卒業研究のご紹介
2022年版

機械・自動車・ロボット系所属学生

小型悪路走破車両のブラケット部品改善に関する研究

宮崎 史也神奈川県
創造工学部自動車システム開発工学科
2022年3月卒業
神奈川県 相模原(私立)高等学校出身

研究の目的

 一般的に小型フォーミュラ車両などに用いられる車両のブラケットは鋼管車体に板材を溶接する。しかし、このタイプのブラケットは、取り付け位置を変更する際には、車体を損傷させずに外しことはできない。また、溶接作業時に熱ひずみによって寸法精度確保も難しい。そこで、新たに軸などの用いられる焼嵌め効果を適用するブラケットについて検討し、予備実験などを行い、小型ATVに適用することを目的とする。

研究内容や成果等

■ 焼嵌め効果を用いるブラケット

本研究で提案するブラケットの概観を図1に示す。アルミニウムブロック材を切削加工して鋼管に嚙合わせる。ブロック間には隙間を設けておき、その隙間を溶接する。溶融部が冷えることで熱収縮して、鋼管と嵌合される。部材を熱間する必要はなく、加熱炉が不要で溶接機材のみで実現できる点に特徴がある。

Fig.1 Newly brackets for pre-test 
今回、隙間を1.0mm、1.5mm、2.0mmに設定し、机上検討と予備実験を行っていく。なお、隙間の変数は実際に溶接を行い、ビード幅を見ながら決定した。表1に机上計算した隙間と収縮代の関係を示す。

Table 1 Gap and shrinkage distance 

■ 予備実験機材

次の機材を準備した。
  • アルミニウム材(隙間1mm,1.5mm,2mm)
  • 直径25.4mmの鋼管
  • 曲げ力印加用レバー
  • 重錘(20kg)×3 含重錘受け

■ 実験方法

実験の様子を図2に示す。図1に示したブラケットにレバーをかけて、重錘を20kg、40kg、60kgと吊り下げて荷重を印加する。なお、ブラケットは定盤に固定し、鋼管が回転しないようにしている。このことで、ブラケットと鋼管の間に十分な締結力が得られているか確認できる。隙間変数3点について同様に製作し、実験を行った。印加する荷重については、事前に人力で20kgの印加相当の荷重がかかること、最大でレバーに体重をかけた場合を想定して決定している。腕の長さが1mあり、最大で、588Nmのトルクを付加できる。

Fig.2 Experimental unit 

■ 結果

先ず隙間1mm品より実験を行った。重錘60kgを印加した時点でブラケット材が回った。同様に隙間1.5mmと2mm品について重錘を印加したが、ブラケット材が回ることはなかった。嵌合力は十分と判断し、60kgの重錘に加えて人力を印加した。結果として、レバーが破損し、1.5mm品と2mm品の差異は確認するに至らなかった。
実験終了後、ブラケット部と鋼管の嵌合部を現確するために、ブラケット材を切断した。切断にあたり、溶接ビード部は避け、ビード部に直行する部材部のみを加工した。
切断したブラケット材の勘合部は、鋼管の直径より小さくなっていて、再度、鋼管に勘合させることができない。このことから、溶接ビード部の収縮により、ブラケット材の勘合部も収縮して鋼管に圧着された状態になったことが確認できた。なお、隙間3変数全てにおいて同様な状態であることを確認した。
予備実験を経て、車両に適用可能と判断し、図3に示すように小型ATVの前輪サスペンションを構成するブラケット部品として装着した。装着にあたり、簡単な治具を用いることで比較的容易に精度良く溶接を行うことができた。その後、継続して車両の走行試験を行っているが、問題は生じていない。引き続き実用下での評価を行っていく。

Fig.3 Front suspension for ATV 

■ まとめ

本研究では、考案した焼き嵌め効果を応用する新ブラケット構造について机上検討をし、予備実験を行い有効性について実証した。新工法のアルミ溶接熱収縮クランプの挟み込む力を計測するために実験を行い、クランプ間の隙間によってクランプする力が変わっていることが分かった。本考案品は適用範囲の拡大が期待でき、さらなる進展を望む。
指導教員からのコメント モータースポーツ工学研究室准教授 岡崎 昭仁
宮崎さんは機械加工や溶接などの工作作業に長けていました。また、普段マイカーを整備しているためモノに対するセンスを感じたので、『こんな感じで機械加工して溶接したら、こういうモノが出来ると思うけど、やってみる?』とアイデアを示しました。試行錯誤したようですが、期待通りに形にして実験器具まで自作して成長を感じました。報告・連絡・相談を十分にしてくれて、効率良くアドバイスも与えることが出来ました。自信が持てたかなと、就職先でも活躍することを願っております。
卒業研究学生からの一言 宮崎 史也

研究活動を振り返り成長したこと

研究当初は何をしてよいのか分かりませんでした。先生からアイデアを示されて、こんなことできるのかな?と半信半疑でしたが、実際に試してみてできることが分かって感動しました。その後は自分で実験方法などを提案して、研究活動がとても楽しくなり自分なりに成長できたと思います。ありがとうございました。

未来の卒研生(高校生)へのメッセージ

卒業研究を始めてから、知識や技能不足を感じました。1年次、2年次、3年次と授業をしっかり学ぶようにしたらよいと思います。高校時代には、科目の基礎知識を確実に身に着けておくことだと思います。実際にものを作って形にすることはとても面白いです。頑張ってください。そして、研究では、実際に「やってみること」が大切でこれが成長の原動力になるものだと痛感しています。