卒業研究のご紹介
2018年版

機械・自動車・ロボット系所属学生

水素燃焼を利用した小型暖房装置の開発

栁平 康広長野県
大学院機械工学専攻 博士前期課程 1 年
(工学部機械工学科 2018 年 3 月卒業)
長野県下諏訪向陽高等学校出身

研究の目的

近年、二酸化炭素(CO2)やフロンなどの温室効果ガスによる地球温暖化が大きな問題となり、世界各国で様々な規制や取り組みが行われているが、一般的な暖房機では化石燃料を使用しているため、燃焼時に多くの二酸化炭素が排出されているのが現状である。そこで本研究では、燃料として水素を用いることで CO2 の排出を抑え、水素燃焼時に発生する水蒸気も利用して加湿と加温を同時に行える小型暖房装置を開発し、地球温暖化の防止と化石燃料に代わるエネルギーの実用化を目指している。

研究内容や成果等

初めに環境に優しい水素・酸素発生装置を製造し、次に燃焼実験を行った。開発した発生器から供給した水素と酸素のガスは、燃焼器において炎が消えることもなく、安定して燃焼することが確かめられた。また、下図に示すように外気温が低下する環境下においても水素燃焼により加温が可能であることが検証できた。


1 月 23 日に測定した温度の比較

水素燃焼では発生するガスが水蒸気であるため、排出ガスを屋外に放出する必要がなく、一酸化炭素中毒などになる危険性がない。そのため、部屋の加湿と加温が同時に実現可能である。水素燃焼は、安全面に留意することで、地球環境に優しい暖房システムとして、今後普及が進む可能性が高い。

指導教員からのコメント 准教授 矢田 直之

今年の夏も異常な暑さが世界的な規模で発生しました。この原因の一つに二酸化炭素(CO2)の増加が指摘されています。この研究テーマでは、水素が燃焼時に二酸化炭素を発生しない点に着目し、水素を燃料として利用することを目的としています。燃焼に使用する水素も従来の工業用水素と異なり、水を電気分解することで製造するため、安全で環境にも優しい水素を発生する機械の製作から始めました。水素発生装置の製造に時間がかかったため、実際の燃焼実験は 1 ヶ月程度しかできませんでしたが、今後の二酸化炭素を出さない燃料の実用化に重要な一歩になったと確信しております。

この研究の成果の一部はすでに特許を出願しており、製造した水素発生装置も学生ベンチャー企業から生産・販売しております。

修士研究学生からの一言 栁平 康広

学部学科横断型授業(Stop the CO2)を通じ、1年次から多彩な講義や実験を行い、幅広い視点で問題を学び、今後必要とされる技術や課題について考えることができました。また旋盤やフライスなどの機械も、機械実習実験等を通じ学習できる他、学生フォーミュラなどの活動では仲間と共に車両を考え設計製作し、完成した時の喜びと面白さなどを経験することができました。