卒業研究のご紹介
2020年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
緑化修復用樹種ホホバ雌株の選択的増殖技術の開発
山本 洋介神奈川県
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻Bコース 博士前期課程 2020年3月修了
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2018年3月卒業)
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2018年3月卒業)
神奈川県立横浜清陵高等学校出身
研究の目的
世界規模の砂漠化は深刻な問題であり、砂漠化を防ぐための世界的なプロジェクトとして、様々な乾燥耐性植物の植林による緑化が進められています。しかし、植林された植物に経済的価値が低いとプロジェクト後は放置され、薪用に伐採される事例がほとんどです。そこで乾燥耐性を有するだけでなく、経済的価値の高い植物としてホホバ(Simmondsia chinensis)が緑化修復用樹種として期待されています。しかし、雌雄異株植物であるホホバは、厳しい乾燥条件における雌株率は17%に低下し、播種から開花・結実まで5-6年を要するため、種子生産の面から雌株優良株の増殖が求められています。そこで、雌雄判別と植物体再生・増殖条件を検討しました。
研究内容や成果等
4種類の10merプライマー(OPBC-11, OPX-05, OPAL-20, OPAR-08)を用いたPCRにより、雄株特異的なDNA領域を増幅し、電気泳動により雄株特異的なバンドを検出することに成功した(図1)。その結果、形態学的に雌雄判別が不可能な実生の段階で、早期雌雄判別可能なDNA分析法を開発した。
野外で生育中のホホバ植物体を材料に用い、4-8月に採取した新梢を表面殺菌(中性洗剤溶液で洗浄した後、70%エタノールに1分間、続いて、有効塩素濃度1.0%の次亜塩素酸ナトリウム溶液に20分間浸漬)して用意した外植片を3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天、0.5mg L-1ゼアチン(iZ)添加MS寒天培地で8週間培養すると無菌率84.0%で15.0芽を有する6.0mmの長さのシュートが3.6本得られる培養系を確立した(図2)。さらに、再生した無菌の幼植物体のシュートから外植片を調整し、3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天、5.0mg L-1ベンジルアデニン(BA)、0.5 mg L-1インドール酪酸(IBA)添加MS培地で8週間培養すると28.9芽を有する5.1mmの長さのシュートが6.3本得られるin vitro増殖系を確立した(図3,4)。このようにして得られたシュートを1,000mg L-1インドール酪酸(IBA)溶液にディッピング処理した後、3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天を添加したホルモンフリーMS培地に置床し、8週間培養することにより、50.0%のシュートから発根が認められ、完全な植物体への再生が可能となった。
以上の結果から、修士論文で確立したホホバ雌雄判別法と判別後のホホバ雌株のin vitro増殖法は、従来の繁殖法に代わる効率の高い繁殖法として利用が期待される。
野外で生育中のホホバ植物体を材料に用い、4-8月に採取した新梢を表面殺菌(中性洗剤溶液で洗浄した後、70%エタノールに1分間、続いて、有効塩素濃度1.0%の次亜塩素酸ナトリウム溶液に20分間浸漬)して用意した外植片を3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天、0.5mg L-1ゼアチン(iZ)添加MS寒天培地で8週間培養すると無菌率84.0%で15.0芽を有する6.0mmの長さのシュートが3.6本得られる培養系を確立した(図2)。さらに、再生した無菌の幼植物体のシュートから外植片を調整し、3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天、5.0mg L-1ベンジルアデニン(BA)、0.5 mg L-1インドール酪酸(IBA)添加MS培地で8週間培養すると28.9芽を有する5.1mmの長さのシュートが6.3本得られるin vitro増殖系を確立した(図3,4)。このようにして得られたシュートを1,000mg L-1インドール酪酸(IBA)溶液にディッピング処理した後、3%(w/v)スクロース、0.7%(w/v)寒天を添加したホルモンフリーMS培地に置床し、8週間培養することにより、50.0%のシュートから発根が認められ、完全な植物体への再生が可能となった。
以上の結果から、修士論文で確立したホホバ雌雄判別法と判別後のホホバ雌株のin vitro増殖法は、従来の繁殖法に代わる効率の高い繁殖法として利用が期待される。
■ 結論
本研究により、DNAマーカーを利用したホホバ雌株の早期判別技術を確立、野外植物から無菌シュート再生に成功し、効率的なin vitro増殖法を開発した。また、ディッピング法によりシュートからの発根に成功し、完全な植物体に再生することに成功した。本技術の確立は、ホホバ雌株の選択的な増殖を可能とし、緑化修復用樹種としての利用を推進する成果と期待している。
卒業研究では、乾燥耐性植物の組織培養に関する研究をしています。研究では、良好な結果が出ずに思い通りに進むことができないこともありましたが、先生とのディスカッションにより問題を1つずつ解決していくことができました。また、研究を通じて先を見越して予定を組む力が身につきました。