卒業研究のご紹介
2018年版

化学・バイオ・栄養系所属学生

深海堆積物中の極限環境微生物群の探索

椎屋 圭敦静岡県
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻 博士前期課程1年
(工学部応用化学科 2018年3月卒業)
浜松学院高等学校出身

研究の目的

近年、社会的にクリーンエネルギーの生産や利用が注目されている。中でも、微生物を用いたバイオマスはその対象の一つとなっており、一般にバイオマスには水素産生菌、メタン産生菌を利用する燃料ガスの生成が知られている。

本研究では、水素産生菌、メタン産生菌及びアルコール産生菌に着目し、微生物群を明らかにすることを目的として検討を進めた。微生物群の評価が生物学的に明らかにされていない極限環境である深海の海底堆積物を対象に、メタゲノム解析を行い、水素産生菌、メタン産生菌の探索を行った。

研究内容や成果等

海底堆積物についてメタゲノム解析を行った。その結果、A地点からは4種6菌株が検出され、水素産生菌である Clostridium beijerinckii 及び Photobacterium indicum がそれぞれ33%と多くの割合で検出された。B地点からは7種11菌株が検出され、Emcibacter nanhaiensis が28%と最も多く、次いで Bacillus cereus 及び Thalassospira mesophila が18%検出された。C地点からは7種7菌株が検出され、いずれも同程度の割合で菌が検出された。

極限環境である深海から検出された水素産生菌やメタン産生菌、アルコール産生菌は、温度や圧力、塩濃度などに耐性があると考えられ、水素やメタンの製造に使用されている水素・メタン二段発酵では、より効率的に水素やメタンが製造される。水素は燃料ガスや水素自動車への利用が考えられ、メタンも水素同様、燃料ガスとしての利用が考えられる。また、深海に生息している微生物により、環境汚染物質などの有害物質の分解も行えると考えられる。

※海域の95%程度を占める「深海」とは、一般的に植物プランクトンが光合成できる限界とされている水深200mより深いところを指す。


海底堆積物の詳細

海底堆積物の採取場所
指導教員からのコメント 教授 斎藤 貴

水深数千mの深海から採取した海底堆積物や海水中に生息する微生物群の遺伝子学的解明、水素やメタン、アルコールを産生する微生物の探索を行っています。深海の世界には、我々の知らない生物が数多く生息しており、ロマンと研究が合わさった夢のある研究を進めています。新規な微生物が発見されたとき命名することができ、学術学会にも発表しています。現在、大学院博士前期課程で研究を続けています。研究が進むようディスカッションを通してバックアップし、良い研究環境作りに配慮しています。本人も着実に成長している実感を持っているようです。

修士研究学生からの一言 椎屋 圭敦

大学生活を通して、基礎知識や専門分野の知識、技術を理解する力や物事を様々な視点から論理的に考える力、さまざまな分野の知識や技術を総合して判断する力が身につきました。また、実験や研究を通して、自分の意見だけでなく、ほかの人の意見を参考にして研究を進めていくことや、実験計画を立てる大切さ、研究を計画通りに進めていく難しさを学びました。