卒業研究のご紹介
2021年版
情報系所属学生
穴埋め式デジタルワークブックシステムを用いた学生の学習行動のリアルタイム分析
安部 功亮神奈川県
大学院情報工学専攻 博士前期課程2021年3月修了
(情報学部情報工学科2019年3月卒業)
(情報学部情報工学科2019年3月卒業)
神奈川県立厚木商業高等学校出身
研究の目的
近年、e-learningが普及するなど高等教育において情報化が進んでおり、同時に学習行動ログを分析するラーニングアナリティクスへの注目度も高まっている。しかし、Moodleといった既存のe-learningシステムでは取得できるログは粗粒度な上、種類が少ないため満足な分析が行うことができない。
一方、大学の講義では学生の集中を持続させるために、穴埋め式の教材を用いることがある。しかし、100人を超える大人数の講義では穴埋め中の学生がどれだけいるかを把握するのは難しい。
これらの背景から学生の授業態度を教員が把握し講義を改善すること、および、授業中の学生の集中を維持することを目的に穴埋め式デジタルワークブックシステムの開発を行った。
一方、大学の講義では学生の集中を持続させるために、穴埋め式の教材を用いることがある。しかし、100人を超える大人数の講義では穴埋め中の学生がどれだけいるかを把握するのは難しい。
これらの背景から学生の授業態度を教員が把握し講義を改善すること、および、授業中の学生の集中を維持することを目的に穴埋め式デジタルワークブックシステムの開発を行った。
研究内容や成果等
■ アプローチ
(1)全ての学生を対象とした学生行動の収集
図2.1に示すようにWeb上で穴埋めを行える穴埋め式デジタルワークブックシステムの開発を行った。本システム上でPDF文書から生成した穴埋め式のデジタル教材を用いて学生に穴埋めを行わせる。これにより、学生は最低限空欄を埋める必要があるためシステムとのインタラクションを半ば強制されることになり、アクティブとは言えない学生の学習行動ログが取得可能となる。
図2.1に示すようにWeb上で穴埋めを行える穴埋め式デジタルワークブックシステムの開発を行った。本システム上でPDF文書から生成した穴埋め式のデジタル教材を用いて学生に穴埋めを行わせる。これにより、学生は最低限空欄を埋める必要があるためシステムとのインタラクションを半ば強制されることになり、アクティブとは言えない学生の学習行動ログが取得可能となる。
(2)学習行動のリアルタイム分析と可視化
図2.2のように分析結果をリアルタイムで教員の手元のPCに提示する。グラフィカルにすることで説明中でもスクリーンへ目を通すだけで瞬時に学生の状態を知ることができる。これにより、教員が授業中に学生の学習態度を把握でき、学生に合わせた最適なアクションを取ることができる。
図2.2のように分析結果をリアルタイムで教員の手元のPCに提示する。グラフィカルにすることで説明中でもスクリーンへ目を通すだけで瞬時に学生の状態を知ることができる。これにより、教員が授業中に学生の学習態度を把握でき、学生に合わせた最適なアクションを取ることができる。
■ システム概要
本システムはオーサリングモード、ブラウジングモード、プレゼンテーションモード、アナリティクスモードの4つのモードを持つ。
オーサリングモードでは授業前、教員はPDF文書に空欄(穴埋め箇所)の設置とプレゼンテーション用の空欄削除順の設定を行い、穴埋め資料を作成できる。
ブラウジングモードでは学生が授業中に空欄付きのPDF文書をブラウジング(閲覧)しながら、空欄を埋めることができる。他にも、ラインを引く(資料の文に線を引く)、ノートをとる(コメントを記入する)、教員へ質問、穴埋め資料をPDF形式でダウンロードができる。
プレゼンテーションモードでは教員が授業中に説明をしながらスライドを進めるほか、学生の学習状態をリアルタイムに閲覧することができる。プレゼンテーションモードは学習行動可視化画面とプレゼンテーション画面の2つで構成されている。プレゼンテーション画面はスライドのみを表示している画面であり、プロジェクターなどで映し学生に見せることを想定している。学習行動可視化画面は教員の手元のディスプレイに映すことを想定しており、図2.2のようにリアルタイムに学生の学習行動ログが可視化される。
アナリティクスモードでは講義後の振り返りとして学生の学習態度の推移や学生からの質問を閲覧することができる。図3.1のように全学生の授業態度を集計し時系列ヒートマップを作成して教員に提示する機能を提供する。これにより教員は授業の改善ができる。
オーサリングモードでは授業前、教員はPDF文書に空欄(穴埋め箇所)の設置とプレゼンテーション用の空欄削除順の設定を行い、穴埋め資料を作成できる。
ブラウジングモードでは学生が授業中に空欄付きのPDF文書をブラウジング(閲覧)しながら、空欄を埋めることができる。他にも、ラインを引く(資料の文に線を引く)、ノートをとる(コメントを記入する)、教員へ質問、穴埋め資料をPDF形式でダウンロードができる。
プレゼンテーションモードでは教員が授業中に説明をしながらスライドを進めるほか、学生の学習状態をリアルタイムに閲覧することができる。プレゼンテーションモードは学習行動可視化画面とプレゼンテーション画面の2つで構成されている。プレゼンテーション画面はスライドのみを表示している画面であり、プロジェクターなどで映し学生に見せることを想定している。学習行動可視化画面は教員の手元のディスプレイに映すことを想定しており、図2.2のようにリアルタイムに学生の学習行動ログが可視化される。
