卒業研究のご紹介
2020年版

情報系所属学生

曖昧な記憶に基づく閲覧履歴検索ツールの開発

新堀 真雄東京都
情報学部情報工学科 2020年3月卒業
東京都立山崎高等学校出身

研究の目的

ブラウザを用いて調べ物などの作業をする際、過去に調べた記事に再度アクセスすることがある。この時ユーザーはサイトのタイトルや検索に用いたキーワード、閲覧時刻などの情報を用いるが、これらの情報を正確に覚えていない場合、再び同じページにアクセスすることは困難である。
一方で、閲覧したページの特徴的な色や、閲覧したおおよその時間帯などは覚えていることが多く、こういった曖昧な記憶から目的のページを検索できればユーザーは効率的に作業することができる。
これらの背景から本研究では、ページの見た目や特徴的な色などの視覚的情報、ページを閲覧した大体の時間帯などの曖昧な記憶からでも過去に閲覧したページを効率よく検索できるようにすることを目的とし、閲覧履歴検索ツールを開発した。

研究内容や成果等

■ アプローチ

本検索ツールはChrome APIを利用した、Google Chrome専用の拡張機能として開発する。
タイトルやURLを忘れてしまっていても目的のページにたどり着けるよう、ページに含まれる特徴的な色からページを検索できるようにする。また、目的のページがひと目で分かるよう、履歴の表示画面にページのサムネイルを設ける。
その他にも、ページを閲覧した日付、曜日、時間のどれからでもページを検索できるようにすることで、正確な時刻を記憶していなくても目的のページを探せるようにする。

■ システムの概要

本履歴検索ツールは、ページのタイトル、URL、閲覧時刻とともに、そのページのトップの画像、その画像に一定量以上含まれる色などの情報を、ページを閲覧するたびに閲覧履歴として自動的に保存する。
保存された履歴は閲覧履歴ページに、図1に示すようにサムネイル付きで表示される。また、履歴は閲覧履歴ページ上部の検索機能を用いて検索できる。検索機能はページの特徴的な色から検索する色検索、タイトル、URLを用いて検索するテキスト検索、閲覧した曜日を指定することでその曜日に閲覧した履歴のみを検索する曜日検索、指定した2つの時刻の間に閲覧したページを検索する時刻検索の4つの検索機能からなり、これらのいずれか、または複数を用いてページを検索することができる。

図1 閲覧履歴ページ

■ 評価

授業の課題などでウェブブラウザを利用している学生14名に、本履歴検索ツールを1週間実際に使ってもらい、使いやすさ、可用性についてアンケートをとった。
アンケート調査により、サムネイル表示や色検索機能により、過去に訪れたページを効率的に探すのに有効的であることを確認した。
上記の他に学生4名に協力してもらい、本履歴検索ツールとブラウザの閲覧履歴機能のどちらが早く目的ページへ到達できるかの比較を行い、検索の可否、検索効率の評価を行った。
4名全員が目的ページへ到達できたことから、本履歴検索ツールの検索機能を正しく利用できていることを確認した。また、4名全員が既存の閲覧履歴よりも本履歴検索ツールを用いたほうが早く目的ページへ到達できたことからブラウザの閲覧履歴機能よりも効率的に過去に訪れたページを検索できることを確認した。

■ むすび

ページの色や見た目などの曖昧な記憶からでも効率的に履歴の検索を可能にする閲覧履歴検索ツールを開発した。評価実験から本履歴検索ツールは曖昧な記憶から目的のページを探すのに有効的であることを確認した。
別の端末と履歴を共有することが今後の課題である。
指導教員からのコメント ソフトウェア工学研究室教授 田中 哲雄
Webで調べ物をしているとき「この前、調べたはずなのに見つからない」ということがよくあります。そんな不便を解消してくれるのがこの研究です。新堀君は日頃不便だと感じていることから着想を得て自らこの研究テーマを設定しました。既存研究の調査からツールの設計・開発・評価と情熱をもって取り組み、完成度の高いツールが出来上がりました。まさに「必要は発明の母」です。その過程で、研究の企画、開発プロジェクトの計画、スケジュール管理、成果のプレゼンテーションなど、社会人になって必要となる多くのことを学び実践しました。この経験は社会に出てからきっと役に立つことと思います。これからのますますの活躍を期待します。
卒業研究学生からの一言 新堀 真雄
基本的なことからより専門的なことまで幅広く学べるため、パソコン未経験の状態からでもしっかりと自分のやりたいことを見つけ、その分野の知識や技術を身につけることができました。また、ハッカソンなどのイベントでは、より実践に近い制作をチームで行い、プロの方に見ていただくことができ、とてもいい経験になりました。
研究活動では教授のサポートのもと、自分の研究を達成することができ、社会に出るための自信となりました。