卒業研究のご紹介
2021年版

情報系所属学生

eスポーツ環境を想定したコンテンツ送信の基礎性能評価

鈴木 晨汰朗静岡県
情報学部情報ネットワーク・コミュニケーション学科2021年3月卒業
静岡県 第一学院高等学校出身

研究の目的

私がなぜこの研究をしようと考えたかというと趣味として対戦ゲームをよくプレイしたり、プロの試合を観戦したりすることがあります。その際にオンラインとオフラインでの環境がかなり違う点がとても気になっていました。オンラインではオフラインよりも遅延が多いため、キャラの評価すら変わってしまうことがよくあります。対戦相手も同じ条件なのでフェアな試合自体は可能ですが、大きい大会がオフラインで行われることが多いため、大会での環境で練習することが難しいです。選手のパフォーマンスが充分に発揮できるようになるためにはより実践に近い練習が必要であり、ネットワークの環境を新しく考察していきたいと思い、今回の研究を行うに至りました。

研究内容や成果等

■ 提案する評価方法

eスポーツの対戦を行うシミュレーション環境を3つ作成する。全てのデータがサーバを介して通信する方式、サーバを介さずにそれぞれのデバイスのみでの通信、情報指向型ネットワーク(ICN)を利用した通信を比較する。
それぞれの通信方法の手順としては
・全てのデータがサーバを介す手順
1,各デバイスがそれぞれの情報をサーバに直接送信する
2,サーバから直接各プレイヤーにデータを送信する
3,全てのデータを受け取る時間とコンテンツの受信率を計測する
・全てのデータがサーバを介さない手順
1,各デバイスからフラッディングをする
2,欲しい情報を保持している一番近いデバイスからデータを取得する
3,全てのデータを受け取る時間とコンテンツの受信率を計測する
・ICNを利用した手順
1,各デバイスからフラッディングをする
2,フラッディングの結果により、サーバからデータ取得するか、より自分に近いデバイスからデータを取得するかを決定する
3,全てのデータを受け取る時間とコンテンツの受信率を計測する

■ シミュレーション

それぞれの通信環境でシミュレーションを行う。シミュレーションモデルとしては表1の通りとなっている。

表1.シミュレーションパラメータ
シミュレーションで比較するものとしてパケット送信平均遅延とコンテンツ受信率を評価項目とする。シミュレーション結果を図1、図2に示す。

図1 パケット送信平均遅延

図2 コンテンツ受信率

■ まとめ

パケット送信平均遅延についてはICNを使った方式が他2つと比べて大きく改善された。ICNを使用した場合ではデータを周辺の機器から直接もらうことが可能であるため、わざわざサーバからデータをもらう必要がないデータの分の数値が改善され、平均して遅延が改善されていることが考えられる。コンテンツ受信率においてはeスポーツ環境において影響が出る程の差ではなかった。
今回のシミュレーション環境ではデバイスが10台という設定だったが、台数が多い場合、少ない場合等で結果が変わる可能性があるため様々な環境に対応した方式を検討すべきである。
指導教員からのコメント モバイルネットワーク研究室教授 塩川 茂樹
eスポーツは、これまで海外を中心に活発に普及してきましたが、近年では国内でも急速に普及し始めています。特に老若男女問わず、場所や時間の制約を受けることなく、また他者との接触がなくても実施可能なeスポーツは、新しいスタイルのスポーツとして今後ますます定着していくものと考えられます。しかしながら、eスポーツのプラットフォームを支える技術はまだ発展途上にあります。私たちは、その中でもネットワーク技術の観点からeスポーツの課題解決に取り組んでいます。今回紹介した研究は、情報指向型ネットワーク(ICN)という新しいネットワーク技術がeスポーツに適しているかをコンピュータシミュレーションにより評価したものです。まだ基礎的な研究の段階ですが、今後は実証実験を進めていきたいと考えています。
卒業研究学生からの一言 鈴木 晨汰朗
私は人に頼ることが苦手で研究においてもなかなか人を頼ることができませんでした。しかし、研究室の仲間や先輩、先生がとても親身になってくださり、研究を終えることができました。私は今まで自分の力でなんとかしようという気持ちが強かったのですが、協力し合うことの大切さや自分一人でできることの少なさを痛感し、人を頼ったり人から頼られるような人間になりたいと思いました。自分のことを見つめ返す良い機会になり、これからもっと成長していきたいと感じました。