卒業研究のご紹介
2021年版

情報系所属学生

拡張現実感によるCOVID-19対人飛沫シミュレーション環境の構築

稲村 泰我静岡県
情報学部情報メディア学科2021年3月卒業
静岡県立三島南高等学校出身

研究の目的

2020年はCOVID-19の世界的パンデミックが発生したことは記憶に新しいかと思います。それに伴い、感染症予防対策として様々な工夫が執り行われています。
しかし、実際に人と対面する事態を避けることはできません。
そこで私の研究では、拡張現実感(一般的にARと呼ばれているもの)を利用して擬似的に対人環境を構築し、飛沫の拡散する様子を体感できるようにすることで、感染リスクを抑える立ち振る舞いを訓練する手法を研究しています。
この手法では、実際に人と対面する必要がなく、ソーシャルディスタンスが保たれているかどうかの判定も自動的に行ってくれるため、飛沫が飛散する距離の意識づけやソーシャルディスタンスの距離感覚を収縮させるために有効的であると考えます。

研究内容や成果等

■ 要旨

2020年のCOVID-19の世界的パンデミック以降、国内ではソーシャルディスタンスの普及など感染症予防対策を行うことが一般化してきたことで感染リスクは低下してきているが、十分ではない。COVID-19に関するアプリケーションも提供されているものの、実際に対面する際に使用したりするなど直接感染リスクを減らすことは難しい。また、拡張現実感(Augmented Reality:以下AR)を利用した一般消費者向けのサービスが多く提供されており、中には擬似体験を利用して訓練を行うことのできるサービスも存在する。しかし、それらは仮想現実(Virtual Reality)を用いるものが主流であり、ARを用いた訓練も研究が進んでいるが対人訓練に関する研究は盛んではない。
本研究では、ヘッドマウントディスプレイを利用する没入型ARで擬似的に対人環境を構築し、飛沫シミュレーションを実際に体感してもらうことで、感染の危険性がない状態で飛沫の飛ぶ様子やソーシャルディスタンスを体感的に訓練する手法を提案する。実験を行った結果、被験者が察知することのできた感染の危険性が高い状況は警告を行っていた時間内で、最高でも25%前後であることが判明した。この結果より、被験者が判断するよりも正確に危険な状況を察知することのできる本手法で反復して訓練することで、飛沫の飛ぶ距離の意識づけやソーシャルディスタンスの距離感を習熟させることに有用であると考える。
今後、対人環境を構成する3Dモデルキャラクタに表情を追加して無表情の不気味さを緩和させたり、モデルの気配を作り出すため足音を追加したりするなど、擬似対人環境を現実の対人環境に近づける工夫が必要になると考えられる。

解説図

距離計算方法

実験結果
指導教員からのコメント ヒューマン・ブレインメディア研究室教授 坂内 祐一
昨年はコロナウィルス感染者が爆発的に増え、私たちの社会生活に大きな影響を与えました。ウィルスは人から人へと感染するので、公共の場でのマスクの着用とソーシャルディスタンスの確保が重要ですが、いろいろな場面でどのようにしたら他の人からウィルスの飛沫を浴びないようにできるかを理解するのは困難です。この研究では、さまざまな場面で他の人と出会ったときにどの程度の距離を取ればよいかを体験・学習するシステムを制作しました。拡張現実感(AR)を用いて、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着したユーザの視界に等身大のアバタが歩いて来たり、おしゃべりをしていたりするシーンが出現するので、ユーザはウィルスの飛沫を浴びないように回避行動を取っていき、その結果どの程度の危険性があるかを判定してくれます。すぐにでも実用化が望まれる研究となりました。
卒業研究学生からの一言 稲村 泰我
特に行っていてよかったと感じたのは、2年次から参加が可能な「ゲームクリエイター特訓」です。3、4年次に講義や研究などで扱うUnityについて先行して勉強することができ、チームでの開発や面白いコンテンツを生み出すためのアイデア出しの方法など、社会に出てからも必要となるような技術を身につけるよい機会でした。
また、昨年はコロナウイルスの影響で参加できなかったようですが、東京ゲームショウなどのイベントに参加する機会があるので、就職活動時の話題などにもできると思います。