卒業研究のご紹介
2019年版

化学・バイオ・栄養系所属学生

チロシナーゼ発現におけるチロシナーゼ遠位調節エレメント CpG islandのメチル化の影響評価

田川 絢乃神奈川県
応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2019年3月卒業
向上高等学校出身

研究の目的

メラニンは、皮膚のターンオーバーの乱れやメラノサイトの活性化、メラニンの過剰な産生などによりシミが形成されると考えられていますが、原因は解明されておらず、その機構を解明することは、シミ治療に関して新たな知見を得ることにつながると期待されています。
これまでメラニンに直接関わるチロシナーゼの遺伝子のプロモーター領域には発現をコントロールする場所が存在していないことが知られていましたが、当研究室では当該遺伝子の 4000bp以上上流に発現をコントロールする場所を内包した領域を見出しており、それがチロシナーゼの遠位調節エレメントである可能性を考えています。そのため本研究では、チロシナーゼ上流にある発現をコントロールする場所のメチル化によってチロシナーゼ発現量に差が表れるかメラノサイトを用いて検証することを目的とし実験を行いました。

研究内容や成果等

■ 実験方法

●メラノサイトでの蛍光観察
メラノサイト内で蛍光タンパクの発現量を観察するため、テトラサイクリンで誘導できるpcDNA4/To LacZベクター、テトラサイクリンオペレーターに特異的に結合するリプレッサーを発現するpcDNA6/TRベクターを用いて実験を行った。また、GFP蛍光タンパクを発現するpmaxGFPベクターをコントロールとして用いた。各プラスミドをDH5αに形質転換を行い、プラスミド抽出を行ったあとで精製した。次に、精製したプラスミドを細胞に導入するため、電気パルスにより核内へ遺伝子導入するヌクレオフェクション行い、24時間培養した後蛍光観察を行った。
●発現評価用ベクターの構築と評価
メラノサイトを培養しゲノムDNA抽出を行った。次にチロシナーゼ上流遺伝子のCpG islandを含むプロモーター領域を、PCRを用いて増幅させ、精製を行った。

■ 実験結果および考察

●メラノサイトでの蛍光観察
メラノサイトにpmaxGFP、pcDNA6/TR、pcDNA4/To Laczベクターをエレクトロポレーションした後の細胞を蛍光観察した結果をFig.1に示す。Fig.1の結果より、発現量を蛍光による評価が行えることが示唆された。

Fig.1 LacZの蛍光観察の結果
左)pmaxGFP 右)pcDNA6/TR、pcDNA4/To Lacz
指導教員からのコメント 教授 飯田 泰広
チロシナーゼはメラニンを産生する酵素で、シミの形成とも深くかかわっているため、その阻害剤や発現を抑制する物質は美白剤として使用されている。本研究では、チロシナーゼ遺伝子の上流のシトシンとグアニンの多い配列において、そのシトシンのメチル化状態によりチロシナーゼの発現に差が出るかを調べるため、メラノサイトを用いて、その評価系を構築することを試みた。
卒業研究学生からの一言 田川 絢乃
大学生活で最も印象に残っているのが、3年次の「自主テーマ実験」です。実験テーマから方法、実験、発表までを決められた期間で学生だけで行う授業は今までにはなく、また初対面のメンバーも多いので、人見知りで人を引っ張っていくことが苦手な私にとって全うすることは大変でした。しかし、メンバーで何度も話し合いの場を設け、役割などを分担して行っていくうちに一致団結し全うすることができました。その結果、自主テーマの授業で初めて賞をいただくことができ、嬉しかったのと同時に自信になりました。