卒業研究のご紹介
2021年版
電気電子系所属学生
コロナ放電によるウイルス・菌の不活性化
杉山 裕俊静岡県
大学院電気電子工学専攻 博士前期課程1年
(工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業)
(工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業)
静岡県立御殿場南高等学校出身
研究の目的
現在、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの流行から空気清浄に注目が集まっている。空気清浄装置の一つとして、電気集塵装置(ESP)が挙げられる。ESPは、コロナ放電によって浮遊物・浮遊微生物を帯電させ、クーロン力によって接地平板電極に捕集できる。また、ESPはコロナ放電によってオゾンが生成されるため、オゾンの強い酸化力によって菌を不活性化できることが分かっている。しかし、菌の不活性化に対する電圧極性の影響やウイルスに対する効果は検討されていない。ウイルスに対して、高い不活性化効果が得られれば、新型コロナウイルスなどの感染防止などに役立つ。ここでは、黄色ブドウ球菌を用いて、不活性化に対するコロナ放電極性および加温の影響について検討した結果を紹介する。
研究内容や成果等
■ 実験装置及び方法
実験装置の概要をFig.1に示す。
装置はアクリル製のダクト内に線対平板電極構造の帯電部と平行平板電極構造の集塵部より構成された二段式ESPが配置された構造となっている。捕集された微生物を模擬して黄色ブドウ球菌を帯電部接地平板電極上のLocation 1〜3、集塵部接地平板電極上のLocation 4〜6のそれぞれ3か所に塗布し、コロナ放電に暴露した。また、コロナ放電の影響が及ばない位置にCtrlを配置した。帯電部で発生するオゾン濃度が0.1ppmとなるように負極性直流高電圧を6.76~6.98kVの間で印加し、放電電流を2~4μAに調整した。正極性直流高電圧印加時は6.98~7.05kV、放電電流を10~20μAとした。菌の不活性化に対する加湿の効果を検討するため、装置内湿度を75%~90%に調整した。暴露時間は1hとし、装置内風速は0.5m/sとした。
コロナ放電に暴露後、電極上の菌をラスパーチェックで拭き取り、寒天培地にて37℃設定で24時間培養した。菌のコロニー数から生存率を(1)式で算出した。
コロナ放電に暴露後、電極上の菌をラスパーチェックで拭き取り、寒天培地にて37℃設定で24時間培養した。菌のコロニー数から生存率を(1)式で算出した。
■ 実験結果及び検討
各Locationにおける生存率に対する極性の影響をFig.2に示す。実験は各3回ずつ行い、生存率を平均値で示した。エラーバーは最大値と最小値を示している。帯電部のLocation 1~3において正極性の生存率は負極性よりも高いが、集塵部のLocation 4~6では差が見られなかった。これは、正極性と負極性で発生するオゾンなどの分布が異なることが原因であることが既に明らかになっている。
正極性コロナ放電時における不活性化の向上を目的として生存率に対する加湿の効果を検討した。その結果をFig.3に示す。Location 2~6における常湿時の生存率が51%~112%であるのに対して、加湿時は1%~10%まで低下している。このことから、加湿によって高い不活性化効果を得られることが明らかである。
正極性コロナ放電時における不活性化の向上を目的として生存率に対する加湿の効果を検討した。その結果をFig.3に示す。Location 2~6における常湿時の生存率が51%~112%であるのに対して、加湿時は1%~10%まで低下している。このことから、加湿によって高い不活性化効果を得られることが明らかである。
■ まとめ
正極性コロナ放電における不活性化効果を検討した結果、以下のことが分かった。
・常湿時では、正極性よりも負極性の方が帯電部の不活性化効果は高い。
・加湿によって正極性コロナ放電時における不活性化効果が向上する。
- 指導教員からのコメント 電気応用研究室教授 瑞慶覧 章朝
- 杉山君は、3年次科目の「3年特別プロジェクト」で希望してくれて、そのまま、4年次の「卒業研究」も私の研究室に所属し、研究に励んでいました。研究は、ひとときも欠くことのできない空気を電気の力できれいにするのがテーマでした。彼は大変まじめで、素直に学び、例えるならば砂漠の砂に水を撒いたように知識や技術を吸収していくようでした。卒業研究の内容は、2021年夏の国際会議で、大学院生になった彼が英語で発表します。今後の成長がとても楽しみな学生です。
- 修士研究学生からの一言 杉山 裕俊
- 神奈川工科大学では電気工学、電子工学を基礎から学ぶことができるため、勉強に自信がなかった自分でも十分な知識を得ることができた。研究活動では、その知識をさらに深められ、企業との共同研究でも活発に議論できるようになった。また、研究活動を報告する機会や英語に触れる機会が多いので、プレゼンテーション能力や英語力の向上を実感できた。高校時代にあまり勉強してこなかったが、この4年間で社会に出た時に必要な能力、役立つ能力を磨くことができたので良かったと感じている。
- 大学院電気電子工学専攻 博士前期課程(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)