卒業研究のご紹介
2018年版

化学・バイオ・栄養系所属学生

アズレンを含むエナミノンを用いたヘテロ環合成

耒住 映実静岡県
工学部応用化学科 2018年3月卒業
静岡県立小山高等学校出身

研究の目的

当研究室では、エナミノン1の合成とこれを用いるヘテロ環合成について検討している。エナミノンはヘテロ環化合物の前駆体である。これを踏まえ、1を過剰量の酢酸アンモニウム存在下で加熱することにより、ピリジン誘導体2の合成を明らかにしている。しかし、この変換の収率は満足できるものではないため、まず本反応の条件検討による収率の改善を試みることとした。このピリジン誘導体2はpH、金属イオンによる性質の変化が期待できることから、これらも併せて検討をする。また合成した化合物は、電子吸引性であるアルデヒド基を有していることから、還元によるアルコール3への変換は化合物の性質に大きな影響を及ぼすと考えられ、この変換についても検討することを目的とした。

研究内容や成果等

■ イノン合成

既知の方法によりシクロペンタジエン4から数段階を経て [b]-フラン5を合成した。続いて2-ジメトキシメチルアズレン6を合成。この段階で加圧密閉装置を用いることにより従来の reflux 法に比べ、収率の向上が見られた。この6を加水分解しアズレン7とし、続いて、エチニル化を行いアルコール8へとした。MnO2を用いて8をイノン9へと変換した(下式)。


アズレンは機能性材料と呼ばれるもので、様々な形に変換することで医薬品などの役割をもたらす。このアズレンをさらに変換することにより、将来活かせる可能性のある化合物となるよう合成している。

指導教員からのコメント 教授 山口 淳一

卒業研究は「アズレンを含むエナミノンを用いたヘテロ環合成」のタイトルで行いました。ヘテロ環の一種であるピリジンは金属イオンに配位する窒素原子を有し、アズレンは青色の化合物ですが環境によって色が変化します。今回それぞれの部分を同時に有する新規化合物の合成を試みました。新しい実験は10回行って1回成功すれば良い方です。元来粘り強い性格のため、問題点を1つずつクリアしていき、最終的に収率良く目的物を合成することができました。合成した化合物は、共存する金属イオンによって呈する色が異なるという、発見をすることができ、今後の発展が期待できるテーマとなっています。

この研究成果は2018年3月開催の「日本化学会 第98回春季年会」(日本化学会主催)において発表を行っています。

卒業研究学生からの一言 耒住 映実

普通高校から本学に進学し、やりたいことが不明確でした。しかし、4年間共に過ごした友人たちや先生方に影響され、自分の目標を見つけ、研究に打ち込むことができました。研究を通して、先生方や研究室の友人、先輩、後輩と深く関わることができたことは財産だと思っています。