卒業研究のご紹介

化学・バイオ・栄養系

アズレン誘導体ががん細胞に及ぼす作用の解析

賀佐見 千栄子神奈川県
応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2018年3月卒業
川崎市立川崎総合科学高等学校出身

研究の目的

植物に含まれる生理活性物質はわれわれの健康に役立つものが多い。この生理活性物質を由来として合成された化合物の有用性は、医薬的見地から注目されている。ジャーマンカモミールやユソウボクに含まれるアズレンの誘導体の一つ、グアイアズレンは抗酸化作用を持っているため、抗炎症剤等に利用されている。しかしながらグアイアズレンを前駆体として合成されたアズレン誘導体の生理活性は知られていなかった。本研究ではこれらアズレン誘導体の生理活性について、医薬品として有用かどうかの検証を目的として解析を行った。

研究内容や成果等

グアイアズレンを前駆体として合成されたアズレン誘導体をそれぞれ哺乳動物培養細胞に投与し、細胞への影響を解析した。

その結果、正常細胞には大きな影響を与えない濃度で、HeLa細胞等のがん細胞株の増殖を抑制するアズレン誘導体を見出した。次に、細胞増殖の抑制の原因を調べた結果、アズレン誘導体はがん細胞株の細胞分裂周期に影響を及ぼさなかったが、アポトーシスを誘導することを見出した。さらに、アズレン誘導体の作用を調べた結果、HeLa細胞のミトコンドリア膜電位に異常が生じることを見出した。これらの結果から、アズレン誘導体はミトコンドリアの活性に影響を与えてアポトーシスを誘導すると考えられる。

ミトコンドリアのような細胞のエネルギー産生機構への作用は、細胞分裂が盛んでエネルギー消費の大きながん細胞への攻撃の標的として有効であることから、さらなる解析によりアズレン誘導体の抗がん剤としての可能性を高めたい。


■アズレン誘導体はがん細胞株の増殖を抑える一方、正常細胞に影響をほとんど与えなかった。縦軸の吸光度は細胞数が多いほど大きくなる。

■アズレン誘導体はアポトーシスを誘導する。切断されたPARPはアポトーシスのサイン。

■アズレン誘導体によってミトコンドリアの活性が異常になった
(緑色が異常ミトコンドリア)。
指導教員からのコメント 准教授 井上 英樹

賀佐見さんは、「機能未知の化合物の生理作用」をテーマに卒業研究を行いました。この化合物を正常細胞およびがん細胞株に投与したところ、正常細胞が生存する条件でもがん細胞株がアポトーシスを引き起こし、死滅することがわかりました。この化合物が細胞のどこに作用するかを解析したところ、エネルギー産生を司るミトコンドリアの機能を阻害することが明らかとなりました。この化合物がミトコンドリアの働きを低下させることでエネルギー消費が盛んながん細胞を「兵糧攻め」にして死滅させると考えられます。この化合物は正常細胞に対する作用が弱い一方、がん細胞にアポトーシスを引き起こすことから、抗がん剤としてのポテンシャルがあると期待されます。今後、さらに詳細な作用機構や、既存の抗がん剤と併用した場合の効果について調べていきます。

卒業研究学生からの一言 賀佐見 千栄子

本学では学生の活動を支援する環境が整っているので早くから研究に取り組むことができ、半年間の留学にも行けました。留学は大学のカリキュラムにあるので、留学しても4年間で卒業でき、教員免許も取得できました。学生の活動を支援してくれる大学だからこそ、この4年間は中身の濃い学生生活になり、本学で学べてよかったと思います。