卒業研究のご紹介
2022年版
情報系所属学生
神奈川大学野球連盟における順位に影響を与える要因について
斎藤 翔太東京都
情報学部情報工学科
2022年3月卒業
2022年3月卒業
東京都立町田工業高等学校
研究の目的
本学硬式野球部は、開学以来「神奈川大学野球連盟(神奈川リーグ)」に所属しているが、残念ながら一度も優勝経験がない。選手たちは、試合の映像や実際に試合を見て主観的にチーム力や相手選手の能力を検討しているが、試合から得られた「データ」を見て、客観的にチーム力や相手選手の能力を検討していない。近年、「データサイエンス」という言葉を耳にするようになり、データを用いて分析する「データアナリスト」が増えてきている。そこで、卒業研究において、本学硬式野球部のデータ分析を中心に行い、チーム力や相手選手の能力を客観的に表し、リーグ戦の順位による能力差やリーグ戦1位チームと本学の能力差を検討することを目的とした。
研究内容や成果等
■ 方法
調査対象は、2015年春季から2021年秋季(2020年春季を除く)の全13シーズンとした。
取集したデータを基にセイバーメトリクスを使用して分析を行った。チーム力を投手力 (FIP)・打撃力(OPS)・守備力(DER)の 3 つの要因に分類し、その他の要因として投手は4つの要因、野手については、6つの要因を使用した。チーム力を表す3つの要因の算出方法は以下である。
取集したデータを基にセイバーメトリクスを使用して分析を行った。チーム力を投手力 (FIP)・打撃力(OPS)・守備力(DER)の 3 つの要因に分類し、その他の要因として投手は4つの要因、野手については、6つの要因を使用した。チーム力を表す3つの要因の算出方法は以下である。
- FIP = (被本塁打×13 + 与四死球×3−奪三振×2) ÷投球回 + 補正値
- 補正値 = 全体の防御率− (被本塁打×13 + 与四死球×3−奪三振×2) ÷投球回
- OPS = 出塁率 + 長打率
- 出塁率 = (安打 + 四死球) ÷ (打数 + 四死球)
- 長打率 = (単打×1+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4) ÷打数
- DER = (打席−安打−四死球−三振−失策) ÷ (打席−本塁打−四死球−三振)
■ 結果および考察
(1)順位での要因の関係
図1から3つの要因すべてが順位と強い相関関係があることが明らかとなった。表1から 3つの要因のP値が5%を下回っており、T 値から守備力(DER)>投手力(FIP)>打撃力(OPS) の順でリーグ戦の順位結果に影響を与えていることが明らかとなった。また、その他の投手の要因である防御率、奪三振率、与四死球率、被安打率が順位と強い相関関係があり、その他の野手の要因である安打率、得点率、犠打飛率、三振率に強い相関関係があることが明らかとなった。
先行研究における、高校野球の勝敗に与える影響については、打撃力(OPS)>守備力(DER)> 投手力(FIP)の順で影響があると言われているが、本研究においては異なる結果となり、その要因としては、金属や木製などの使用するバットに関係があると考えられる。
(2)1位と本学での要因の関係
表2から3つの要因のP値が5%を下回っており、T値から投手力(FIP)>守備力(DER)>打撃力(OPS)の順に力の差があることが明らかとなった。また、その他の投手の要因である防御率、奪三振率、与四死球率、被安打率に力の差があり、その他の野手の要因である安打率、得点率、犠打飛率、三振率に力の差があることが明らかとなった。
T値から神奈川工科大学は、まず投手の能力の改善や選手の補強をした方がよいのではないかと考えられる。
(3)分析ツールの制作
Excel を用いて分析ツールの開発に取り組んだ。関数やマクロ、VBAを利用してデータを入力するファイルを 2 種類、分析するファイルを5種類開発した。分析の機能は並び替え、セルの色付け・色付けクリア、評価、フィルター、グラフ作成の5つ機能がある。■ まとめ
投手力(FIP)・打撃力(OPS)・守備力(DER)の3つの要因はいずれも順位に影響を与えていることが明らかとなった。
1位と神奈川工科大学での投手力(FIP)・打撃力(OPS)・守備力(DER)の3つの要因はいずれも力の差があることが明らかとなった。
1位と神奈川工科大学での投手力(FIP)・打撃力(OPS)・守備力(DER)の3つの要因はいずれも力の差があることが明らかとなった。
今回の卒業研究のテーマでもある「神奈川大学野球連盟における順位に影響を与える要因について」は、「本学野球部を優勝させたいね?」という何気ない話の中、まずは「データの分析を」と、始めたものであります。しかし過去のデータは、紙媒体でのスコアブックへの記載に留まるものも多く、困難を極めました。しかし、野球データの分析を進めていくと新たな発見の連続であり、その結果をみては研究室のみなで大いにディスカッションを行いました。
「スポーツ現場とデータ理論の橋渡しを」と言う研究室の考えの元、スポーツ科学に関する多くの議論を行いました。本学の教育理念でもある「力と自信」が身についてくれたのかな?と、願うばかりであります。
研究活動を振り返り成長したこと
小学生から続けてきた野球についての研究内容であったため、研究を行っていてとてもやりがいを感じました。谷代研究室は「ディスカッション」を大切にしていて、多くの人とたくさんの議論を行いました。そのため、自分の意見の伝え方や相手の意見の理解など社会人として必要となるスキルを身につけることができました。未来の卒研生(高校生)へのメッセージ
野球やサッカー、ラグビー、バスケットボールなどスポーツデータ分析を研究室の同級生たちが行っており、「スポーツデータ分析」はとても面白く、やりがいを感じました。所属していた「スポーツ情報科学コース」が廃止され、なくなるのは残念ですが、スポーツが好きで「データ分析」に興味がある人には、谷代研究室がオススメです。