卒業研究のご紹介
2019年版
電気電子系所属学生
異なる発光スペクトルを有した近紫外線LED 光源による リモートフォスファー型照明器具の検討
川延 就郁神奈川県
大学院電気電子工学専攻 博士前期課程2年
(工学部電気電子情報工学科 2018年3月卒業)
(工学部電気電子情報工学科 2018年3月卒業)
神奈川県立茅ケ崎高等学校出身
研究の目的
紫外線LEDを利用し、比較的離れた蛍光体を励起発光させるリモートフォスファー型の照明について研究しています。このリモートフォスファーは励起発光させる蛍光体の混合比を変えることで光色を調整できます。私たちが見ている景色は太陽光が物体に反射した光を色として認識しています。反射した光で物体の色をどれだけ正しく認識できるかという指標で演色性があります。演色性が高い照明は色が重要となる場所で使われます。また、照度均斉度という照らされた面の光のムラを表す指標があります。研究ではこの演色性と照度均斉度を高めたLED照明を研究しています。リモートフォスファー型の高演色でそれぞれの照明環境に適した照明器具を作ることができれば、快適な照明環境を実現できると期待しています。
研究内容や成果等
■ 実験
表1に使用機器と蛍光サンプル作成材料、表2に蛍光サンプルの作成に使用した蛍光体を示す。蛍光体サンプルは封止材と蛍光体の混合溶液をガラス基板に塗布して作成した。蛍光体は表2の質量とし、撹拌は自転・公転ミキサーにより700rpmで3分間行い、ディスペンサ塗布容器のバレルに移し替えて700rpmで1分間脱泡した。蛍光体と封止材の混合液はディスペンサと塗布ロボットによりガラス基板に塗布した。塗布ロボットはディスペンサと接続されたバレルが装着可能でxyzの3軸上の座標に塗布材料の吐出制御が可能である。吐出圧力は100kPaとした。図1に蛍光体塗布時の針の軌跡と蛍光サンプルを示す。図2に発光スペクトル測定装置を示す。
■ 実験結果
図3に励起源として使用した3つの近紫外線LEDの発光スペクトルを示す。NS365L-ERLM(以下 NS365L)のピーク波長は368nmとなった。NS375L-ERLM(以下NS375L)、 NS400L-ERLM(以下NS400L)のピーク波長は375nm、400nm となった。図4に近紫外線LEDにより励起された蛍光サンプルの発光スペクトルを示す。波長 652nmにおけるNS375L-14mA の発光強度を100%としたとき、NS365L-25mAでは約82.7%まで低下した。波長 652nm における発光強度の差は図3のNS365L-25mAの368nmの発光強度がNS375L-14mAよりも高いため、励起効率の影響と考えられる。NS375L-25mAと NS400L-14mAでは460nm付近の発光強度はNS400L-14mAの方が低下した。青色蛍光体の最大励起波長380nmより長波長で発光強度が低下するためだと考えられる。
■ まとめ
3種の近紫外線 LED を励起源とした白色発光スペクトルの検討を行い、以下の結果が得られた。
1) 近紫外線LEDの発光強度を電流調整で近似させた。
2) 相関色温度はNS365Lで最大の2257K、NS400Lで最小の1999Kが得られた。
3) RaはNS400Lで最大の93.0、NS375Lで最小の87.9、RfではNS365Lで最大の89.0、NS400Lで最小の70.5が得られ、励起波長により演色性が変化することがわかった。
1) 近紫外線LEDの発光強度を電流調整で近似させた。
2) 相関色温度はNS365Lで最大の2257K、NS400Lで最小の1999Kが得られた。
3) RaはNS400Lで最大の93.0、NS375Lで最小の87.9、RfではNS365Lで最大の89.0、NS400Lで最小の70.5が得られ、励起波長により演色性が変化することがわかった。
- 指導教員からのコメント 准教授 三栖 貴行
- 川延君の研究の試みは 3原色 LEDの代わりに3つの近紫外線 LEDを用いることで高演色性発光の調光・調色を可能にすることです。3原色LEDでの調光・調色では生活で使用できない発光色も存在しています。彼が挑戦したいことは白色光を「温かみのある白色」、「涼しさを感じる白色」に調色可能で全ての発光が高い演色性を有することが目標です。演色性はモノの色の判別しやすさを表すものです。そのため博物館や美術館での応用が期待され、今後も研究活動を進めて頂きたいです。
- 修士研究学生からの一言 川延 就郁
- 研究では作製から測定までの実験をします。何度同じ測定をしても同じ測定結果が得られる再現性が重要で、作製条件や測定条件を考える必要がありました。作製時には失敗したサンプルができることや、同じ物を測定しても異なった測定値になるなど多くの困難がありましたが、改善の予測を立て何度も挑戦することが重要だと学びました。予測通りに改善した結果が得られた時、諦めず挑戦してよかったと感じます。学会で発表した際に興味関心を持って質問をいただいた時が嬉しく、また頑張ろうと思いました。
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