卒業研究のご紹介

機械・自動車・ロボット系

競技用ソーラーカーにGVCを適用するための基礎的検討

阿達 亮輔新潟県
創造工学部自動車システム開発工学科 2018年3月卒業
東京学館新潟高等学校出身

研究の目的

競技用ソーラーカーは、予め外部電源で満充電にしたバッテリの電気エネルギーと、クリーンで無尽蔵ながら変動し易く低密度な太陽エネルギーとを用いて電気モーターで走行する。少ないエネルギーで速く走る必要があることから、エコランカーとレーシングカーという2つの性格がある。車両に用いられる単結晶シリコン型太陽電池の光電変換効率は20%程度であり、発電性能を維持しながら空気抵抗を削減する形状という、本来トレードオフの関係にある要求を高い次元で両立させる車両開発が求められる。近年では、100kgを切るほどの車体の軽量化と100km/hを超えるほどの車速の高速化が進み、車両運動性能や操縦安定性についても無視できない時代を迎えている。本研究では、様々な制約のある中でチャレンジし、他チームがまだ取り入れていない研究という観点から、コーナリングやレーンチェンジの際にも効率よく走り、荒れた路面でハンドルを取られたり、横風の影響で車体が左右に揺さぶられたりした際にもマイルドに対応できることを目的として、競技用ソーラーカーに横加加速度に連係した前後加速度の制御(G-ベクタリングコントロール;GVC)を適用するための基礎的検討を行うものとした。

研究内容や成果等

■ G-ベクタリングコントロール(GVC)の概要

GVCの概念は本学で博士号を取得された山門誠教授らが提唱し、4輪車両を簡易化した平面2自由度モデルとドライバーの1時遅れ系をベースにした以下の簡単な制御則で定義され、現在も進化・改良が続けられている。


本研究では、GVCを意図してドライバーのステアリングホイール操作に応じて後輪インホイールモータの駆動トルクを変化させることで、これまで個々に操縦されていた前後方向と左右方向への加速度を違和感のない範囲で統合的に制御し、各輪の接地荷重の変化を最適に近づけながら、熟練ドライバーのようなシームレスな車両運動を実現しようとしている。

■ 結果

競技用3輪ソーラーカーに舵角センサ、Genuino 101、RCフィルタ、ボルテージホロワを用いてGVCを意図した簡易アルゴリズムを実装した結果、コーナリングに応じてインホイールモータでマイルドに減速・旋回することを可能にした。陸上トラックのパイロンスラロームで試した場合、30km/h程度の速度では、制御ありの方が制御なしに比べて車両内輪側から車体が浮き上がり始めるのを抑制できた。あらゆる条件下でGVCの効果を検証するところまでには至らなかったので、カウルを装着した場合や、新型4輪狭小車両では、また異なった結果が得られる可能性がある。後輪駆動車でGVCを搭載した市販車は未だなく、インホイールモータに適用した市販車についても同様である。この研究の成果は、それらの実用化に向けて活かされていく可能性がある。


KAIT Spirit(photo by Hideo Yoshida)
指導教員からのコメント 准教授 藤澤 徹

阿達君は、機械の分解・組み立てが好きで、絵を描くのも上手な学生でした。自動車部にのめり込むあまり1年余分に大学で過ごす結果となりましたが、自動車部の軽耐久レースで上位に入り、学友会の役員としても活躍したようです。ソーラーカープロジェクトには卒業前の2年ほど中心人物の一人として活躍し、公私ともに充実した学生でした。研究室ではソーラーカーの新型車両を2年がかりで開発する傍ら、流体解析を独学で半年間行い、計測・制御・走行実験を半年間行うなかで、面倒な裏方作業もこなしていました。ソーラーカーは省エネルギーで高速走行する車両開発が進むなかで、操縦安定性や車両運動制御の研究は必ずしもしっかりと検討されてきませんでした。阿達君なりに次世代ソーラーカー実現への道を切り開く重要な一歩を刻んでくれたことに感謝しています。

卒業研究学生からの一言 阿達 亮輔

学科での車両運動やエンジン工学、電気自動車についての専門的な授業は、自動車部やソーラーカープロジェクトでの活動で役に立ちました。これから会社でも活かせるので学んで良かったです。