かを検証した。
その結果、最低限のインタラクションの方が学習には効果的であるのではないかと考察される。
指導教員からのコメント ビジュアルコンピューティング研究室教授 佐藤 尚
3年生の時に東京ゲームショウで展示したゲームから発展させたテーマだったので、テーマの設定はすぐにできました。環境問題に関連したゲームの効果を測定するというテーマは、社会的にも有用なものです。自分の仮説を調べるための実験方法の決定やデータの分析はかなり大変だったのではないかと思いました。ゲーム系教員の中村先生の多くの助言により、何とか卒業研究を完成させることができました。本来であれば、学会発表もできるような内容だったと思いますが、それができずに残念でした。この卒業研究を行うにあたって学んだことや経験はとても貴重なものだと思います。これらの経験を社会に出てからも活かして下さい。
卒業研究学生からの一言 大島 有貴
「ゲームクリエータ特訓」というプロジェクトで、チームでゲーム開発を行いました。そのプロジェクトでは東京ゲームショウでの展示を目的とし、与えられた課題からゲームやオリジナルのコントローラーを作成し、ゲームを体験するお客様がどう感じるか、チームでの効率的な作業、発生した問題を解決するための方法などを様々な角度から考えることができました。その経験は就職活動だけでなく、その後の仕事でも活かすことができると思います。