卒業研究のご紹介
2019年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
維持型メチル化酵素(Dnmt1) 変異体のメチル化活性の特性評価
吉川 僚汰静岡県
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻Bコース 博士前期課程1年
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2019年3月卒業)
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2019年3月卒業)
静岡県立富士東高等学校出身
研究の目的
私たちの身体を構成する細胞は、基本的には同じ遺伝情報を持っている。ところがそれぞれの細胞は発生分化の過程で、特異的な性質を子孫細胞に伝えるようになる。これは遺伝子を構成するDNAのメチル化によって、塩基配列によらない遺伝情報の発現抑制が起こるからである。また、この制御は生体でも組織幹細胞や分化の制御のためになくてはならない機構でありその異状はがんの原因となり、その他の後天的疾患にも関与する可能性が強く示唆されている。
DNAメチル化を解析できれば、様々な疾患の本態解明や正確な診断に有用である。しかし、既存のDNAメチル化解析法では精度はあまり高くないため、より正確なメチル化解析法が求められる。本研究では維持型DNAメチル化酵素 (Dnmt1)を用いた新規メチル化解析法の開発を目指している。
DNAメチル化を解析できれば、様々な疾患の本態解明や正確な診断に有用である。しかし、既存のDNAメチル化解析法では精度はあまり高くないため、より正確なメチル化解析法が求められる。本研究では維持型DNAメチル化酵素 (Dnmt1)を用いた新規メチル化解析法の開発を目指している。
研究内容や成果等
■ 実験方法
S. cerevisiaeINVSc1株にDnmt1full.length (1-1616 aa.)、部分欠損体(616-1616 aa.)および変異体(streptavidin+1-1616 aa.)を発現させ、ビーズ破砕によって抽出し、GST精製後、HRV3C処理で目的タンパク部分とタグ部分(His tag,GST tag)を切断し、His精製のライセートから目的タンパク部分を回収した後、限外濾過によって濃縮とバッファーの置換を行い、サンプル溶液を回収した。このサンプル溶液を用いて、MTase-Glo™ Methyltransferase Assayのプロトコールにしたがって活性評価を行った。
■ 実験結果および考察
GST精製後のサンプルをSDS PAGEした結果(Fig.2)、full-length, mutantを含むDnmt1の発現を確認することができた。
活性評価した結果より、①Dnmt1 full-lengthではヘミメチル化DNAに加え非メチル化DNAを基質にした時でも活性がみられた。②646-1616では非メチル化DNAで活性がみられず、ヘミメチル化DNAでのみ活性が観察された。③streptavidin full-lengthではヘミメチル化DNAで活性を観察できたが、非メチル化DNAでより高い活性が観察された。③において、ヘミメチル化DNAでの活性が下がった理由としてstreptavidinがあることでDnmt1の活性が阻害されたからだと考えられるが、試行回数が少ないため再現性をとる必要がある。また、活性評価を行う際、精製後の目的タンパクの収量が少ないことから、抽出時に可溶画分に溶解するタンパク量を増加させること、精製時に目的タンパクのロスを減らすことが必要であることが分かった。
活性評価した結果より、①Dnmt1 full-lengthではヘミメチル化DNAに加え非メチル化DNAを基質にした時でも活性がみられた。②646-1616では非メチル化DNAで活性がみられず、ヘミメチル化DNAでのみ活性が観察された。③streptavidin full-lengthではヘミメチル化DNAで活性を観察できたが、非メチル化DNAでより高い活性が観察された。③において、ヘミメチル化DNAでの活性が下がった理由としてstreptavidinがあることでDnmt1の活性が阻害されたからだと考えられるが、試行回数が少ないため再現性をとる必要がある。また、活性評価を行う際、精製後の目的タンパクの収量が少ないことから、抽出時に可溶画分に溶解するタンパク量を増加させること、精製時に目的タンパクのロスを減らすことが必要であることが分かった。
- 指導教員からのコメント 教授 飯田 泰広
- エピジェネティックとは、遺伝子配列に差がなく、遺伝子発現に差が生じる現象であり、発生や分化に深くかかわっているが、最近では、がんや様々な疾病にも関与していることが多く報告されてきている。このエピジェネティックな変化の原因の一つにシトシンのメチル化が挙げられるが、現状そのメチル化状態を正確に評価するためにはかなりのDNA量を必要とするため、少量でメチル化の評価が可能な新しい方法が望まれている。本研究では、ヒト由来のDNAメチル化酵素を用いて、DNAのメチル化状態を維持した状態でDNAを増幅させる方法の開発を行うことを試みた。
- 修士研究学生からの一言 吉川 僚汰
- 学部2年次のゼミで嗅覚センサに関する研究を行い、学会で発表した。当時は授業と研究の両立はとても大変だったが、2年次に研究の基礎を学習できたことと学会を体験できたことは大きかった。この時期に自分に足りない部分を知ることができたため、早い段階で学習スタイルの改善やポイントを押さえた学習法に切り替えることができた。また本学には教育熱心な方が多く、他学科の先生であっても理解できるまで丁寧に説明をしてくださるため、他分野に対する敷居が低く視野を広く持ちたい私にとって良い環境であった。
- 応用バイオ科学部応用バイオ科学科(大学サイト )
- 教員紹介ページ(大学サイト )
- 研究室ナビ(大学サイト)