卒業研究のご紹介
2018年版

化学・バイオ・栄養系所属学生

プラセオジムをドープしたアルミン酸カルシウムスズ蛍光体

輿石 悠太山梨県
工学部応用化学科 2018年3月卒業
山梨県立韮崎高等学校出身

研究の目的

蛍光材料の多くはホスト物質に発光元素を導入して作られ、現在実用化されている蛍光材料の多くは発光元素として希土類元素を含んでいる。当研究室において過去、Ca2+ の位置にMn2+ を導入することを意図した調合組成 (Ca2-xMnx)Sn2Al2Oの試料が合成され、得られた試料が黄色の蛍光、残光を示すことが見出された。また Sn4+ の位置に Ti4+ を導入したCa2(Sn1-xTix)2Al2O9の合成も行われ、得られた試料は青色の蛍光を示した。本研究では、ホスト物質として同様の Ca2Sn2Al2Oを選び、発光元素として Pr を導入した試料を研究対象とした。そして、Ca2+の一部をPr3+で置換する(Ca1-xPrx)2Sn2Al2Oを調合組成に設定。Prの置換量を変え、蛍光特性について調べることを目的とした。

研究内容や成果等

私たちの身の回りにはLED、蓄光標識などで多くの蛍光体が使用されており、それらの蛍光体では希土類元素を使用されているものが多い。本研究により希土類元素を含まない蛍光体の開発が実現すれば、今までより安価に蛍光体を作製することができる。


図1 (Ca1-xPrx)2Sn2Al2Oの粉末X線回折測定結果

図2 (Ca1-xPrx)2Sn2Al2Oの励起・発光スペクトル測定結果

図3 発光ピークの強度と Pr 置換量との関係
指導教員からのコメント 教授 竹本 稔

蛍光体は紫外線などの光や電子ビームなどによって発光し、LED照明やディスプレイなど、多様な分野で応用されています。さまざまな蛍光体が知られていますが、輿石君は、光や電子線がなくても発光し続ける「長残光性蛍光体」の研究を行いました。この長残光性蛍光体は暗いところでも光り続けます。このため、停電になったとき人々を安全な方向に誘導する標識に応用されています。当研究室では赤色に光り続ける蛍光体の開発を目指しています。赤色があれば暗闇で人々に危険を知らせることができるからです。輿石君はそれに挑戦し、残念ながら赤色は実現できませんでしたが、警戒の色である黄色で光り続ける長残光性蛍光体の開発に成功しました。

卒業研究学生からの一言 輿石 悠太

大学4年間ではたくさんの実験を行い、学ぶことで化学の知識を、身をもってしっかりと習得することができました。化学の知識は普段の生活でも活かせるので、有意義な学びであったと思います。また、この4年間で知識だけでなく、人間的にも大きく成長できたと感じています。