卒業研究のご紹介
2021年版
電気電子系所属学生
休憩促進するデスクトップエージェントと家族型ロボットの連携による在宅ワーク時の疲労軽減
蓮沼 雅之福島県
創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科2021年3月卒業
福島県 会津若松ザベリオ学園高等学校出身
研究の目的
テレワークでの作業時において作業者の疲労を軽減するため、疲労時に家族型ロボットと連携し作業者に休憩を促すデスクトップエージェントを提案する。デスクトップ上の提案エージェントがウェアラブルデバイスから得た感情の情報を元に作業者の疲労度合いを推定し、作業画面上でさりげなくアピールすることによって休憩タイミングを提示する。あわせて提案エージェントと連携した家族型ロボットが休憩タイミングで動き出し、実世界でユーザに働きかけることにより休憩を促す。適切な休憩タイミングを提示することにより、より疲労の少ないテレワーク作業を実現する。
研究内容や成果等
■ 作業時における休憩タイミングの提示の重要性
業務において効率を維持するためには、作業時間や疲労具合に応じた適切な休憩が効果的である。疲労を検知し休憩を促す研究として東川ら(文献省略)が瞬目回数に基づく作業時の疲労推定と休憩タイミングの提示手法を提案している。この研究では、推定した疲労情報をもとにコーヒーメーカーを作動させることにより、オフィスワーカーが自主的に休憩するよう誘導している。この研究の自主的な休憩を促すという点に着目し、PCでの作業時に画面上にエージェントを表示させ作業の邪魔にならないようなさりげない休憩タイミングの提示を提案する。またデスクトップ型エージェントと家族型ロボットを連携させることで、視覚的にも触覚的にもリラックス効果の高いシステムを目指す。
本研究ではテレワーク作業時に適切なタイミングでソフトウェア、ハードウェアの両方から休憩を促し疲労を軽減するシステムを提案する。本稿では、主にその中のデスクトップ型エージェントについて報告する。
本研究ではテレワーク作業時に適切なタイミングでソフトウェア、ハードウェアの両方から休憩を促し疲労を軽減するシステムを提案する。本稿では、主にその中のデスクトップ型エージェントについて報告する。
■ 家族型ロボットとデスクトップエージェントによる休憩サポートシステム
在宅作業者に適度な休憩を促すことを目的として、生体データに基づく感情分析を用いた疲労の推定、およびデスクトップエージェントを用いた休憩タイミング提示手法を実装する。
(1)休憩サポートシステムの構成
作業者に適切な休憩タイミングの提示を行う手法としてデスクトップエージェントと家族型ロボットを用いた休憩サポートシステムを提案する(図1)。
(2)生体データに基づく感情情報の取得
生体データとして脈波に着目し、脈波データから感情情報を取得する。生体データの取得にはリストバンド型活動量計silmee w22(TDK)を、感情分析にはNEC感情分析ソリューション(日本電気株式会社)を用いる。NEC感情分析ソリューションはデバイス装着者の情動変化をリアルタイムに把握することができるシステムであり、心拍変動解析によりHAPPY、ANGRY、SAD、RELAXEDの4つの感情とArousal:覚醒度とValence:感情価(快/不快)の情報を提示する。同システムより取得した感情情報を元に疲労状態を推定する。
(1)休憩サポートシステムの構成
作業者に適切な休憩タイミングの提示を行う手法としてデスクトップエージェントと家族型ロボットを用いた休憩サポートシステムを提案する(図1)。
(2)生体データに基づく感情情報の取得
生体データとして脈波に着目し、脈波データから感情情報を取得する。生体データの取得にはリストバンド型活動量計silmee w22(TDK)を、感情分析にはNEC感情分析ソリューション(日本電気株式会社)を用いる。NEC感情分析ソリューションはデバイス装着者の情動変化をリアルタイムに把握することができるシステムであり、心拍変動解析によりHAPPY、ANGRY、SAD、RELAXEDの4つの感情とArousal:覚醒度とValence:感情価(快/不快)の情報を提示する。同システムより取得した感情情報を元に疲労状態を推定する。
(3)デスクトップエージェントによる休憩タイミングの提示
推定した疲労状態に基づき休憩タイミングを提示するために、作業者のコンピュータのデスクトップ上に在中するデスクトップエージェントを提案する。デスクトップエージェントは普段は作業の妨げにならぬようデスクトップの最背面で待機している。作業者の疲労を検知すると、エージェントが作業画面の前面に移動し、さり気なくアピールをすることで休憩タイミングを提示する。エージェントは作業者の疲労具合に応じてアピールの仕方を変える。表示されるデスクトップエージェントと表出のイメージをFig.2に示す。エージェントは画面上で休憩タイミングをアピールするとともに家族型ロボットに休憩タイミングが来たことを通知する。
(4)家族型ロボットLOVOTによる休憩タイミング提示
