卒業研究のご紹介
2020年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
Propionibacterium acnesリパーゼ阻害剤のスクリーニング法の開発
小川 彩可茨城県
応用バイオ科学部応用バイオ科学科/医生命科学特別専攻 2020年3月卒業
茨城県立水戸第三高等学校出身
研究の目的
アクネ菌と呼ばれるPropionibacterium acnes(P.acnes)は、ニキビの原因菌として知られていますが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。しかし、近年、アクネ菌が分泌するリパーゼがニキビの要因になることが明らかになりました。そのメカニズムは、皮脂腺内のトリアシルグリセロールをアクネ菌のリパーゼで分解して生じた脂肪酸が、毛穴から分泌できなくなることによりニキビが生じるというものです。そのため、リパーゼに対する阻害剤は、新たなニキビ治療薬の発見に貢献できるのではないかと考えました。本研究の特徴として、ヒトも同様なリパーゼを持つため、ヒトには効果を示さず、アクネ菌のみに効果を示す阻害剤を見つけることを研究室独自の方法を用いて取り組みました。
研究内容や成果等
■ 実験方法
(1)発現ベクターの構築
P.acnes(NBRC107605)を37℃で2日間嫌気培養を行った。得たコロニーからゲノム抽出を行い、目的の遺伝子配列をPCRにて増幅し、電気泳動とシークエンス解析を行った。得たPCR産物とpCold ⅠをEcoRⅠとNdeⅠで制限酵素処理(37℃、2h)をし、ライゲーション(16℃、2h)を行った。そして、大腸菌(Dh5α)に形質転換(37℃,一晩)を行い、得た形質転換体を用いて、PCRによりインサートを確認し、ベクターが構築できているかを確認した。
(2)タンパク質精製
得た形質転換体の培養液をOD600値0.4〜0.5の範囲におさめ、浸透培養(15℃、24h)を行った。その後、菌液をLysisbufferで抽出し、His-tag精製を行い、SDS-PAGEで確認した。
(3)リパーゼの活性測定
精製したタンパク質を50µL、リパーゼ活性基質である0.01mMの4-Methylumbelliferyloleate(4−MUO)150µL、およびリン酸緩衝液(pH=7.5)800µLを加え37℃で40分間反応させた。その後、励起波長375nm、蛍光波長450nmで分光光度計により、蛍光強度を測定した。
P.acnes(NBRC107605)を37℃で2日間嫌気培養を行った。得たコロニーからゲノム抽出を行い、目的の遺伝子配列をPCRにて増幅し、電気泳動とシークエンス解析を行った。得たPCR産物とpCold ⅠをEcoRⅠとNdeⅠで制限酵素処理(37℃、2h)をし、ライゲーション(16℃、2h)を行った。そして、大腸菌(Dh5α)に形質転換(37℃,一晩)を行い、得た形質転換体を用いて、PCRによりインサートを確認し、ベクターが構築できているかを確認した。
(2)タンパク質精製
得た形質転換体の培養液をOD600値0.4〜0.5の範囲におさめ、浸透培養(15℃、24h)を行った。その後、菌液をLysisbufferで抽出し、His-tag精製を行い、SDS-PAGEで確認した。
(3)リパーゼの活性測定
精製したタンパク質を50µL、リパーゼ活性基質である0.01mMの4-Methylumbelliferyloleate(4−MUO)150µL、およびリン酸緩衝液(pH=7.5)800µLを加え37℃で40分間反応させた。その後、励起波長375nm、蛍光波長450nmで分光光度計により、蛍光強度を測定した。
■ 結果及び考察
(1)タンパク質精製
構築したベクターのインサートは、9つの変異が入っていたが、2つのコロニーで同じ場所に変異が入っていたため、菌株に変異が入っていると考え、このインサートを用いてベクターを構築した。精製したタンパク質をSDS-PAGEで確認した。その結果をFig.1に示す。
構築したベクターのインサートは、9つの変異が入っていたが、2つのコロニーで同じ場所に変異が入っていたため、菌株に変異が入っていると考え、このインサートを用いてベクターを構築した。精製したタンパク質をSDS-PAGEで確認した。その結果をFig.1に示す。
目的タンパク質量付近にバンドを確認することができなかった。精製条件を検討する必要がある。また、変異が入っていたため、IDTより人工合成したリパーゼ遺伝子配列をインサートとしたベクターの構築も現在行っている。
(2)リパーゼ活性の測定
4-MUOがリパーゼによって分解され、生産される4-MU(励起波長375nm、蛍光波長450nm)の蛍光強度によってリパーゼ活性を測定した。P.acnesのリパーゼは分泌型であるため、P.acnesを液体培養し、集菌後の上清と精製したタンパク質を用いて活性を測定した。その結果をFig.2に示す。
(2)リパーゼ活性の測定
4-MUOがリパーゼによって分解され、生産される4-MU(励起波長375nm、蛍光波長450nm)の蛍光強度によってリパーゼ活性を測定した。P.acnesのリパーゼは分泌型であるため、P.acnesを液体培養し、集菌後の上清と精製したタンパク質を用いて活性を測定した。その結果をFig.2に示す。
両方のサンプルで活性を確認することができた。以上の結果をもとに、当該酵素を固定化し、活性評価法の構築に取り組む予定である。
- 指導教員からのコメント 生物制御科学研究室教授 飯田 泰広
- 特別専攻生らしく、4年生になった時から修士の学生さんのように一通りの研究に対する考え方が身についていたと思います。そのため、テーマの立ち上げだったにもかかわらず、しっかり取り組み充実した成果をだせましたね。あまり器用ではなかったことを知っている分すごいと思っています。負けず嫌いで、できるまで何度でも繰り返し努力する性格が、自身を成長させ続けた結果だと思っています。その才能は社会に出てからより発揮されると思います。今後の活躍に期待しています。
- 卒業研究学生からの一言 小川 彩可
- 私は、特別専攻の授業で行った「サイエンスインカレ」に出場するためのグループ研究で、考える力や行動する力を身につけることができました。授業内の実験では、使用する試薬や器具、実験方法など全て指示されたことを行うので、不安は全くありません。しかし、私たちの研究では、テーマを決め、テーマに沿った論文を探し、使う試薬を注文、器具の用意、実験、結果のまとめ、発表することを全て行いました。そのため、失敗することへの不安でとても辛い日々でしたが、諦めずにやり遂げ、ファイナリストに選ばれ、サイエンスインカレ・アンバサダー賞を得ることができました。この経験は、卒業研究をするにあたって、とても役に立ったと思います。
- 応用バイオ科学部応用バイオ科学科(大学サイト )
- 教員紹介ページ(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)