卒業研究のご紹介
2019年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
β - セクレターゼ阻害剤(抗アルツハイマー薬)の探索
雷 紫琳外国
応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2019年3月卒業
外国の学校等
研究の目的
高齢化に伴い、高齢者は肉体的な衰えを医療で補いながら、脳の疾患を抱えていく可能性が高まっている。当研究室ではAD※の治療の可能性を探っている。ADは、β-セクレターゼ(BACE1)が起点となって産生されたAβ42が神経細胞毒性を示す事で発症し、BACE1を阻害する事でADを根本的に治療できると考えられるが、有効な阻害物質はまだ見つかっていない。この実験は酵素阻害剤スクリーニング系を構築する事によって、BACE1阻害剤を判別できる事を示してきている。そこで、BACE1、ドナーに青色蛍光タンパク質、アクセプターに黄色蛍光タンパク質とリンカーにBACE1認識配列を用いて、活性評価用新規FRET基質を大腸菌で産生し、基質蛍光の変化によってBACE1活性の有無を計測する事が可能となる系を構築して、特性評価することを目的とした。
※AD(Alzheimer's disease):アルツハイマー病
※AD(Alzheimer's disease):アルツハイマー病
研究内容や成果等
■ 実験方法
発現ベクターであるpCold Iにインサートとして、ドナーにECFP、アクセプターにEYFP、リンカーにβ-セクレターゼ認識配列を設定した FRET基質(新規 BACE1基質)配列を挿入したベクターを用いて実験を行った。ECFP、EYFPおよび新規 BACE1基質の形質転換体の発現誘導行った後、菌体を溶菌させてHis-Trap精製を行い、SDS-PAGEによって分子量を確認するとともに、形質転換した大腸菌に発現誘導をかけ、共焦点レーザー顕微鏡によって観察を行った。抽出タンパク質の蛍光スペクトルを蛍光光度計により測定し、蛍光特性を確認した。
■ 実験結果
SDS-PAGE結果から、抽出したタンパク質が目的タンパク質分子量と一致することが確認出来た。図1はECFP、EYFPと新規BACE1基質のタンパク質を抽出した泳動写真である。ECFPとEYFPの目的分子量は26.9kDa、新規BACE1基質目的分子量は55kDaである。3つとも目的分子量付近にバンドが確認できた。
共焦点レーザー顕微鏡により、誘導培養して発現させたECFP、EYFPと新規BACE1基質の蛍光を確認した。ECFPの青色蛍光、EYFPの黄色蛍光と新規BACE1基質の黄色蛍光を確認できた。その後、蛍光光度計で蛍光スペクトルを測定して、各タンパク質の蛍光波長と最適励起波長も確認できた。今後、当該基質を用いることにより、BACE1の活性評価を行うことが可能であるかどうかの評価を行う予定である。
共焦点レーザー顕微鏡により、誘導培養して発現させたECFP、EYFPと新規BACE1基質の蛍光を確認した。ECFPの青色蛍光、EYFPの黄色蛍光と新規BACE1基質の黄色蛍光を確認できた。その後、蛍光光度計で蛍光スペクトルを測定して、各タンパク質の蛍光波長と最適励起波長も確認できた。今後、当該基質を用いることにより、BACE1の活性評価を行うことが可能であるかどうかの評価を行う予定である。
※iGEM: アイジェム (The International Genetically Engineered Machine competition)