卒業研究のご紹介
2019年版

化学・バイオ・栄養系

深海堆積物由来の水素産生菌の探索と評価

蓮井 瑞尚東京都
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻 Cコース 博士前期課程 2019年3月修了
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2017年3月卒業)
明治大学付属中野高等学校出身

研究の目的

環境には生物の生息が困難な極限環境が存在する。深海は未解明な領域で、深海微生物とその生育挙動の研究が進められている。本研究は、水素産生菌をターゲットにマリアナ海溝の深海堆積物を対象に遺伝子解析により微生物群を解明し、水素産生菌の探索、単離、物性評価を行った。その結果、水素産生菌の生息が明らかとなったため、水素産生菌の単離を試み、生育挙動の評価を行った。その結果、マリアナ海溝にはClostridium beijerinckiiが生息し、土壌由来菌とは異なり、高圧や低温に対し耐性を有することが分かった。また、水素産生菌は深海環境においても代謝を行い生息していることがわかった。

研究内容や成果等

■ 結果及び検討

マリアナ海溝より単離したA株、B株、購入菌株であるN株をプレ実験で水深2000m相当の圧力である20MPaを加えた場合に生育が良好と判断されたため、D(+)-グルコース、デンプン、酵母エキス、ダイゴ人工海水SPを含む液体培地に各菌を添加し、20MPa条件下で培養したところ、菌の増殖はFig.1のようになった。A株、B株は7日経過後と 28日経過後に菌の増殖のピークが見られた。一方、N株については菌の増殖が見られなかった。
各菌の水素産生量はFig.2のようになった。A、B、N株のすべてから水素の発生が確認することができた。A株は7日目および 28日目に、B株は14日目と28日目に水素生成のピークが見られた。これはFig.1の菌の増殖のピークが2回あったことから考え合わせると代謝を伴い増殖しながら H2の生成し生じたものと考えられる。N株については他の2菌株よりも長期培養時に高い水素産生が見られるが、Fig.1より菌の増殖が見られないため、代謝を行った段階で高圧条件下では増殖することが困難になっているものと考えられる。
以上のことから、A株およびB株は高圧状況下において、代謝を行い菌の増殖が進むことがわかった。一方、地上の一般環境で生息していたN株は高圧状況下では、一部グルコースの摂取と分解を伴う水素の生成が見られるものの菌の増殖には至らないことがわかった。これより、マリアナ海溝の熱水活動域の海底堆積物より単離した2菌株に関しては、高圧環境に耐性を有していることが確認された。

Fig.1 Growth behavior of microorganism at 20MPa

Fig.2 Hydrogen production of microorganism at 20MPa
指導教員からのコメント 教授 斎藤 貴
海洋の水深数千m級の深海には未知の生物が生息している未解明な研究分野である。この研究は、潜水艇で深海の海底堆積物を採取し、水素を放出する微生物を発見したことから始まった研究です。日本近郊のマリアナ海溝の水深 2千~3千mの場所で得たバクテリアで、深海環境に似た低温、高圧条件で培養したところ、なんと増殖しながら水素を発生する微生物であることを証明しました。水素はクリーンエネルギーの代表で将来性の高い物質です。海洋研究開発機構と共同で進めている夢のあるテーマです。卒研と大学院の3年間を通して取り組んだ研究で、大学院生として、学業成績、研究論文発表数、学会発表数、成果発表会等の総合評価から最優秀となり、大学院修了式で表彰されることになりました。本人の頑張りが実を結んだ形となり後輩にも良いお手本となりました。
卒業研究学生からの一言 蓮井 瑞尚
大学生活に刺激を与えたものが多数ありました。まず、「Stop the CO2」という学習プログラムです。興味深い講義内容で研究室に配属されての実験は新しい体験ばかりで、好奇心を非常に刺激されました。この講義を通じて斎藤教授との出会いがあり、私を大学院へと導いてくれ、修士まで学びました。次に、大学のオープンキャンパススタッフです。仲間の大切さや、仕事をやり切った時の達成感など多くのことを教えてくれました。このスタッフならではの技術を学ぶことができ、就職活動へとつなげられました。今後、大学生になる人は何気なく生活するのではなく、色々なことに挑戦し楽しく過ごしてもらいたいです。