卒業研究のご紹介
2021年版

医療技術・栄養系所属学生

高齢者のフレイル予防のためのコロナ禍における食生活等状況調査

畠山 ゆずな北海道
健康医療科学部管理栄養学科2021年3月卒業
北海道札幌東商業高等学校出身

研究の目的

新型コロナウイルス感染症による外出自粛が、高齢者の食生活や生活状況に影響を与え、身体活動量の低下や食生活の偏りなどがフレイル(加齢により予備能力が低下し、ストレスに対する回復力が低下した状態)の進行につながることが恐れられています。また、フレイルが進行することで、感染症に対する回復力および抵抗力の低下、重症化などが考えられます。しかし、生活様式が変化していくコロナ禍においてもこれまで通り、健康に生活する必要があります。そこで、本研究では、地域の高齢者を対象として、コロナ禍における食生活や生活状況等のアンケートを実施し、食生活の実態や今後の生活への支援の仕方を明らかにすることを目的としました。

研究内容や成果等

■ 研究方法

(1)調査対象
I市在住の地域コミュニティの場に通う65歳以上の高齢者158名(男性31名、女性127名、年齢男性75.6±5.7歳、女性75.0±5.7歳)を対象とした。
(2)調査内容
I市を通じて、地域のコミュニティの場に通う高齢者へ自記式アンケートを配布し、回収を行った。食生活等に関するアンケート調査において、年齢・性別・身長および体重・普段の食生活・自粛期間中の食生活および生活状況・コロナ禍での生活で困ったこと・今後の支援などに関する質問とした。
(3)統計解析
統計解析は、統計解析パッケージSPSS ver.25(IBM.JAPAN)を用いてχ2検定やFisherの正確確立検定等を行い、危険率5%をもって有意差ありとした。

■ 結果および考察

(1)期間中の食生活および生活状況
高齢者のBMIは男性23.2±2.4kg/m2、女性22.1±3.1kg/m2であった。自粛期間中(4〜5月)の体重の変化においては、男性の69%は変化していなかったが、31%(増加17%、減少14%)は変化していた。女性では66%は変化していなかったが、34%(増加24%、減少10%)は変化していた。そこで、外出頻度の変化を見ると、男性は58%、女性は57%が減ったと回答しており、体重の変化と外出頻度には関連が認められなかった。また、間食量は、男性より女性の方が「変化あり」と回答した者が多かった(p<0.05)。
(2)期間中の体重の変化と健康状態の関連
健康状態が「良い」と感じている女性では、体重が「変化なし」と回答した者が多かった (p<0.05)。このことから、健康状態が良いと感じている女性ほど体重の維持ができていたと考えられた。また、体重の維持ができていた女性は、間食量が「減った」または「変わらない」と回答した者が多かった(p<0.05)。このことから、間食の摂り方などの食生活への意識が高いことが体重の維持につながったと考えられた。

■ 結論

新型コロナウイルス感染症による外出自粛が、身体状況や食事、生活活動に影響を与えていた。コロナ禍における体重の維持には、食生活の意識が影響を与えていた。
卒業研究学生からの一言 畠山 ゆずな
研究活動を通して、自ら計画を立て実行することや様々な角度から問題点や特徴を捉え、自分自身で考える力を身につけることができました。また、新たなことを発見する楽しさを味わうことができました。研究では、なかなか思い通りに進まず悩むこともありましたが、饗場先生をはじめ、研究室の仲間と共に助け合うことで乗り越えることができたと思っています。たくさん悩み、考えたからこそ大きな達成感と自分の研究で誰かの役に立ち、人々を支えることにつながる嬉しさを感じることができました。