卒業研究のご紹介
2022年版
医療技術・栄養系所属学生
2人法エコーガイド下穿刺におけるプローブ軌跡から見た熟達度評価の一考察
秋山 圭太静岡県
健康医療科学部臨床工学科
2022年3月卒業
2022年3月卒業
静岡県立伊豆中央高等学校出身
研究の目的
透析ではバスキュラーアクセスへの穿刺困難症例でエコーガイド下穿刺(以下EGPとする)が増加傾向にある。EGPには1人法と2人法が存在し、前者ではEGPの習得法などは示されているが、後者では穿刺者とプローブ操作間の意思統一が問題となる。2人法においては、操作が熟達化する程穿刺者の意図を汲んだ動きになると思われ、プローブの軌跡から熟達度表現の可能性が考えられる。これらのことから、本研究では、2人法エコーガイド下穿刺におけるエコープローブ操作者の熟達度の差異をプローブの加速度変化から明らかにすることを目的とした。
研究内容や成果等
■ 方法
①被験者及び使用機器
被験者は、患者 1 名、穿刺者 1 名、エコープローブ操作者 2 名とした。エコープローブ操作者のうちエコー操作歴 12 年の臨床検査技師を「熟練者」、エコー操作歴 1 年未満の臨床工学技士を「初学者」とした。- モーションキャプチャ(以下、MC)用カメラ(V120:DUO Acuity Inc.)
- 計測ソフト(Motive:Body Optitrac)
- 超音波診断装置(LOGIQ S8 GE ヘルスケア・ジャパン)
- リニア式 EP(ML6-15(周波数:4~15MHz) GE ヘルスケア・ジャパン)
- SKYKOM(Acuity Inc.)
②実験方法
まず、患者さんの腕(穿刺位置)を中心に、補助的に手元を撮影するビデオカメラ、モーションキャプチャー用カメラ:V120-Duoを配置した。穿刺時のEPの動きを定量化するために、エコープローブのエコー操作者が把持に影響がない部分に3点のマーカーを取り付け動作時の変化を記録した。
今回は、穿刺者が針を皮膚に接触させてから、内筒を抜き終えるまでの穿刺タスクの部分に限定した。本研究は、長軸法における腕の左右方向(X軸)、腕の長さ方向(Y軸)、上下方向(Z軸)の経時変化を分析の対象とした。
本研究は、神奈川工科大学ヒト倫理審査委員会によって承認されている(第 20170803-16)。
③分析方法
分析には、Acuity Inc.社製 SKYCOMを用いた。EPを一つの剛体として認識させ、重心仮想マーカーに対する座標、加速度、積算距離を記録した。加速度の変化を基準に、加速度の最大変化が見られたタイミングで、他のパラメーターの変化を見るという方法で行った。以下に示す仮説を元に分析をした。・X軸
長軸法は、短軸法に比べ、X軸方向のプローブのズレが多くなる。熟練者の方が、エコー画像上の乱れに対する修正がはやいため、加速度が大きいのではないか。・Y軸
熟練者は、外筒留置位置のその先の血管の状態を確認するために、初学者に比べY軸マイナス方向の加速度が大きく、積算距離が多くなるのではないか。■ 結果
X軸の最大加速度は、ともにエコー画像のブレに対する修正の時に検出することができ、最大加速度は熟練者が、2022[㎜/s²]、初学者は、1217[㎜/s²]というような違いがみられた。さらに、エコー画面上ブレが生じてから修正するまでの時間は、熟練者の方が5秒程度早かった。
Y軸の最大加速度は、熟練者は、Y軸(-)方向(患者中枢側)への動きの際に最大を示し、初学者はY軸(+)方向(患者抹消側)への動きの際に最大を示した。この変化の直前でY軸 (-)方向(患者中枢側)への変化も見られた。
Z軸の最大加速度は、熟練者は、エコー画像より、針が血管に到達した際に最大加速度 (-)方向を示し、初学者は、(+)方向に示し、その直前では、(-)方向に大きい変化が見られた。積算距離の変化は、僅かではあるが熟練者の方が小さいことが読み取れた。
Y軸の最大加速度は、熟練者は、Y軸(-)方向(患者中枢側)への動きの際に最大を示し、初学者はY軸(+)方向(患者抹消側)への動きの際に最大を示した。この変化の直前でY軸 (-)方向(患者中枢側)への変化も見られた。
Z軸の最大加速度は、熟練者は、エコー画像より、針が血管に到達した際に最大加速度 (-)方向を示し、初学者は、(+)方向に示し、その直前では、(-)方向に大きい変化が見られた。積算距離の変化は、僅かではあるが熟練者の方が小さいことが読み取れた。
■ 考察
X軸は、単純に最大加速度を比較すると、熟練者の方が倍近く大きかったことから、ズレに対する修正の俊敏さがうかがえる。
Y軸は、最大加速度を(-)方向に示したこと、積算距離の変化が大きかったことより熟練者は外筒留置位置の先の血管走行を確認するため意識的に、中枢方向へプローブを動かしていると推測できる。初学者は、加速度が直前で(-)方向に変化が見られたのはプローブが針からの影響を受け動いてしまったと考えられ、(+)方向に最大加速度を示したことは、一定の位置に固定するという意識が強いのではないかと推測する。
Z軸の変化は、針が血管に到達した際、Z軸の加速度変化が(-)方向に最大加速度を示したこと、エコー画像上乱れが少なく、積算の距離は僅かであったことから、熟練者はプローブを通じて血管を押さえる方向に力を加えて血管を固定していると推測できる。血管固定のためであれば、血管を潰してしまう可能性があるため、皮膚に対して僅かにしか動かせないと考え、積算距離の変化が小さいのではないかという推測に至った。
Y軸は、最大加速度を(-)方向に示したこと、積算距離の変化が大きかったことより熟練者は外筒留置位置の先の血管走行を確認するため意識的に、中枢方向へプローブを動かしていると推測できる。初学者は、加速度が直前で(-)方向に変化が見られたのはプローブが針からの影響を受け動いてしまったと考えられ、(+)方向に最大加速度を示したことは、一定の位置に固定するという意識が強いのではないかと推測する。
Z軸の変化は、針が血管に到達した際、Z軸の加速度変化が(-)方向に最大加速度を示したこと、エコー画像上乱れが少なく、積算の距離は僅かであったことから、熟練者はプローブを通じて血管を押さえる方向に力を加えて血管を固定していると推測できる。血管固定のためであれば、血管を潰してしまう可能性があるため、皮膚に対して僅かにしか動かせないと考え、積算距離の変化が小さいのではないかという推測に至った。
■ まとめ
本検討を通じてプローブの軌跡から熟達度を明らかにできることが示唆された。
今回は、データ数が少なく推測までできないことや、個人差も考えられたため、今後データ数や検討パラメーターを増やすことで熟達度による差異をさらに明らかにし、エコーガイド下穿刺教育にフィードバックしていきたい。
今回は、データ数が少なく推測までできないことや、個人差も考えられたため、今後データ数や検討パラメーターを増やすことで熟達度による差異をさらに明らかにし、エコーガイド下穿刺教育にフィードバックしていきたい。
研究活動を振り返り成長したこと
私は、卒業研究を通して自分で考える力、問題が生じたときに解決策を考え試行錯誤する力を身につけることができました。卒業研究を進めていく中でうまくいかないことや、問題に直面します。その際、どれだけ自分で考え、試行錯誤し、解決に導くことができるかというのが研究を成功へと導く鍵になると思いました。これらを繰り返すことで、前述したような力を身につけることに繋がりました。この力は必ず将来へ活かすことができると考えています。