卒業研究のご紹介
2021年版
化学・バイオ系所属学生
ラット胃腺粘液細胞由来ムチンの分離・精製
廣瀬 千夏神奈川県
応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2021年3月卒業
神奈川県立有馬高等学校
研究の目的
胃は、強力なタンパク分解酵素であるペプシンや胃酸を産生・分泌し、食物中のタンパク質の消化を営んでいる。一方、胃もタンパク質であるため、自らが作り出した消化酵素によって消化されないような防御のしくみを備えている。これが胃粘膜防御機構と呼ばれるもので、胃粘膜表面を覆う粘液がその中心的な役割を果たしている。粘液の主要成分はムチンと呼ばれる高分子量の糖タンパク質で、ペプチド鎖に多様な糖鎖が密に結合しているといった特殊な構造を有している。胃にはペプチド鎖や糖鎖構造の異なる複数種のムチンが存在していることが知られていたが、近年、胃粘膜深部に局在する腺粘液細胞由来ムチンがピロリ菌に対して抗菌的な作用を示すことなどが明らかにされ、ムチン分子種の構造と機能が注目されている。本研究では、腺粘液細胞由来ムチンの糖鎖を識別するモノクローナル抗体を用い、胃粘膜抽出物から腺粘液細胞由来ムチンの単離、精製を試みた。
研究内容や成果等
■ 実験方法
ラット胃腺粘液細胞由来ムチンの調製
凍結乾燥したラット胃粘膜を粉末化した後、2%TritonX-100含有50mMTris-HCl緩衝液(pH7.2)中に懸濁させ、ムチンを抽出した。懸濁液を遠心分離して不溶性成分を除去した後、水溶性成分をゲル濾過(充填剤:8%BAgaroseBeadsStandard,溶離液:0.5MNaCl)で分画した。カラムの排除限界容量(Vo)付近に溶出した画分を集め、さらに、CsCl密度勾配遠心法により密度約1.4g/mLの画分を分取し、ムチンを精製した。
胃ムチンから胃腺粘液細胞由来ムチンを分離、精製するため、胃腺粘液細胞由来ムチンを特異的に認識するモノクローナル抗体HIK1083を固相化したカラムを用いることとし、ブチルカラムへのHIK1083の固相化を検討した。
凍結乾燥したラット胃粘膜を粉末化した後、2%TritonX-100含有50mMTris-HCl緩衝液(pH7.2)中に懸濁させ、ムチンを抽出した。懸濁液を遠心分離して不溶性成分を除去した後、水溶性成分をゲル濾過(充填剤:8%BAgaroseBeadsStandard,溶離液:0.5MNaCl)で分画した。カラムの排除限界容量(Vo)付近に溶出した画分を集め、さらに、CsCl密度勾配遠心法により密度約1.4g/mLの画分を分取し、ムチンを精製した。
胃ムチンから胃腺粘液細胞由来ムチンを分離、精製するため、胃腺粘液細胞由来ムチンを特異的に認識するモノクローナル抗体HIK1083を固相化したカラムを用いることとし、ブチルカラムへのHIK1083の固相化を検討した。
■ 結果及び考察
ラット胃ムチンの抽出・精製
ラット胃粘膜抽出物をゲルろ過にかけたところ、カラムの排除限界容量付近(Vo)と、カラムから遅れて溶出する位置に中性糖のピークがみられた。胃腺粘液細胞由来ムチンを認識するHIK1083の反応性は、分子量150万以上の成分が溶出するVo画分にのみ認められた(図1)。ゲルろ過で分離したムチン画分を、さらに、CsCl密度勾配遠心法により分画した。その結果、HIK1083が認識する胃腺粘液細胞由来ムチンは密度約1.4g/mLのムチン画分に分画されていることが確認された(図2)。ラット胃腺粘液細胞由来ムチンは、分子量150万以上、密度約1.4g/mLであることが示唆された。
HIK1083の無血清培地培養上清液を1.5M硫酸アンモニウム共存下でHiTrapButylHPカラム(GEHealthcareBio-SciencesAB)に添加したところ、抗体の固相化かみられた。胃腺粘液細胞由来ムチンをアフィニティー精製できる可能性が示唆された。
ラット胃粘膜抽出物をゲルろ過にかけたところ、カラムの排除限界容量付近(Vo)と、カラムから遅れて溶出する位置に中性糖のピークがみられた。胃腺粘液細胞由来ムチンを認識するHIK1083の反応性は、分子量150万以上の成分が溶出するVo画分にのみ認められた(図1)。ゲルろ過で分離したムチン画分を、さらに、CsCl密度勾配遠心法により分画した。その結果、HIK1083が認識する胃腺粘液細胞由来ムチンは密度約1.4g/mLのムチン画分に分画されていることが確認された(図2)。ラット胃腺粘液細胞由来ムチンは、分子量150万以上、密度約1.4g/mLであることが示唆された。
HIK1083の無血清培地培養上清液を1.5M硫酸アンモニウム共存下でHiTrapButylHPカラム(GEHealthcareBio-SciencesAB)に添加したところ、抗体の固相化かみられた。胃腺粘液細胞由来ムチンをアフィニティー精製できる可能性が示唆された。
廣瀬さんは、よく弱音を吐くものの、根はとても“がんばり屋さん”だと思います。だからこそ、ここまでできたのだと思います。これからも様々な困難な課題に取り組まれることと思いますが、弱音を吐くことであまり自分にプレッシャーをかけず、挑戦し続けてもらえたらと思います。