卒業研究のご紹介
2021年版

化学・バイオ系所属学生

Rhodaneseを内包したGroEL/GroESの固定化の検討

佐藤 友紀神奈川県
応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2021年3月卒業
神奈川県立厚木東高等学校出身

研究の目的

大腸菌のシャペロニンGroELは約5 nmの内腔を持ち、リング入口の疎水基にATPと変性タンパク質が結合し、GroESと結合することで、変性タンパク質は落とし込まれ折り畳まれる(フォールディング)。酵素を担体や基盤に固定化して利用するバイオリアクタやバイオセンサは、反応溶液を送液することで生じる酵素反応を繰り返し行うことで連続的に反応物を添加し、生成物を回収できるフロー法への応用が期待される。しかし、固定化酵素は固定時の活性部位の失活や長期使用、熱などによる活性の低下という欠点がある。そこで酵素をGroELに内包し担体と結合させることで、活性部位の失活を防ぎ、安定させた状態で固定できると考えた(図1)。本研究ではGroELに内包された酵素の経時的活性、熱処理後の残存活性、反応温度活性の安定性を検証した。

図1 GroELを介したCPGへの酵素の固定化

研究内容や成果等

GroELによってフォールディングされる酵素であるRhodaneseを用いて、GroELに内包した酵素の安定性の評価を行った。長時間活性を維持できるかを経時的活性、熱変性から酵素を保護できるかを熱処理後の残存活性、様々な温度条件で酵素活性を保持できるか反応温度条件を変え、Rhodaneseの活性測定を行った。変性したRhodaneseをGroELに結合させ、GroESとATPを添加しフォールディングさせ、Rhodaneseの活性を測定した。GroELに内包したRhodaneseは、内包していないRhodaneseと比べて、経時的活性測定から8日間活性を維持できることが分かった(図2)。今後は、酵素を内包したGroELをCPGに固定化し、酵素の安定性の評価を行い、担体への酵素の固定化を目指す。

図2 GroELに内包した酵素の経時的活性
指導教員からのコメント 分子機能科学研究室教授 小池 あゆみ
当研究室では、シャペロニンの中に別の酵素を包摂して平板固定化することで、シャペロニンのタンパク質再生能力により自己修復可能な保存性の高い持続的バイオセンサーの基盤技術が構築できると考え、研究しています。他研究室との共同研究であり、事前の打ち合わせや準備など気を遣うこともあったはずですが、円滑なコミュニケーションと丁寧な事前準備で研究を進めてくれました。試験で点を取るのとは違う勉強の仕方に苦労をしましたが、卒業研究を通して困難な課題を乗り越えるための真の思考力が鍛えられ、自信をつけたことは大きな成果でした。
卒業研究学生からの一言 佐藤 友紀
私は中学生の頃から英語が苦手で、大学入試でも結果を出せませんでしたが、大学で行われたTOEIC、海外留学、また英論文に何度も挑戦することで、TOEICで600点を達成し、海外留学の際にはホストファミリーとの会話を楽しむこともできるようになりました。研究室に入ってからは、先生に紹介していただいた英論文を読み自分の研究に活かすことができました。また、今までは問題を解決する際に教科書や参考書に記載されていることを鵜呑みにしていましたが、研究室で研究を行う中で、生じた問題に対して教科書や参考書だけに頼るだけでは答えは出せず、結果を見て自分自身で考えていき答えを導き出すというプロセスの大切さを学びました。