卒業研究のご紹介
2019年版

機械・自動車・ロボット系

無信号交差点における先読み減速制御の受容性評価に関する研究

中沢 允長野県
大学院機械システム専攻 博士前期課程1年
(創造工学部自動車システム開発工学科 2019年3月卒業)
長野県長野工業高等学校出身

研究の目的

市販車に搭載されている衝突被害軽減ブレーキは、対象物が見通しの悪い、センサ認識不可能な地点から突然現れる場合、対象物を回避できません。一方、熟練ドライバはそういう場所でも危険を予測し事前に減速動作(先読み減速)を行っています。これまで、先読み減速制御を含むシステムが、S-イノベ※プロジェクト研究により開発されています。
本研究では、走行条件を本学周辺の見通しの悪い交差点とし、高齢者ドライバに先読み減速制御を体感してもらい、その際の運転行動を取得し、アンケート調査を実施し、先読み減速制御の受容性評価を行いました。
※ S-イノベ:戦略的イノベーション創出推進プログラム

研究内容や成果等

■ 実験方法

実験は、事前アンケート調査・走行実験・事後アンケート調査を行った。事前アンケート調査では、普段の自動車運転に関するアンケート、運転スタイルチェック、運転負担感受性チェックを行った。走行実験では運転行動として、速度と制御動作時の目標減速度、車両減速度、アクセル開度を取得した。また、制御なしの走行実験を行い、運転行動の違いを分析した。走行後の事後アンケート調査として、受容性評価アンケートを行った。実験を行った被験者は普段から運転をしている65~77歳までの9人の高齢ドライバで行った。なお、8人は実験コースを初めて走る。

■ 実験結果と考察

●実験結果
図3に示すように、事後アンケートより、先読み減速制御を感じ取れた人は56%である。感じ取れなかった44%の4人のうち、対象交差点にて通過速度が設定速度より低く制御が作動しなかった人が1人である。また、先読み減速制御(HUD表示も含む)があって良かったですかという問いに対しては、9人中8人が「はい」と回答している。なお、「いいえ」と回答した 1人は先読み減速制御を感じ取れなかったと回答している。

Fig.3 Result of receptivity evaluation questionnaire
●考察
制御が感じ取れなかった4人のうち制御が作動しなかった1人を除く3人は、図4に示すように速度が最終徐行速度Vminに近い。そのため制御介入時の目標減速度が1[m/s2]以下と制御量が小さく、感じ取り難かったと考えられる。また、先読み減速制御があって良かったと回答している人が約90%である。ここには、減速制御を感じ取れなかったと回答した人も含まれる。減速制御を感じ取れなかった上記の人は、図5に示すように、制御なしの走行においては規範となる速度よりも高い。これは制御ありの走行において、減速制御が介入 しなくとも、HUDへの表示による知覚教示が有効に働いた結果であると考えられる。他の被験者においても、アンケートで「先読み減速制御があって良かったですか」の問いに対して、「はい」と答えた理由に、たまたま歩行者がいなかったから良かった。もし自分の判断が無かったらあって良かったという回答があった。つまり、実際に飛び出しが起こった事を想定した際の先読み減速を狙った通り感じており、受容性があると言える。

Fig.4 Desired acc and Velocity Data 

Fig.5 Velocity Data(System OFF)

■ 結言

無信号交差点における先読み減速制御は歩行者等の飛び出しを意識させており、十分な受容性があることを確認できた。今回、被験者が9人とまだ少数であるため今後被験者数を増やして行う必要がある。
指導教員からのコメント 教授 井上 秀雄
大学院への進学、おめでとうございます。彼の4年の学生生活では、本卒業研究だけでなく、ソーラカーの製作と競技大会での優勝など、華々しい活躍をしてきました。何しろ、物に触れているのが大好き、自動車大好きの学生です。企業はこんなエンジニアがほしいのだと思います。しかし、大学院に進学し、更に成長したいと思う趣旨がよく解りましたので、大学院でもモノに触れながら実学的な活躍を期待しています。本卒論は、他の大学や企業と連携した Sイノベ(JST採択)という産学連携の中での研究で、高齢ドライバの運転を安全に支援する「先読み運転知能」を目指すものでした。革新的な技術を生むための、産学連携のチームワークの重要性を学んだと思います。大学院でもこの経験を生かして下さい。
卒業研究学生からの一言 中沢 允
本研究を通し、運転支援システムの概要、通信システム、プログラミング等について学ぶことができました。さらに卒業研究では、目的が重要であり、行き詰った時の着目点の考え方、実験方法の決め方、原因究明の重要さ等の問題解決力を身に付けられました。また、共同研究だったため、様々な方とお話をさせていただき、コミュニケーション能力も高まりました。