卒業研究のご紹介
2019年版

化学・バイオ・栄養系

umu試験の改良および河川水の遺伝毒性分析

坂本 柊哉神奈川県
工学部応用化学科 2019年3月卒業
麻布大学附属高等学校出身

研究の目的

微生物はDNAが損傷を受けたとき、SOS反応を利用してDNAの損傷を修復する仕組みを有している。サルモネラ菌を用いるumu試験は、その性質を利用した遺伝毒性試験であり、最終的に生成するガラクトシダーゼの量を、発色試薬を用いて評価することで、対象となる試料の遺伝毒性の有無を判定する。この試験は操作が簡便で、必要な試料量が微量であるため、様々な分野の試料の遺伝毒性活性測定に用いられている。本研究では従来から行われてきた酵素抽出試薬と発色試薬を市販のタンパク質抽出試薬と蛍光発色試薬に変更して、さらなる感度向上を目的とした。さらに、本法を用いて神奈川県下の下水処理施設の排水流入河川水の遺伝毒性活性の測定を行った。その結果、下水処理施設の処理能力や処理方法などと相関があるのかを求めた。

研究内容や成果等

■ 実験方法

umu試験では、NM8001試験菌株を96穴プレートに98μLずつ分注し、被験物質2μLと発色試薬としてTokyoGreen 10μLをそれぞれに加えて2時間振盪培養した。その後、Z-緩衝液90μL、酵素抽出試薬50μLに上記の菌液20μLを加えて β-gal 活性を測定した。20分静置してから1Mの炭酸ナトリウムを100μL加えて酵素反応を停止させEx:485nm、Em:535nmの蛍光を測定した。また各河川水2Lは、0.45nmのメンブランフィルターを用いてろ過した後、固相抽出カラムOASIS HLBに通水し、メタノールで回収した。乾固後、100μLのDMSOに溶解させてumu試験に用いた。得られた値はlacZ unitとしてβ-Gal活性値を求めた。

■ 結果

河川水試料を分析した結果、遺伝毒性物質の存在が明らかになった9地点の河川水は河川水試料の添加量に依存してβ-Gal活性値が上昇していた。また8地点で下水処理施設上流に比べて下流が遺伝毒性の活性が強い結果となった。遺伝毒性物質の濃度が高かった5地点の活性を、標準物質である4-nitroquinoline-N-oxide (4-NQO)相当量として計算し、その平均値を図1に示した。横浜市栄第一水再生センターの下流では6.78μg/mL、藤沢市大清水浄化センターの下流では2.25μg/mLの強い遺伝毒性が検出された。

図1 強い遺伝毒性を示した河川試料
指導教員からのコメント 教授 髙村 岳樹
本研究で使用した蛍光性の発色試薬をumu試験に適用することにより、全体的な感度の向上と測定の難しい試料の遺伝毒性を分析することが可能になりました。また、本研究の結果で、採水した河川水全体の遺伝毒性が明らかになりました。遺伝毒性は遺伝子に損傷を与える活性であり、河川に生息する生物に深刻な健康影響を与える可能性があります。今後は、その地点の河川水を大量に採水し、さまざまな機器を用いて化合物を単離し,遺伝毒性を持つ化合物の構造式などを特定することが重要です。推定化合物を別途に化学合成して構造を確認し、またその化合物のumu試験を行うことで、遺伝毒性の活性の強さ評価することができます。このように環境中に存在する化合物を特定することができ、生態系やヒトに対する影響を明らかにすることができます。
卒業研究学生からの一言 坂本 柊哉
本学での研究活動を通して、自分から必要な行動を起こせるようになりました。大学4年次で行った卒業研究は、実験を成功させることがなかなかできなかったため、行った実験操作を記入し、実験を行ったことのある先輩や教授に聞きながら実験を進めました。実験の反省点を記入し、反省を踏まえたうえで次に行うときは何を目的とするか考えるようにしていました。研究を進めるために不足していることを明らかにしていたため、必要な行動を自分から起こせるようになりました。また、卒業研究の目標を達成することができ、学会に参加することもでき、とても有意義に過ごすことができました。