卒業研究のご紹介
2020年版
化学・バイオ・栄養系所属学生
高度好熱性細菌の線毛複合体構成タンパク質の解析
前川 真純群馬県
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻Bコース 博士前期課程1年
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科/医生命科学特別専攻 2020年3月卒業)
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科/医生命科学特別専攻 2020年3月卒業)
群馬県立高崎女子高等学校出身
研究の目的
Ⅳ型線毛は、主要なヒト病原体を含む多くのグラム陰性菌が産生する細胞膜の分泌装置の一種で、病原性細菌の宿主への接着や毒素分泌にも関わっている。高度好熱性細菌Thermus thermophilusのⅣ型線毛は、細胞質-内膜-外膜を貫通した細胞外構造体で、16種類以上の構成タンパク質が相互作用することで生理機能を示すが、各タンパク質の作用機序は未解明である。
当研究室では、T. thermophilusの生細胞から脱離させた線毛を用いて構成タンパク質を同定し、相互作用を解析している。解析には線毛タンパク質の抗体が必要となるが、膜局在タンパク質は一般に精製が難しく、抗体作成のための純度の高い抗原を準備することは難航している。本研究では内膜局在線毛複合体構成タンパク質PilCの精製と抗体作製を行った。また、抗PilC抗体を用いて、PilCと相互作用するタンパク質を見出した。
当研究室では、T. thermophilusの生細胞から脱離させた線毛を用いて構成タンパク質を同定し、相互作用を解析している。解析には線毛タンパク質の抗体が必要となるが、膜局在タンパク質は一般に精製が難しく、抗体作成のための純度の高い抗原を準備することは難航している。本研究では内膜局在線毛複合体構成タンパク質PilCの精製と抗体作製を行った。また、抗PilC抗体を用いて、PilCと相互作用するタンパク質を見出した。
研究内容や成果等
膜画分に存在するPilCの界面活性剤による可溶化条件を検討した結果、1%TritonX-100存在下で全PilC量の68%を可溶化できた。そこで、1%TritonX-100存在下でGigaCapQ650M(陰イオン交換クロマトグラフィー)にて分離し、精製したタンパク質のN末端から8個までのアミノ酸配列がPilCと一致したことから、精製PilCタンパク質(精製度96%)を得たと結論づけた。これを抗原として作製したPilC抗体(ウサギ)は、充分な力価を示した。
精製したPilC、PilT1、PilT2のそれぞれを1mMATP存在下で混合し、二次元電気泳動によって分子間相互作用を解析した(図1)。それぞれのPilタンパク質が、共存することによって現れたNative-PAGE上のタンパク質のバンドが、二次元目のSDS-PAGEにおいてPilC、PilT1、PilT2を含むことを示したことから、PilC、PilT1、PilT2が相互作用して複合体を形成することが示唆された。今後は、PilCと線毛フィラメントの結合をウェスタンブロットにより解析するとともに、PilM、PilOの精製、機能解析を行うことで線毛の機能解析に繋げる。
精製したPilC、PilT1、PilT2のそれぞれを1mMATP存在下で混合し、二次元電気泳動によって分子間相互作用を解析した(図1)。それぞれのPilタンパク質が、共存することによって現れたNative-PAGE上のタンパク質のバンドが、二次元目のSDS-PAGEにおいてPilC、PilT1、PilT2を含むことを示したことから、PilC、PilT1、PilT2が相互作用して複合体を形成することが示唆された。今後は、PilCと線毛フィラメントの結合をウェスタンブロットにより解析するとともに、PilM、PilOの精製、機能解析を行うことで線毛の機能解析に繋げる。
1年間の研究活動では挑戦し継続することの大切さと難しさを学びました。また、指導教員とディスカッションしながら自分の意思で研究活動を進めるため、研究が進まないと自分の弱みを知ることになります。弱みを知ることは自分の成長に繋がるきっかけとなりました。