Side Stories

サイドストーリーズ
Vol.8

AIキャラクターと一緒にコミュニケーションが学べる!
チームで開発したアプリで国際ハッカソンで優勝

2024年5月、情報工学科・大学院情報工学専攻の学生チームが制作したスマートフォンアプリ「Neo Talk」が、国際ハッカソン「Global AI Hackathon」の「成年・ユースチーム部門」で優勝しました。同チームのメンバー設樂 楓さん(情報学部 情報工学科 4年)に、受賞したアプリについて、また、「Global AI Hackathon」への参加のきっかけや、研究開発での苦労と手応えなどについてお聞きしました。

Global AI Hackathonに参加したきっかけを教えてください。

当初は「チームで開発経験を積む」という目的で、指導教授の鷹野先生から「MIT App Inventor」というツールを紹介されて使い始めました。しばらくして、先生から「Global AI Hackathonというコンテストがあるのだけど、参加してみない?」という提案があり、「せっかくだから出してみよう」という気軽な感じで開発を始めました。

国際ハッカソン「Global AI Hackathon」

マサチューセッツ工科大学(MIT)が提供している「MIT App Inventor」というブロックプログラミング形式*の開発ツールを使用して、テーマに沿ったAIアプリを開発する国際ハッカソン(コンテスト)です。

2024年は、ユース、ユースチーム、成年、成年・ユースチームの4部門があり、91か国より1078名の応募がありました。判定はGoogle、Intel、Meta、Microsoftなどの企業や世界中の学校からの有志により行われました。

受賞した学生たちは、7月24日から3日間開催されたMIT AI & Educationサミット(於:マサチューセッツ工科大学(MIT))に招待され、発表を行いました。サミットには第一線で活躍する研究者から子供たちまで世界各国から様々な人々が参加し、交流を深めました。また、MITの研究室見学なども行い知見を広げることができました。 *ブロックプログラミング形式
コードを使わずに直感的に各ブロックを組みあわせることで、アプリ制作が可能なプログラミング形式。

受賞したアプリ「Neo Talk」は、どのようなアプリですか?

人間と同様にさまざまな感情を表現するAIキャラクター「Neonちゃん」との会話を通して、コミュニケーションの方法が学べるアプリです。対面でのコミュニケーションの機会が減った人たちに使ってもらうことを考えて作りました。使い方は簡単で、マイクボタンを押して録音が開始されたらNeonちゃんに話しかけ、話し終えて録音をストップすると、Neonちゃんがしゃべってくれます。

このアプリの大きな特徴は、会話の内容によってNeonちゃんの表情が変わることと、画面の下の方にNeonちゃんの「心の内の感情」が表示される点です。人は悲しいことがあっても、話している相手がおもしろいこと言ってくれたら笑うように、このアプリでもNeonちゃんは笑っていても、下に「悲しい表情」が出る場合があります。Neonちゃんの表情と心の内の感情の両方を見ながら会話をすることで、コミュニケーション方法を学ぶことができます。

優勝が決まったときはどうでしたか?

家にいるときに「優勝した」という内容のメールを受けとりました。英文だったので、迷惑メールかな?と思ったくらい半信半疑で(笑)、研究室に行って先生から「おめでとう!」と言われたようやく信じられました。後から海外で行われた表彰式のビデオを見せてもらって、あっ!本当に優勝したのだと驚きました。

今回のアプリ制作での設樂さんの担当は?

