卒業研究のご紹介
2019年版
機械・自動車・ロボット系所属学生
レーンキープアシストのドライバ運転負荷に関する一考察
畑中 優佑静岡県
創造工学部自動車システム開発工学科 2019年3月卒業
富士市立高等学校出身
研究の目的
近年、自動車にはドライバが運転をしている時に、走行車線をはみ出さないように支援するLane Keeping Assist(以下LKA)や自動車専用道路で限定的な自動運転操舵を行うLane Trace Control(以下LTC)、Pro-pilotなどが実用化されています。しかし、これらの運転支援システム(advanced Driver Assistance System)が適切に支援し、ドライバの運転負荷を軽減できているのかは明確になっていません。
そのため研究では、最新のLKA、LTAを搭載した自動車で自動車専用道路を走行し、ドライバの視点の動きや脈拍を計測することで評価し、ドライバ運転負荷への要因と影響を明らかにすることを目的としました。
そのため研究では、最新のLKA、LTAを搭載した自動車で自動車専用道路を走行し、ドライバの視点の動きや脈拍を計測することで評価し、ドライバ運転負荷への要因と影響を明らかにすることを目的としました。
研究内容や成果等
■ ADASの課題と評価の考え方
図1に LKA/LTAなどADAS全般のドライバ~システム間の遷移機能を示す。ADASはドライバのON-switch操作(①)により作動し③の条件付き制御機能に遷移する。しかし、認識能力やコーナー Rの大きさなど機能できない性能限界の状況では、システムは正常停止しドライバに運転を遷移する。本来機能③の運転負荷軽減が期待される性能評価の他に、A;① ON-switch操作の複雑さによる運転負荷と、B;②~①の繰返しによる運転負荷が新たに発生する。昨年度の研究は、特に Aについて影響を明らかにした。今回、最新の LKA/LTA評価に使った2台は A.については改善が図られているので、B.の②~①遷移時負荷と、③の本来性能に注目して運転負荷評価を実施した。
■ 実験結果
●重要評価シーンの抽出
ドライバの公道での主観評価を元に、本来性能、性能限界に関する重要シーンと必要技術の関係を整理することができた。この様に主観評価を客観評価(シーン特定&技術の関連)に導く方法となる (図6)。図7は、ユーザニーズとシステム機能に大きなギャップがあるシーンの例である。
ドライバの公道での主観評価を元に、本来性能、性能限界に関する重要シーンと必要技術の関係を整理することができた。この様に主観評価を客観評価(シーン特定&技術の関連)に導く方法となる (図6)。図7は、ユーザニーズとシステム機能に大きなギャップがあるシーンの例である。
●隣接車両並走シーンでの脈拍と視点移動(LTA有無)
図 8、9(略)に隣接並走シーンでの LTA有無の脈拍と視点移動を示す。LTA作動では、ドライバのコメント通り脈拍も高く、視点も安定していない様子がわかる。
● R減少コーナーシーンでの脈拍と視点移動(LKA有無)
図 10、11(略)に R減少コーナーシーンでの LKA有無の脈拍と視点移動を示す。こちらでもドライバのコメント通り LKA作動で脈拍も高く、視点も安定していない。
●アンケートによるドライバ感情・情緒評価図
12より全体を通じても(残念ながら)LKA/LTA作動時の方が心理的負荷は大きい結果となった。
図 8、9(略)に隣接並走シーンでの LTA有無の脈拍と視点移動を示す。LTA作動では、ドライバのコメント通り脈拍も高く、視点も安定していない様子がわかる。
● R減少コーナーシーンでの脈拍と視点移動(LKA有無)
図 10、11(略)に R減少コーナーシーンでの LKA有無の脈拍と視点移動を示す。こちらでもドライバのコメント通り LKA作動で脈拍も高く、視点も安定していない。
●アンケートによるドライバ感情・情緒評価図
12より全体を通じても(残念ながら)LKA/LTA作動時の方が心理的負荷は大きい結果となった。
■ 結論
・LKA/LTAのドライバ運転負荷を評価するに当たり、本来性能と性能限界を定義することで、主観評価を定量評価に導くことができた。
・トラック等の隣接並走シーンや R減少コーナーでは、LKA/ LTA作動の方が脈拍でも顕著に緊張感が大きく不利になる。
・昨年の研究と併せ、ADASの評価にはシステムの性能限界から再スイッチ作動の運転負荷を考慮する必要がある。
・自動運転についてもこの評価の考え方は重要と考えられ、今後、性能限界と本来性能を定量評価し改良技術に繋げていく。
・トラック等の隣接並走シーンや R減少コーナーでは、LKA/ LTA作動の方が脈拍でも顕著に緊張感が大きく不利になる。
・昨年の研究と併せ、ADASの評価にはシステムの性能限界から再スイッチ作動の運転負荷を考慮する必要がある。
・自動運転についてもこの評価の考え方は重要と考えられ、今後、性能限界と本来性能を定量評価し改良技術に繋げていく。
販売されている自動車のシステムなどについて疑問に感じても、実際に運転して検証するのは難しいことです。しかし、本学では自分たちがやってみたいと思った研究を行うことができ、最新のテクノロジーと触れ合えるので非常によい経験をさせてもらえました。