卒業研究のご紹介
2019年版

機械・自動車・ロボット系所属学生

中学軟式野球における打撃指導の研究 -「言語的説明」・「身振り」・「オノマトペ」三要素の効果の検討-

竹田 大悟岩手県
工学部機械工学科 2019年3月卒業
一関学院高等学校出身

研究の目的

現在、中学野球において軟式野球と硬式野球の指導者に差があることが大きな課題である。そこで打開策を検討するため、私の経験と学びから「野球」と「工学」と「教育」を合わせた研究として、指導技術のメカニズムを解明しようと思った。大学で所属した野球部では学生コーチとして選手に指導していたので、そこでの経験から言語的説明(言葉で技術を説明)、身振り(自分の体を使いながら)とオノマトペ(擬態語・擬音語)の三つが重要な指導技術の要素だと考えた。検証は、教育実習先で中学生に打撃指導を行ってビデオ撮影し、指導内容を詳細に書き出し、実際に三つの要素がどのように使われているのかを分析した。三要素をどのように意識すれば、経験の乏しい指導者でも効果を上げることができるのかを明らかにしようと思った。

研究内容や成果等

■ 打者指導における三要素の構成

[1]理論的説明…体の仕組みを交え、体の動きを論理的に指導する。また、バットの出し方、振り抜き方を専門的な言葉を使って指導する。
[2]身振り…指導者が実際に自分の体を動かして指導する。
[3]オノマトペ…擬態語、擬音語を用いて、体の動きを一言で表現する。

■ 検証対象と方法

対象:岩手県滝沢市T中学校の軟式野球部員5名
方法:2018年10月の3日間、平日の部活動の時間と休日の練習時間に打撃指導をし、ビデオ撮影を行った。指導内容と三要素の効果を抽出し検討した。

■ 検証対象と方法

●打撃指導における三要素の効果
中学生であるため、まだ体のどの部分を言われているのか理解できない場面が多く、[1]だけでは指導が伝わらないことが分かり、[1]で伝わらない部分を[2]で補っていた。全ての選手に共通して、[2]の要素は必ず用いた。また、[3]は主に意識づけのために使われ、効果的だった。感覚派の選手には[1]を多用せず、[2]と[3]が適した指導法であった。さらに[3]は①リズム、②イメージ、③間、④力という四つの種類に分けられた。(図1)

図1 打撃指導の構成のデータ

図2 三要素のパターンと選手の特性

図3 選手に指導した三要素の使用頻度

■ 結論

中学野球の指導者にとっては、野球経験を問わず、選手の特徴・性格を見極めた指導が重要である。野球経験のない指導者でも、三要素を意識して使う中で選手にあったパターンで効果的な指導を行うことが可能である。本研究では、[1]理論的説明に対して[3]オノマトペの有効性が見え、さらに使用する場面も分かった。わずかではあるが指導の差を埋めるための貴重な示唆であると言える。また、打撃指導における三要素の効果は、投球指導においても同様に効果的なのか、さらなる検証が必要である。
指導教員からのコメント 准教授 田辺 基子(教職教育センター)
教職教育センター卒研生として、中学生への打撃指導のメソッドを、言語的説明、身振り、オノマトペの三つの要素から分析した研究です。M科での卒研発表会でも良い評価を戴けたと思います。発達途上の中学生を育てるという教育学的な視点と、指導のメカニズムを分析する工学的視点を併せ持っており、M指導教員からのコメント科と教職センター両方の良さを出せたと思います。また、研究のために実際に長時間の指導をした結果、教育実習先の中学校野球部が大会で優勝し、竹田君の指導力の確かさも証明されました。
卒業研究学生からの一言 竹田 大悟
大学では、工学的な専門を学びつつ、教員を目指そうと教職課程にも取り組んだ。硬式野球部にも所属していたため部活と勉強の両立の難しさを日々感じていた。平日は、機械工学科での実験や実習でのレポートが毎時間出され、土曜は教職科目の授業、休日は練習や試合があり苦労したが、得られたものは多く、学科と部活を越えた人間関係とコミュニケーション、大学外での活動、時間管理、先を読んで行動することができた。また、野球部では、選手と学生コーチを経験し、技術指導の力がついた。学校の部活指導を改善するテーマとして、指導記録を分析し構造を明らかにする方法を行うことで、工学と教職の学びも活かせたと感じている。