卒業研究のご紹介
2021年版
電気電子系所属学生
共同強誘電性液晶の光学特性測定系の構築
内橋 一貴(代表者)兵庫県
大学院電気電子工学専攻 博士前期課程1年
(工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業)
(工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業)
兵庫県立北条高等学校出身
大日向 生成神奈川県
工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業
神奈川県立城山高等学校出身
品川 悦毅神奈川県
工学部電気電子情報工学科2021年3月卒業
神奈川県立伊勢原高等学校出身
研究の目的
近年、インターネットの普及により通信トラフィックが増大し、今年には第5世代通信システムの運用開始に伴い、光デバイスにはさらなる小型化、集積化が要求されています。本研究室では様々な光デバイスを開発してきましたが、私たちは強誘電性液晶(FLC)に着目しました。FLCは外部からの電解が存在しない状態でも自発分極の特性があり、応答速度が非常に速く、最後に電圧を印加した状態での液晶分子の傾きが維持される自己保持特性を持っています。液晶内の分子が傾くことによって屈折率差が生じます。液晶はディスプレイなど可視光の領域では性能が明らかになっていますが、赤外光の領域では性能が明らかになっていません。
本研究では光デバイスに液晶を応用するため、液晶の光学特性評価をすることを目的にしました。
本研究では光デバイスに液晶を応用するため、液晶の光学特性評価をすることを目的にしました。
研究内容や成果等
■ FLCセルについて
FLCセルは強誘電性液晶と言い、外部からの電界が存在しない状態においても分極が発生する自発分極の性質を持つ特性があり、最後に電圧を印加した状態での液晶分子の傾きが維持される特性も持つ。
図1の左側では、強誘電性液晶内の屈折率楕円体を示している。電圧の向きを変えることで屈折率楕円体の傾きが変化し屈折率差が生じる。右図の状態では+電圧印加時、屈折率楕円体で光は屈折しなので垂直偏波のみが出てくる。−電圧印加時に屈折率楕円体での偏波が遅れ、垂直偏波が水平偏波に入れ替わる。
図1の左側では、強誘電性液晶内の屈折率楕円体を示している。電圧の向きを変えることで屈折率楕円体の傾きが変化し屈折率差が生じる。右図の状態では+電圧印加時、屈折率楕円体で光は屈折しなので垂直偏波のみが出てくる。−電圧印加時に屈折率楕円体での偏波が遅れ、垂直偏波が水平偏波に入れ替わる。
■ 測定原理
②の偏光子で水平偏波をカットし、垂直偏波のみにする。⑤の出てくる光は、④の検光子の角度によって変化する。
右上のグラフは検光子の回転角度を横軸、透過率を縦軸にして表したものである。
右上のグラフは検光子の回転角度を横軸、透過率を縦軸にして表したものである。
検光子の回転角度が0度の時は垂直偏波全てが透過しているので透過率が1になる。
検光子の回転角度が45度の時は垂直偏波が半分ほど透過する。
検光子の回転角度が90度の時は垂直偏波を通さないので透過率が0になる。
このように検光子が0度から360度の透過率を測定した。
■ 測定結果(zli4655 No,12)
図3は、10V、0V、-10Vを印加したときの屈折率楕円体の動きを観測した物を解りやすくしたものになる。この図3から、2θtiltを求めることができ、zliセルの2θtiltは52.2度と求めることができた。
次に、電圧の向きによる電圧極性の入れ替えについて検討した。
図4は出力光の偏光状態を示したもので、素子を回転させず電圧10V、-10Vをかけ検光子を10度ずつ回転させたときの透過率を表したグラフである。
+の電圧を印加したときは垂直偏波が水平偏波に入れ替わり波が逆になった。しかし、−の電圧を印加したときは屈折率楕円体の影響をあまり受けなかったので波は入れ替わらなかった。よって、図4のようになる。
次に、電圧の向きによる電圧極性の入れ替えについて検討した。
図4は出力光の偏光状態を示したもので、素子を回転させず電圧10V、-10Vをかけ検光子を10度ずつ回転させたときの透過率を表したグラフである。
+の電圧を印加したときは垂直偏波が水平偏波に入れ替わり波が逆になった。しかし、−の電圧を印加したときは屈折率楕円体の影響をあまり受けなかったので波は入れ替わらなかった。よって、図4のようになる。
