卒業研究のご紹介
2019年版

化学・バイオ・栄養系

抗真菌剤の探索

小山 菜穂神奈川県
大学院応用化学・バイオサイエンス専攻 Bコース 博士前期課程1年
(応用バイオ科学部応用バイオ科学科 2019年3月卒業)
神奈川県立西湘高等学校出身

研究の目的

真菌症とは、私たちの身近に生息しているカビや酵母がヒトに感染することによって引き起こされる感染症です。その中でも、特に症状が重篤化するのは肺や脳などの体内で感染する深在性真菌症です。また、がんや臓器移植などの治療に伴う免疫低下により日和見感染し深在性真菌症を発症することが問題となっています。
現在使用されている抗真菌剤は種類が少ないことに加え、副作用や耐性菌の出現が確認されており、新しい薬剤の開発が急がれています。治療薬が少ない原因として真菌はヒトと細胞構造が似ているため薬剤の開発が難しいということが挙げられます。本研究では真菌のみに作用する新しい薬剤の開発を行うため、真菌に特異的な成長方法である先端成長に着目し、先端成長時の小胞輸送を可視化する評価系を実際の真菌症の原因菌であるC. albicansを用いて構築することで、新たな薬剤の開発に繋げていきたいと考えています。

研究内容や成果等

■ 実験方法

●C.albicansの形質転換
構築したベクターをエレクトロポレーション法を用いてC. albicansCAI4に形質導入した。前培養したC.albicansを酢酸リチウムで処理した後ソルビトールで懸濁し、pGAL10-sigEmGFPを加え、エレクトロポレーションにかけた後、選択培地に塗布し、培養。形成されたコロニーよりコロニーPCRを行い形質転換されていることを確認した。
●EmGFPの発現確認
形質転換して得られたpGAL10-sigEmGFP in C. albicansにおいてEmGFPを発現しているか確認するため、誘導培養を行い顕微鏡で観察した。SC Ura-2%グルコース培地で選択した形質転換体C.albicansをSC Ura 2%ラフィノース培地で30℃、一晩培養した。次にSC Ura-2%ラフィノース培地に対して10分の1量の前培養物を加え、OD600=0.4になるまで培養し、培地をSC Ura-2%ガラクトース培地に変更し1時間毎にプレパラートを作製し、顕微鏡観察を行いEmGFPの発現を確認した。

■ 結果及び考察

●C. albicansの形質転換
pGAL10-sigEmGFP/pRC2312をC.albicansCAI4に形質転換し、形成されたコロニーよりコロニーPCRを行った結果目的分子量付近にバンドが確認された。よって、pGAL10-sigEmGFPが形質転換されたことを示唆している。
●EmGFPの発現確認
形質転換体C.albicansを誘導培養し、EmGFPの発現を確認するため顕微鏡観察を行った結果、C.albicansの菌体を観察することはできたが、蛍光は確認できなかった。
●ベクターの再構築
構築したベクターのGAL10プロモーター領域に塩基置換が確認されたことまた、EmGFPの発現が確認できなかったことより、ベクターの再構築を行った。pRC2312由来のLacプロモーターの欠損を行うためiPCRを行い、Lacプロモーター領域の塩基配列を決定したところLacプロモーター領域が欠損されたことが確認できた。
指導教員からのコメント 教授 飯田 泰広
肺炎は死因の3位になっており、免疫力の低下した患者が微生物に感染する日和見感染症が問題となっている。特に、真菌症は、カビが感染することによって生じるが、現在使用可能な薬剤は5種類しかなくいずれも耐性菌が見つかっていることから、新しい抗真菌剤の開発が望まれている。抗真菌剤の種類が少ないのは、真菌(カビ)がヒトと同じ真核生物であることから、毒性の引く薬剤の開発が難しいからである。本研究は、カビの生育特徴が先端成長であることに着目し、先端に輸送される酵素であるβ-グルカナーゼに緑色蛍光タンパク質を融合させ、その輸送を可視化させることにより、その阻害を評価できる方法の開発を試みた。
卒業研究学生からの一言 小山 菜穂
私が最も成長することができたと感じることは、大学1年次の後期に行われるバイオ基礎ユニットプログラムで行われる自主テーマ実験です。自主テーマ実験は5人程度のグループに分かれ、各チームが自分たちでどのような実験に取り組むのか、どのような手段で行うのかを考えて実験に臨みます。普段の学生実験では用意された試薬・器具で手順通りに行うのですが、この自主テーマ実験では自分たちで実験の組み立てをさせてもらえるという点がとても良かったです。この経験は卒業研究やサークル活動、遺伝子組換えの世界大会に出場した際にも役立ちました。