ハードウェア側からの休憩タイミングの提示方法としてLOVOT(GROOVE X社)を用いる。LOVOTは触れ合いを通じて人から愛着を引き出すことを目的とした家族型ロボットである。本研究ではデスクトップエージェントから送られてきた休憩タイミングの通知情報に合わせてLOVOTが作業者にアピールする。デスクトップエージェントと LOVOTが連携して、視覚、触覚の両面から休憩を促し効果的な疲労回復が期待できる。
推定した疲労状態に基づき休憩タイミングを提示するために、作業者のコンピュータのデスクトップ上に在中するデスクトップエージェントを提案する。デスクトップエージェントは普段は作業の妨げにならぬようデスクトップの最背面で待機している。作業者の疲労を検知すると、エージェントが作業画面の前面に移動し、さり気なくアピールをすることで休憩タイミングを提示する。エージェントは作業者の疲労具合に応じてアピールの仕方を変える。表示されるデスクトップエージェントと表出のイメージをFig.2に示す。エージェントは画面上で休憩タイミングをアピールするとともに家族型ロボットに休憩タイミングが来たことを通知する。
(4)家族型ロボットLOVOTによる休憩タイミング提示
ハードウェア側からの休憩タイミングの提示方法としてLOVOT(GROOVE X社)を用いる。LOVOTは触れ合いを通じて人から愛着を引き出すことを目的とした家族型ロボットである。本研究ではデスクトップエージェントから送られてきた休憩タイミングの通知情報に合わせてLOVOTが作業者にアピールする。デスクトップエージェントと LOVOTが連携して、視覚、触覚の両面から休憩を促し効果的な疲労回復が期待できる。
■ 感情情報に基づく疲労検知と休憩タイミングの決定
適切な休憩タイミングを決定するため、NEC感情分析ソリューションから得られる感情情報と、疲労時の主観的な感情を分析する。
(1)実験の手順
実験参加者に90分間の単純作業をさせ、そのときの生体データに基づく感情情報と主観アンケートを照合する。実験参加者の感情情報はNEC感情分析ソリューションにて分析、出力される。主観アンケートでは、実験参加者に10分ごと、および休憩したいと感じたときの双方のタイミングで、そのときの感情を横軸Valence、縦軸Arousalからなる二次元平面上に配置されたフェイススケールにて回答させる。
(2)作業時の感情情報の検証結果
取得された感情情報、およびフェイススケールアンケートの結果をVAS(Visual analog scale)を用いて数値化したものをFig.3に示す。
結果から、arousalもしくはvalenceのどちらかが大きく下がると作業者は休憩したいと感じることが確認できる(図中の■および▲)。またアンケート回答など、作業とは別のアクションがあった際にarousalの値が上昇する傾向がある。以上から、arousalとvalenceどちらか一方の値が下がった場合にも疲労を感じ、作業とは別のアクションがあるとこれらの疲労は回復する傾向があると考え、これを休憩タイミングして決定し、実装する。本実装は発表時に報告する(省略)。
(1)実験の手順
実験参加者に90分間の単純作業をさせ、そのときの生体データに基づく感情情報と主観アンケートを照合する。実験参加者の感情情報はNEC感情分析ソリューションにて分析、出力される。主観アンケートでは、実験参加者に10分ごと、および休憩したいと感じたときの双方のタイミングで、そのときの感情を横軸Valence、縦軸Arousalからなる二次元平面上に配置されたフェイススケールにて回答させる。
(2)作業時の感情情報の検証結果
取得された感情情報、およびフェイススケールアンケートの結果をVAS(Visual analog scale)を用いて数値化したものをFig.3に示す。
結果から、arousalもしくはvalenceのどちらかが大きく下がると作業者は休憩したいと感じることが確認できる(図中の■および▲)。またアンケート回答など、作業とは別のアクションがあった際にarousalの値が上昇する傾向がある。以上から、arousalとvalenceどちらか一方の値が下がった場合にも疲労を感じ、作業とは別のアクションがあるとこれらの疲労は回復する傾向があると考え、これを休憩タイミングして決定し、実装する。本実装は発表時に報告する(省略)。
■ おわりに
テレワークにおけるストレス低減を目指しロボット型エージェントと連携して作業者に休憩を促すデスクトップエージェントを提案した。生体データに基づく感情情報と主観アンケートを分析した結果、適切な休憩タイミングを決定し、デスクトップエージェントに実装している。今後、作業者へのストレス軽減への影響と作業効率への効果を検証していく。
人と接するシステムの研究では、感情や感性といったあいまいさを含む要素をいかにシステムに組み込むかがカギとなります。そのためには、電気、情報、機械といった工学の知識だけでなく、心理学、神経科学、社会科学などをも含む幅広い分野の知識が必要になります。
蓮沼さんはこの難問に怯むことなく、好奇心を持って熱心にこの研究に取り組みました。その結果、学会での発表やワークショップでの受賞など、この分野での最先端を切り拓く成果につながっています。