卒業研究のご紹介
2019年版

電気電子系

燃料電池模擬電源装置の検討

長田 裕規静岡県
工学部電気電子情報工学科 2019年3月卒業
静岡県立吉原工業高等学校出身

研究の目的

燃料電池は酸素と水素の化学反応によって発電する装置である。燃料電池は、ノートパソコンや携帯電話の電源として開発されているが、近年FCV等の移動体用の大型燃料電池が開発されるなど、その適用範囲が広がり、期待されている新エネルギーである。ところで燃料電池は温度などの環境の違いによって特性が変化してしまう。また燃料となる水素を使用するので燃料電池の応用技術開発の際に様々な労力を要する。
そこで本研究では、燃料電池の制御機器等を効率良く開発できる環境を構築するため、燃料電池模擬電源装置の開発を行った。

研究内容や成果等

■ 燃料電池模擬電源装置のシステム

図1は開発した燃料電池模擬電源装置の回路図である。同図の左から電源E、降圧型DC-DCコンバータ、電流センサ、電圧センサからなる。制御にはPICマイコンを使用した。また負荷には電子負荷装置を用いている。電子負荷をCVモードにし、負荷電圧が一定になるように設定する。読み取った電圧を実際の燃料電池の基本特性から求めた特性式に代入し、目標の電流値を定める。目標値の電流値と電流センサで読み取った実際の電流値から偏差を求める。次にその偏差をPI制御にかけ、PWM(Pulse Width Modulation)し、その出力をもとにMOSFETをスイッチングして目標値に制御する。この方式では各種燃料電池の基本特性から特性式を求めることができればどのような燃料電池でも模擬することができる。

■ 実験結果

今回開発した模擬装置が実際の燃料電池を模擬できているかどうかを確認するために負荷電圧パターンを用いた比較実験を行った。電子負荷をCVモードにし、各電圧60[s]ずつ16[V]から12[V]に1[V]ずつ下げていき、再び16Vまで1[V]ずつ上げていく負荷電圧パターンを用い、実際の燃料電池、今回開発した模擬装置で測定し、そのときの電流、水素流量の変化を比較した。図2は電流の比較、図3は水素流量を比較している。
電力量で比較すると、燃料電池が1.87[Wh]、模擬装置が1.92[Wh]となり、誤差は3[%]未満となった。また、水素の累積量は燃料電池が1.55[L]、模擬装置が1.50[L]となり誤差が2.84%未満となった。


指導教員からのコメント 教授 板子 一隆
長田君は、卒研配属時から他の学生達が太陽電池の研究をやりたいという中で「これからは水素、絶対に燃料電池に関する研究がしたい」と話していました。まずは燃料電池の基礎特性を実験により学び、制御法についても勉強しました。そして、これらの成果を基礎として出力電力と水素消費量を模擬できる模擬燃料電池の開発を行いました。模擬燃料電池は大型のもので出力電力を模擬できるものは市販されていますが、小型で水素の消費量まで模擬できるものはありませんでした。
長田君は、熱心に研究に取り組み、マイコンを用いて実際の使用に十分耐える性能を備えた小型の燃料電池模擬電源装置を完成させることができました。この装置は、燃料電池のための制御装置を開発する上でとても有用なものです。
卒業研究学生からの一言 長田 裕規
電気電子情報工学科によろず相談室というものがあったので、電気系の授業に関してわからないことがあったら聞きにいき、授業への理解を深め、安心してテストに臨むことができました。
研究では一つの装置を作ったので回路づくり、プログラムどちらもやる機会がありました。
回路もプログラムもたくさん失敗し、その原因を探したり、改善したりするのは大変でしたが、授業では得られない経験だったので、とても有意義でした。