卒業研究のご紹介
2019年版

化学・バイオ・栄養系所属学生

ロドデノールの細胞毒性試験評価

今田 彩夏神奈川県
工学部応用化学科 2019年3月卒業
神奈川県立湘南台高等学校出身

研究の目的

ロドデノール(RD)はカネボウ化粧品が開発した美白化粧品の活性成分である。メラニンは紫外線照射下においてチロシンが酸化酵素であるtyrosinaseと反応することによって生じる。RDはチロシンの構造類似体であり、RDがtyrosinaseの作用を阻害することでメラニン生成が抑制されると考えられていた。しかし、このRD含有化粧品を使用した人の約2%に白斑が発症した。その後の研究によって、tyrosinaseによるRDの酸化に伴う酸化的なストレスにより細胞傷害性を生じる可能性が報告されている。一方で、種々の培養細胞における細胞傷害活性については、これまで十分に明らかにされていない。そこで本研究では、メラノーマ細胞を含むいくつかの培養細胞を用いてRDによる細胞傷害活性の有無の検討を行った。

研究内容や成果等

■ 実験方法

WST試薬は生細胞中のNADHに起因した電子伝達系よる作用により還元され、有色となる。このためWST試薬を用いることにより細胞増殖活性を評価することが可能である。このWST試薬を用いた試験ではA549細胞、CHL/IU細胞、melanoma B16細胞を用いた。また、細胞死の後に培地中に放出されたLactate Dehydrogenase(LDH)の活性を測定するLDH試験では、上記に加えHeLa細胞についても評価した。各細胞は96穴プレートに1穴104個となるように播種し、24時間培養後、終濃度0~1mMとなるようにDMSO溶液で調製したRDを添加した。また、RDとtyrosinase(20 units)を5分間培養させた混合溶液での実験も併せて行い、24時間培養後にWST試験とLDH試験で細胞傷害活性の測定を行った。

図1 WSTアッセイによる生細胞率

図2 LDHアッセイによる生/死細胞率

■ 結果・考察

RDのみのWST試験では、いずれの細胞においても濃度依存的な吸光度の減少が観察されたため、RDは増殖阻害活性を有することが明らかとなった。今回試験した濃度範囲では、RDはB16細胞に対して50%以上の増殖阻害活性を有することが示されたが、他の細胞に関しては、影響は小さいことがわかった。同様の系でLDH試験を行ったところ、CHL細胞はLDH活性の上昇が確認され、RDの添加により細胞死が誘発されていることが明らかとなったが、その他の細胞についてはLDH活性の濃度依存的な上昇は確認されなかった。そのため、CHL/IU以外の細胞では、RDの添加により、細胞死ではなく細胞増殖阻害のみが生じていると考えられた。B16は細胞内にtyrosinaseを発現しているため、tyrosinaseの存在が、細胞増殖阻害に強く働いているという過去文献の結果とも一致している。CHL/IUにおける細胞死誘発作用については詳細なメカニズムの検討が必要である。
一方、RDとtyrosinaseを共培養した場合では、WST試験ではB16細胞で、増殖阻害活性を確認することができないものの、LDHで細胞死が確認され、矛盾する結果となった。またtyrosinaseのみを系に投与したところ、tyrosinase 20 units以上の濃度では、tyrosinaseの投与だけで、いずれの細胞においても細胞障害(細胞死)が誘発されることが明らかとなった。TyrosinaseによるLDH試験は培地血清中のLDHを測定することがあり、より詳細な条件検討が引き続いて必要であると考えられる。
指導教員からのコメント 教授 髙村 岳樹
環境中には様々な医薬品や日常的に使用する生活用品を構成する化学物質が混入しています。カフェインは医薬品や飲料などに含まれる、馴染みのある化合物ですが、それらが河川にどの程度混入しているかを調べるのが本研究の目的です。下水処理排水には一定以上の濃度のカフェインやその代謝産物が含まれることがわかってきました。
卒業研究学生からの一言 今田 彩夏
本学では専門的な知識を学ぶことができましたが、特に私は自主的に行動する力を身につけることができたことが良かったと思っております。研究室に配属されると、自主的に実験をしなければ結果を得ることはできません。しかし、どう進めたらいいのか分からないときは担当教員に質問するとアドバイスをいただけるので、とても助かりました。また、担当教員のみならず研究室の友人や先輩方と深く関わることができ、とても良かったと思っております。