アナリティクスモードでは講義後の振り返りとして学生の学習態度の推移や学生からの質問を閲覧することができる。図3.1のように全学生の授業態度を集計し時系列ヒートマップを作成して教員に提示する機能を提供する。これにより教員は授業の改善ができる。
■ システムの評価
本システムを使用することで教員が学生の学習態度を把握し講義を改善できているか、授業中の学生の集中を維持できているかを評価する。
学生の学習態度を把握し適切なアクションにより講義を改善できているか確認するために、正答率を表示した2019年度と非表示にした2020年度の授業での各ページの説明時間を比較する。図4.1にその結果を示す。
図中の四角のように演習のページで説明時間に差がみられた。正答率表示が無い場合、学生の解き終わるタイミングが推測できないため演習のページで説明時間に大きな差があったと考えられる。また、授業中の学生の集中を維持できているかを確認するために正答率、時系列ヒートマップを表示した2019年度と非表示にした2020年での先に進んだ学生の割合の推移を比較する。図4.2に結果を示す。左のグラフが正答率を非表示にした場合、右のグラフが時系列ヒートマップを非表示にした場合である。
図中の四角のように正答率表示が無い場合は急激に増加している。その反面、時系列ヒートマップが無い場合は違いがみられなかった。このことから、学生の学習態度の改善には寄与するが、時系列ヒートマップ機能は改善の必要があることが分かった。
学生の学習態度を把握し適切なアクションにより講義を改善できているか確認するために、正答率を表示した2019年度と非表示にした2020年度の授業での各ページの説明時間を比較する。図4.1にその結果を示す。
図中の四角のように演習のページで説明時間に差がみられた。正答率表示が無い場合、学生の解き終わるタイミングが推測できないため演習のページで説明時間に大きな差があったと考えられる。また、授業中の学生の集中を維持できているかを確認するために正答率、時系列ヒートマップを表示した2019年度と非表示にした2020年での先に進んだ学生の割合の推移を比較する。図4.2に結果を示す。左のグラフが正答率を非表示にした場合、右のグラフが時系列ヒートマップを非表示にした場合である。
図中の四角のように正答率表示が無い場合は急激に増加している。その反面、時系列ヒートマップが無い場合は違いがみられなかった。このことから、学生の学習態度の改善には寄与するが、時系列ヒートマップ機能は改善の必要があることが分かった。
■ むすび
全ての学生の授業態度をリアルタイムに教員が把握し講義を改善すること、および、授業中の学生の集中を維持することを目的に穴埋め式デジタルワークブックシステムを開発した。
本システムは学生に穴埋めを行わせ、システムとのインタラクティブを半ば強要させ、アクティブとは言えない学生の学習行動を収集可能にした。
評価実験から正答率表示で学生の解き終わるタイミングを把握でき、先に進む学生が減ることを確認した。
学習態度の改善に寄与できていない時系列ヒートマップの改良、理解度の抽出と可視化が今後の課題である。
本システムは学生に穴埋めを行わせ、システムとのインタラクティブを半ば強要させ、アクティブとは言えない学生の学習行動を収集可能にした。
評価実験から正答率表示で学生の解き終わるタイミングを把握でき、先に進む学生が減ることを確認した。
学習態度の改善に寄与できていない時系列ヒートマップの改良、理解度の抽出と可視化が今後の課題である。
- 指導教員からのコメント ソフトウェア工学研究室教授 田中 哲雄
- 安部功亮君は、卒業研究から大学院の修士論文まで、一貫して授業支援システムの研究を行いました。このシステムは、学生による教材への穴埋めやページめくり、アンダーラインなどの学習行動ログを収集し、リアルタイムに分析して結果を教員に提示します。これにより教員は、学生が授業についてきているか否かを把握し、必要に応じて進度を遅らせたり、説明を繰り返えすことができるようになります。安部君は、このシステムを100人以上が受講する実際の授業で活用できるようになるまで完成させ、さらに、それを評価して国内外の多数の学会で発表しました。この経験は社会に出てからきっと役に立つことと思います。これからのますますの活躍を期待します。
- 修士研究学生からの一言 安部 功亮
- 1年次から情報系の分野を幅広く学ぶことができたため自分の興味がある内容を知ることができました。また、本学の図書館はプログラミングに関する本が充実していたため授業以外でも独学でプログラミングの理解を深めることができました。研究では自分が開発したアプリケーションを実際の授業で使うことができ、100人以上の学生に使ってもらえるようにサーバーの強化やインターフェースの改善を行ったことは今後に繋がる大きな経験になったと感じています。
- 大学院情報工学専攻 博士前期課程(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)