卒業研究のご紹介
2021年版

医療技術・栄養系所属学生

野菜摂取推進のためのSNSを用いた継続的な情報提供に関する研究

佐久馬 涼神奈川県
健康医療科学部管理栄養学科2021年3月卒業
神奈川県立相原高等学校出身

研究の目的

SNS(Social Networking Service)は、現代人にとって重要なコミュニケーションツールとなっています。近年では、SNSを用いた広告や情報提供が活発に行われており、今後SNSによる情報提供がより発展していくと考えます。
先行研究では、継続的な情報提供によって、情報に対する関心が高まることが報告されていました。
そこで私の研究では、SNSで自作した野菜に関する情報を継続的に配信することで、野菜に対する興味・関心、摂食行動に及ぼす影響を、前後比較試験で明らかにすることを目的としました。

研究内容や成果等

■ 方法

(1)調査対象
神奈川工科大学の健康医療科学部管理栄養学科を除く学生30名(男性22名、女性8名)を対象とした。
(2)媒体作成
野菜摂取推進のために、野菜に関する情報媒体(野菜の成分について・野菜と生活習慣病の関連性・野菜の雑学やおいしい食べ方・保存方法など)を画像(縦横比16:9)で作成した。
(3)調査内容
対象者は介入群と非介入群にランダムに分けた。介入群には、SNSアプリケーション「LINE」に加入し、1か月間、計10回の情報を提供した。非介入群は、1か月間未介入とした。アンケートは、野菜に対する興味・関心、摂食量、情報への興味・関心に関することで構成し、介入前後で自記式アンケ—ト調査を行った。
(4)統計解析
統計解析パッケージSPSSver.25(IBM.JAPAN)を用いてMcNemar検定とFisherの正確確率検定を行い、危険率5%をもって有意差ありとした。

■ 結果及び考察

(1)野菜情報に関する意識
継続的な情報提供により、情報が「役に立った」「記憶に残った」と回答したものは、「情報配信前よりも野菜に関する情報に興味を持った」と回答した者が多かった(p<0.05)。また、「野菜に関する情報を提供するSNSアカウントが存在した場合、興味を持つ」と回答した者は、「情報提供前よりも野菜に関する情報に興味をもった」と回答した者が多かった(p<0.05)。
このことから、情報が実生活で役立つことや記憶に残る内容であることは、野菜に関する情報への興味・関心を高める上で重要な点であると考えた。また、情報提供前より野菜に関する情報に興味を持った者は、SNSを活用した情報提供に肯定的であると考えられた。
(2)野菜の嗜好性と摂食行動
「野菜の好き嫌い」において介入群における介入前と介入後では、前後で回答が変化しなかった。また、「一日に食べる野菜の量」においても前後で回答が変化しなかった。
SNSによる1か月間の継続的な情報提供を行った場合でも、野菜に対する好き嫌いや摂食行動に関しては影響が認められなかった。

■ 結果

1か月間の継続的な情報提供は野菜に関する情報に関心を持たせたが、野菜の摂食行動には影響しなかった。
野菜への興味・関心を高め、摂食行動を変容させるための情報提供方法を、今後も探究していく必要がある。
卒業研究学生からの一言 佐久馬 涼
SNSで情報提供を行うために10回分の情報媒体を作成した際には、ニーズに合い、かつ面白いと感じてもらえる内容を考えることや、興味が湧くようなものを作成することの難しさを実感しました。
研究活動の中で、アイデアを研究室の仲間と共有することができたおかげで、より良い情報媒体を作ることができました。
研究メンバー同士で助け合い、異なる意見を戦わせ、切磋琢磨して研究を進めることができ、協調性が育まれ、社会人になる上での社交性を身につけることができた1年間だったと思います。
また、媒体作成では他学科の先生のご指導や学生との交流をもつことができ、より広い視野をもてたように思います。