ユーザーの使いやすさ(ユーザビリティ)に関わるような部分をより良くしていくことが私の役割で、主にキャラクターなどのイラスト作成や画面設計を担当しました。特に迷ったのは、キャラクターデザインです。国際的なコンテストなので、アジア系に偏ったり肌の色で分けたりということはよくないので、アニメキャラクターのようなデザインで4体作成しました。

アプリの「肝」である感情の表現や、実際に動くようにする「実装」という作業は、チームで話し合いながら進めました。また、今回の開発では4名の留学生も協力してくれました。

Profile

情報学部 情報工学科 4年
AIデータベースシステム研究室
(鷹野 孝典研究室)

群馬県立太田女子高等学校 出身

設樂 楓さん

プログラミングやAIに興味があって、基礎から広い範囲が学べる情報工学科に進学しました。現在は大学院進学をめざして、AIデータベースシステム研究室で対話型AIを使った研究をしています。3年生のときに参加したタイでの海外研修では、現地でたくさんの友人ができ、帰国後も英語でよくチャットをしています。趣味はイラストを描くことで、今は主にデジタルイラストを描いています。

アプリ制作での苦労と手応えについて教えてください。

受賞したアプリは「MIT App Inventor」と対話型AIの「ChatGPT」を連携させて制作しています。ChatGPTには、たとえば「私は悲しい」というテキストに対して、「この感情を1から10で判別してください」と指示すると、どれくらい悲しいかを数値で出してくれる機能があります。その機能を使って「NEO TALK」でも感情を数値で表せないかと考えました。しかし、テキストを数値化することは本当に難しく、うまく動いていたかと思えば急にエラーになることもあり大変でした。

でも、留学生の方からの「ChatGPTへの質問に、『心理学者になったつもりで答えて』という具体的な内容を付け加えて聞いてみては?」というアドバイスをきっかけに、ChatGPTへの指示をどんどん細かくしていけばいいのだと気づいて一気に進みました。

苦労することが多かった分、みんなで話し合いながら作り上げたプログラムが、たった一つの機能でもしっかり動いた時のワクワク感や手ごたえは、チーム開発だからこそ感じられる楽しさでした。

Message

情報学部 情報工学科4年
佐藤 智也さん(チームメンバー)

設樂さんはみんなを引っ張ってくれる力があるので、留学生の方たちに協力してもらうときも、彼女がリーダーシップを発揮して、コミュニケーションも活発にとってくれたので順調に進めることができました。

大学院 博士前期課程情報工学専攻 1年
瀬尾 幸斗さん(チームメンバー)

夜遅くまで残って取り組む姿を見ていたので、今回の優勝は設樂さんのがんばりが実を結んだのだとうれしく思っています。設樂さんが頻繁にコンタクトを取ってくれたり、盛り上げてくれたりしたので、楽しく開発を進められました。

神奈川工科大学で良かった!と感じるのはどのような時ですか?

素敵な学友に出会う瞬間です。みんな本当に個性的で、私にはなかった見方や考え方を持っているので、自分の世界が広がります。また、留学生の方の興味を持ったことへの熱量の大きさにも感化されました。神奈川工科大学でさまざまな学友たちと出会い、交流した経験は間違いなく大きな財産だと思っています。

卒業研究ではどのようなことに取り組んでいますか?

人格を持ったAIに興味があり、対話型AIにおける「らしさ」を追求する研究をしています。たとえば、ChatGPTなどの対話型AIにAさんのように振る舞ってもらうとして、Aさんが言わないような言葉を使わないように制御するというような研究に取り組んでいます。

今後の進路について教えてください。

大学院への進学を考えています。自分のやりたい研究をのびのびできる環境に進みたいです。その先の将来は、ゲーム系の企業で開発や企画ができたらと思っています。プログラミングを組むのも好きですが、それ以上に、いろいろなアイデアを形にしていくゲームの企画・開発に興味があります。

最後に、大学進学を考えている高校生にアドバイスやメッセージをお願いします。

大学は「自ら学ぶ場所」だと感じています。授業で学ぶことは基礎的なことが多いのですが、周囲を見回すと、それ以上に深い知識を持っている人が多いです。自分の好きなことを大事にしている人が多く、本当に好きなことに対しての熱量がすごい!また、理系の中でも特に工学系は女性の比率が少ないのですが、だからといって学生生活や就職で困ることはありません。自分のやりたいことを好きなだけ学べて研究できるのが大学なので、ぜひ自分の興味や関心があることに忠実に、学ぶ楽しさを大切にしてください。