■ 測定結果(FLCセル)
zliセルと同じように電圧をかけたときの屈折率楕円体の動きを偏光顕微鏡で観測した。図5から、2θtiltを求めると47.6度となった。
電圧の向きによる電圧極性の入れ替えについて検討した。図6は素子を回転させず電圧10V、-10Vをかけ検光子を10度ずつ回転させたものの透過率を表すグラフになる。屈折率楕円体の方向によって10Vのときの方が、光が遅れて位相差が生じる。その位相差の影響で図6はずれている。先ほどのzli4655セルよりも波のずれが小さいのはzli4655セルよりFLCセルのほうが液晶の厚さが半分で影響を受ける長さが短いので位相の変化が小さく位相差が小さいからである。
電圧の大きさによる電圧依存性について検討した。図7は素子を0度にして素子に印加する電圧の大きさを変えて検光子から180度まで回転させたときの透過率のグラフになる。
図7から、10Vから先はいくら大きくしても変化しないことが分かったため、10Vより小さい電圧でどのように変化したか測定した。その結果が図8になる。図8を見ると10Vから30V、-10Vから-30Vはグラフの線がほぼ直線でいくら大きい電圧を印加したり、小さくしても透過率は変化しないことを表している。電圧が-10Vから10Vの間では電圧を印加しても前にかけた電圧の特性が残っているため+から任意の電圧にしたときと、ーから任意の電圧にしたときで透過率が違うことが分かった。
電圧の向きによる電圧極性の入れ替えについて検討した。図6は素子を回転させず電圧10V、-10Vをかけ検光子を10度ずつ回転させたものの透過率を表すグラフになる。屈折率楕円体の方向によって10Vのときの方が、光が遅れて位相差が生じる。その位相差の影響で図6はずれている。先ほどのzli4655セルよりも波のずれが小さいのはzli4655セルよりFLCセルのほうが液晶の厚さが半分で影響を受ける長さが短いので位相の変化が小さく位相差が小さいからである。
電圧の大きさによる電圧依存性について検討した。図7は素子を0度にして素子に印加する電圧の大きさを変えて検光子から180度まで回転させたときの透過率のグラフになる。
図7から、10Vから先はいくら大きくしても変化しないことが分かったため、10Vより小さい電圧でどのように変化したか測定した。その結果が図8になる。図8を見ると10Vから30V、-10Vから-30Vはグラフの線がほぼ直線でいくら大きい電圧を印加したり、小さくしても透過率は変化しないことを表している。電圧が-10Vから10Vの間では電圧を印加しても前にかけた電圧の特性が残っているため+から任意の電圧にしたときと、ーから任意の電圧にしたときで透過率が違うことが分かった。
■ 課題とまとめ
・課題
すべて手動での作業をしていたため、作業効率を上げるために自動測定プログラムの作成をする。
・まとめ
FLCセルの光学特性評価のために偏光特性測定の構築し、偏光顕微鏡での観測と組み合わせて評価、解析を行い、また、2種類のFLCサンプルの特性を測定し評価を行った。
zliセルは、+の電圧を印加した時は垂直偏波が水平偏波に入れ替わり特性が逆になった。
FLCセルは液晶の厚さが半分で影響を受ける長さが短いため特性のずれは小さくなった。
10Vから30Vと-10Vから-30Vの間では透過率は変化せず、電圧が-10Vから-30Vの間では透過率は変化せず、電圧が-10Vから10Vの間では電圧の特性が残っているため、透過率が違うことが分かった。
すべて手動での作業をしていたため、作業効率を上げるために自動測定プログラムの作成をする。
・まとめ
FLCセルの光学特性評価のために偏光特性測定の構築し、偏光顕微鏡での観測と組み合わせて評価、解析を行い、また、2種類のFLCサンプルの特性を測定し評価を行った。
zliセルは、+の電圧を印加した時は垂直偏波が水平偏波に入れ替わり特性が逆になった。
FLCセルは液晶の厚さが半分で影響を受ける長さが短いため特性のずれは小さくなった。
10Vから30Vと-10Vから-30Vの間では透過率は変化せず、電圧が-10Vから-30Vの間では透過率は変化せず、電圧が-10Vから10Vの間では電圧の特性が残っているため、透過率が違うことが分かった。
今年はコロナウィルスの影響で思うように実験ができませんでしたが、私は今後、大学院へ進学し液晶を用いた光デバイスの実現を目指していきます。