卒業研究のご紹介
2019年版

電気電子系

エタノールのEHD現象

親松 巧己群馬県
工学部電気電子情報工学科 2019年3月卒業
東京農業大学第二高等学校出身

研究の目的

有極性かつ表面張力の小さな液体に電圧を印加すると、液面の形状が変化する現象である。クーロン力やイオン風など様々な力が関係している現象であるが、詳細な上昇機構や液体の分子構造との関係が未解明である。今は基礎研究の段階であるが、上昇機構が解明されれば電気の力で液体を操ることが可能となり、産業の現場では洗浄や塗装など液体を扱う分野で活躍が期待される研究である。

研究内容や成果等

■ 実験方法

図2にEHD現象の実験装置を示す。針電極の曲率半径は25μmである。使用する液体はエタノールで、液体を入れる容器はガラス製である。針電極ー液面間はマイクロメータを使い3mm~12mm間を1mmごとに離す。電圧は最大±18kVで、EHD現象が発生したら電圧を記録し、高速度カメラで撮影を行う。この実験を各極性で3回ずつ行った。

■ 実験結果

負電圧印加時では針電極.液面間距離3[mm]の時に-12[kV]からEHD現象が発生したが、そこからEHD現象発生電圧はあまりかわらない傾向がみられた。正電圧印加時では距離3[㎜]の時に印加電圧6[kV]~7[kV]でEHD現象が発生し始まり、以降、印加電圧と針電極ー液面間距離に比例関係のような傾向がみられた。

■ 考察

電圧の極性が異なることによってEHD現象に変化がみられた原因は空間電荷雲によるものだと考えられる。図3のように、負電圧印加時では針前面に正イオン群が集まり、電極に流入する荷電粒子が少ないため、針前面には正イオン、電子、負イオンが取り残された状態になり、発生する電界は低くなると考えられる。液柱が針に接触しない現象に関しては、発生した空間電荷雲と針との電位差が少なくなると考えると、液柱はより近い針先前面の空間電荷雲に引き寄せられるため、それよりも上に行くことができないと考えられる。正電圧印加時は、図4のように電子なだれ先端の電子群が陽極に流入するため、陽極先端に正イオン群が多く分布することになる。よって負電圧印加時と比べて、より高い電界が発生する。この高い電界によってストリーマの成長速度は108[cm/s]になり、印加電界中の電子のドリフト速度である107[cm/s]の約10倍にまで達する。このように高電界が急速に成長するため、クーロン力が強く、液柱が噴出するかのように形成されるのではないかと考える。液柱が針に接触する現象に関しては、EHD噴出のほうが液柱の形成速度が非常に速いことが関係している。針先前面の空間電荷雲に引き寄せられる液柱だが、あまりにも液柱の形成速度が速いため、空間電荷雲を突破して針に接触してしまうのだと考えられる。

図2 実験装置の概略図

図3 負電圧印加の場合

図4 正電圧印加の場合
指導教員からのコメント 教授 下川 博文
アルコール類の表面は高圧の針電極との間で特異な EHD現象が発生する。針電極が負の場合には安定したEHD柱が発生し、正の場合には射出され EHD噴出と呼ばれている。親松君の論文は、針と液面間の空間電荷に着目し、これらの EHD現象の発生機構を説明する仮説を提案したものである。彼の研究からEHD現象の新しい視点が見えてくるものと考えられる。
卒業研究学生からの一言 親松 巧己
研究活動を通して、ひたむきに努力し続ける「継続力」が身につきました。電気に関する専門知識は少なかったのですが、毎日のように研究を重ねるにつれ、知識が深まっていくのを感じました。たった1年間の研究活動でしたが、人間的に大きく成長できたと思っています。