卒業研究のご紹介
2019年版

機械・自動車・ロボット系

貫入ダイナミクスにおける迎角の影響に関する数値解析

杉原 遼太神奈川県
工学部機械工学科2019年3月卒業
神奈川県立秦野高等学校出身

研究の目的

将来の小惑星探査では、層序を保ったサンプルの採取が望まれている。そこで、テザー型サンプリングシステムという、コアラー(先端が刃物の円筒)を小惑星に貫入させるシステムを提案した。このとき、システムへの負担を軽減するため、小さなエネルギーで深く貫入する必要があり、日本刀技術の応用に着想した。渡部研究室では、日本の伝統技術と宇宙工学の融合をテーマとした研究を展開している。日本刀の優れた切断性能をサンプリングデバイスの性能向上のために活用する研究もその一つである。
日本刀技術は「作刀技術」、「操刀技術」から構成され、その要素は多岐にわたるが、本研究では「操刀技術」に含まれる「刃筋」(はすじ)という概念に着目し、研究対象とした。日本刀で巻き藁を斬る様子や、コアラーが傾いて貫入する様子など、様々なモデルを用いて数値シミュレーションを行い、設計に役立てることを目指した。

研究内容や成果等

■ 解析方法

本解析では数値解析のため、3Dモデル作成ソフトウェアのPTC Creo Parametricおよび有限要素法(FEM)を用いたマルチフィジックス解析ツールANSYSを用いた。切断/貫入の表現には消失法を用いた。これは、材料に設定した臨界ひずみより大きいひずみが生じた要素を消失させる処理を連続的に行うことで、切断を再現する手法である。本研究においては迎角の貫入精度への影響の分析を目的とするため、臨界ひずみは暫定的な値を用いた。貫入における迎角の影響を考えるため、迎角0度モデルと、迎角10度モデルを作成し解析を行った。抜刀モデルの解析モデルを図1に示す。

図1 抜刀モデル解析モデル実験の検証の画面

■ 解析結果

抜刀モデルでの迎角の影響の比較を図2に示す。迎角を付けた抜刀モデルの数値解析と、巻き藁切断画像を図3に示す。刃筋が乱れ、切断に失敗した時の挙動を数値解析で表現することができた。

図2 左:刃の迎角なし 右:刃の迎角あり

図3 巻き藁切断の失敗と抜刀モデルの数値解析

■ 結言および結論

抜刀モデルでの数値解析による、迎角の影響の表現。コアラー貫入の解析映像と落下試験映像の比較による、貫入での迎角の影響の表現。これら2項目に成功した。これにより、将来、実現困難な条件の実験でも数値解析で補完できることが見込めるようになった。サンプリングデバイスの開発、性能向上に役立てることを期待する。
今後の課題として、解析設定が重要な部分以外は簡略化しているため、計算精度の上昇。また、精密な解析を行おうとすると解析時間が莫大になってしまうため、計算機の性能向上。また、3Dモデルが簡易的であるため、3Dモデルの詳細化が挙げられる。
指導教員からのコメント 准教授 渡部 武夫
杉原君が取り組んだ研究は、将来の宇宙機搭載品の性能向上に日本刀の切断性能を役立てるため、日本刀による切断メカニズムそのものを数値シミュレーションにより解析するものです。今回試した「消失法」は、切断される側の要素を接触時の条件に応じて消失させ、疑似的に切断の様子を模擬する手法です。これは、いわば「斬られ役」の役者の力量で殺陣(たて)のシーンの迫力を表現するようなもので、切断時や貫入時のさまざまな力学的条件の影響を、実験映像との比較によるパラメータ調整によりある程度再現できるようになりました。これらの知見は、今後の数値シミュレーションを用いた検討において、実験が難しい状況等での予測解析に役立つと期待しています。
卒業研究学生からの一言 杉原 遼太
解析結果が想定通りにならずに研究が難航することもありましたが、渡部先生や修士の先輩のサポートもあり、無事に研究を終えることができました。また、先生は相談に真摯に答えてくださったり、私の思いついた解析を試させてくださったり、自由に研究をやらせていただいたおかげで、様々な発想を試すことができました。渡部研究室で研究できたことは、私のこれからの人生の糧になると思います。